魔族の人たちとたこ焼きパーティーしました
ある日の休日だった。龍一は家でゆっくりとしていた時だった。
ピンポ~ン。
インターホンが鳴って、玄関に行ってみると宅配便がいた。
「山城さん、宅配便で~す」
「? なんやこれ?」
渡されたのは至って普通の入れ籠サイズの段ボールだった。
「俺、通販なんかしてないんやが」
そこへ―。
「ねぇ、もしかしてそれ……」
紅麻衣がお届け物を見た。
「お母さんからじゃないかな?」
「麻衣のお袋さんからやと?」
麻衣は魔王の娘、父は既に他界してるが魔王だったという。その一方、母親は人間で現世人である。要するに、人間と魔族のハーフである。
「昨日、お母さんから連絡来てさ、送りたいものがあるって言ってた」
だが、龍一は思う。
「もしかして、魔族の―」
「それはないから」
言いかけたところに麻衣が止めた。
「ていうか、なんで俺のところやねん」
「仕方ないでしょ、住んでるところは一緒だし」
「それはそうやけど、何が入ってんねん」
中を開けてみると、中に入ってたのは―。
「これは……、たこ焼き器?」
自宅で作れるたこ焼き器だった。
さらに―。
「手紙がある」
麻衣は手紙を読んでみた。それは、母からである。
『押入れの掃除してたら、懐かしいものが出てきた。私じゃあいらないから、一緒に住んでいる人と一緒に作って食べて
母より』
「懐かしいものが出てきたのね」
「前から気になっていたんやけど、お袋さんは何してんや?」
「確か……、クリエーターをしてるって言ってたわ」
麻衣の一言に、龍一は驚いていた。
「クリエイターって、制作するやつやん! それやってんの?」
「一日二万で稼いでる」
「どんな母やねん!」
龍一はツッコミを入れた。
「まぁ、クリエイターの話は置いといてや。たこ焼き器が送ってくるなんてな」
そこへ、二人の話にライアたちが来た。
「なんだなんだ? いったい何の話をしておる?」
すると、ライアたちはたこ焼き器を目にした。
「これは、なんですか?」
「たこ焼き器や」
「たこ焼きって、お祭りにあったあの食べ物か?」
「そうや。でも、家でもたこ焼きは作れるんや」
「成程、たこ焼きは家でもできるのですね。しかし、なぜここに?」
状況が知らないロレナに、麻衣は言った。
「うちのお母さんから届いたのよ」
「なんと! 魔王様の夫人からですか!」
「懐かしいのが出てきたからあげるって」
これにライアたちは、更にたこ焼き器を見て期待が高まる。
「そう思っていると、家庭用のたこ焼きが食いたくなるのう」
マリーナも同じだった。
「ですが、材料が必要では?」
「確か、この前安売りセールに荒れ買ったんだよな。確か―」
台所の棚を開けた龍一。そこに入ってたのは、粉だった。
「あったあった、メリケン粉だ」
「なんだ、武器みたいな名前の粉は?」
「メリケン粉って言って、簡単に言えばたこ焼きの素みたいなところさ」
更に、冷蔵庫にはたこ焼きを作る材料を用意していた。一応はそろっているみたい。中で主役なタコも入っている。
「この際や、たこ焼きパーティーにするか」
「いいわねぇ」
こうして、今日のお昼はたこ焼きにすることになった。
「龍一はたこ焼きを作ったことあるのか?」
ライアの質問に龍一は言った。
「バイトした時のことを思い出してな」
「確か、龍一は大阪府出身だったわね」
「大阪はたこ焼きが名物。そしてその名は全国に轟いているんや」
龍一は喋りながら、たこ焼きを作る。たこ焼きピックでホットプレートに入ったたこ焼きを回す。
「タコを入れて、いい感じながら焼きを見る~♫」
更に謎の歌をご機嫌よく歌う。
「なんですかそれは?」
「たこ焼きの歌」
ロレナは呆れながらため息をした。
そして数分後……。
「たこ焼きを皿に乗せて、ソースとマヨネーズ、仕上げの青海苔!」
調味料の物をたこ焼きの上に付け、ついにできた。
「できたで~、家庭用のたこ焼き!」
「おぉ~!」
ライアは感動して輝いていた。
「さすがにこれは、美味そう……」
ロレナもよだれ垂らすほど驚いて輝いていた。
そして、一個ずつみんな食べると―。
「……」
言葉も出ないほどの美味であった。さらに―。
「なんや、自分が自画自賛するのもなんやけど、美味すぎて泣く」
「我もだ」
「余も同じく」
「私も……」
更に泣いて、笑う。
「久しぶりやん、このたこ焼き! 泣けて笑うわ!」
「納得!」
「悔しいですが、認めるしかない……」
そう思うと、龍一は更に考えた。
「そういえば、タコがなければ餅とかチーズとか入れたら美味いって、聞いたことあるで」
「本当なのか? それならやってみよう!」
こうして、龍一たちはタコの他、ウインナーやチーズなど入れ、たこ焼きにして食べた。
そして、完食後―。
「初めてだった……、これは……。お腹いっぱいになった」
「ホンマや」
麻衣はたこ焼きを見て思った。
「こういうの、幼い頃からパパが作ってくれた思い出なのかもしれない」
「親父さんが?」
「パパは現世の事に興味津々でたこ焼きを作ったことあったから。本当に、あの味が忘れられない」
麻衣は思い出を語る。
「でも、今はもういない。パパを殺した犯人を見つけたいから」
「麻衣……」
麻衣の本音に、ライアたちは真剣な表情で聞いていた。
これに龍一は―。
「心配せんでええ、俺も協力する。お前の親父さんが、平和を望んでいたのを壊した奴を見つけないとな」
麻衣の頭をなで、励ました。
「だから、今はポロポロと泣いていいんや」
それは、彼女の本当の心。必ず、犯人を見つける。そう誓う龍一だった。