モデルさんの支えは彼のおかげでした
―前回のあらすじ。元春が助けた女性は同級生であり、モデル業界の人物・仙石巴だった。彼女は、自らの推薦で、ハトバ小樽店のモデルになった。
そのため、テレビ局が来て初めてのテレビに出れるのだった。更には、村上達の応援も来ていたのだった。果たして元春は、この状況を切り抜けるのか……?
元春の店が、モデルが来ていることに、更にテレビに映ることになるという噂がさらに広まったのだった。
「おい、岡田! 大変だ!」
鉄鋼工業にも噂が来ていた。
「どうしたんだよ、そんなに慌てて?」
「ビックニュースなんだよ! 元春の兄貴の店に、有名なモデルが来て、さらに兄貴の店に初のテレビ放送なんだよ!」
「はぁ⁉ マジかよ、それ!」
「しかも、そのモデル女は仙石巴だってよ!」
「ウソだろ⁉ それは見逃せねぇ! 山崎、テレビをつけんぞ!」
その頃、ハトバでは―。
「これが、ハトバ店の作業服かぁ」
「……」
「よ~し、頑張るぞ!」
この時、円は巴を見て思った。
(仙石さん、昔よりすごく変わってる……。昔は内気な性格で、今はあんなになっているなんて……。人が変わるのって恐ろしい……)
円は、巴の事を実は少し嫉妬していた。
(確か、彼女が内気になっていたのは高校時代だったね。誰とも喋らず、一人でいた所にいじめがあって、助けたのが元春なんだよね……。それ以来、私や村上君らとよく仲良く話していた。でも、久しぶりに会ったらこんなに……)
「円ちゃん?」
「! もうそろそろ時間ね! 行くわよ!」
円は早歩きで行った。
その頃、元春は緊張していた。
「……」
気まずそうな顔をしている元春。そこへ、龍一が来た。
「大丈夫ですか、店長?」
「大丈夫じゃないよ……、こんなの初めてだよ! この状況分かる⁉」
「まぁ、お察しはします」
元春はため息をした。
「どうするんだよ、これ……」
するとそこへ―。
「仙石さん、入りま~す」
「……」
いよいよだ。初めてハトバ小樽店に放送される。むしろ、全国放送だろう。そう思った元春だったが、迷うわけにはいかなかった。
「よろしくお願いします」
巴がハトバの作業服で来た。これに永田は口を開いた。
「それでは、まずは店長さんと、マネージャーさんと薬剤師、化粧品担当さんと一緒に撮ります」
元春、円、雪子、義子の真ん中に巴が入り、モデル撮影をした。
その一方、セレナたちは―。
「これが、テレビ局の撮影ですか……」
「まぁ、現世ではこういうことするんや。といっても、俺らは初めて見たからなぁ」
「生で仙石さんを見たけど、ハトバの作業服似合ってるよ~」
「モデルはどれでも伊達じゃないようですね」
これに皆は頷くのだった。
「……」
さらに、広告の写真など、色々撮るのだった。
そして、数十分後―。
「写真チェックしますので、一回休憩入りま~す」
スタッフたちは写真チェック中に入るので、巴たちは休憩に入るのだった。
すると―。
「セレナさんだっけ? 聞きたいことがあるんだけど」
「? なんですか?」
突然、巴はセレナを尋ねた。そして、人気がいないところに行った。
「セレナさんって、ここの世界の人間じゃないって本当?」
「⁉」
まさかのいきなりな一言に、セレナは驚いていた。
「どうしてわかるのですか?」
「なんとなくだけど、皆から聞いてて、セレナさんやエリーゼさんはソルフィルスという異世界から来たって聞いてて……」
「あ、あの……、そのこと誰に聞きました?」
「村上君たちだけど?」
セレナはこめかみを当てながら「それは言ってはいけないですよ……」と、心の中で言った。
「でも、きっと理由があってここに来たんですよね? 私も、色々あってモデルになったのですから」
巴はその理由を語った。
「実は、モデルになったのは、御子柴君が居てくれたからなんです」
「え?」
元春のおかげ、それはかつて内気だった彼女が、元春を救ってくれたのだった。
「昨日言ってた通り、私はかなりの内気だったのです。自分には自信がなく、そしたら御子柴君たちが応援してくれたんです。それで私は、高校卒業後、暫く皆と会わず、業界の世界に入ることになりました。そして、モデルとなって今に至るんです」
「……、そうだったんですね」
「きっとみんなが居てくれたから、私はここまで来たんだと思ってるんです。セレナさんも、きっと御子柴君の支えになって、この世界に来てるんですよね?」
セレナは思った。元春と出会い、そしていつの間にか、彼の好意を持ってしまった。祭りの時や社員旅行の時でも、色々あったんだと。
ソルフィルスの時代では、セレナは争いは好まない、皆からの憧れだった。そして、巴を見て気付いた。「この人は、私のような人だったんだ」と。
「セレナさん? どうしました?」
「……いいえ、なんでもありません。仕事、頑張ってください」
「……はい!」
こうして、撮影は再開し、午前中に終わったのだった。
「あの有名なモデルさんと、写真撮影? さすが、うちの弟だねぇ~」
仕事の話をすると、ビールを飲みながら花乃は羨ましそうに言う。
「まぁ、初めてだったから仕方ない」
「これで、一歩近づいたってことじゃないの!」
「そうかなぁ……?」
多分そうだろう、そう思っていると―。
ピンポーン。
インターホンの音がしたのだった。
「誰だ、こんな時間に?」
玄関のドアを開けると、そこにいたのは―。
「すみませ~ん」
眼鏡をかけた女性がいた。が、よく見ると―。
「―仙石?」
「御子柴君!」
まさかの仙石巴だった。
「何でここに?」
「ここのアパートに越してきたの。そしたら、挨拶しようかと思ったら……、まさか御子柴君が居たなんて」
「……」
「でも、ちょっと嬉しいから、よろしくお願いします。あ、あと、これは引っ越しのタオル」
タオルを渡され、巴はドアを閉めていった。
(や、ややこしくなってきたぁぁぁぁぁ……)
その後、円も元春と同じく啞然とするが、それはまた別の話。




