皆でお土産を買って帰りました
その頃、廃ビルでは―。
「この気配は……」
オルグスは、何かの気配を感じた。
「どうしたのですか、オルグス」
「いや、なんでもない」
オルグスは気配の正体を気付いた。
(この感じは、まさかあの神がこの世界に? だが、そいつは神出鬼没な奴だ。いくらなんでも、ありえないだろう)
オルグスは先ほどの気配を一応知らないことにした。
「これは、なんですか? お菓子、ですよね?」
「まるでドーナツにある菓子ですね」
セレナとエリーゼは、あるお菓子を見ていた。
「これは沖縄名物のお菓子『さーたあんだぎー』だ。知らない人もいない有名なお菓子さ」
「これが……」
元春たちは、最終日に土産屋にいた。
―昨日は散々だった。急な台風が来て、元春とセレナは九死に一生を得たのだ。それは、ザトウクジラにとりついた時空の番人のおかげで、巨大な台風と雷は見事に消滅した。
それだけじゃなく、ホテル内に割れて砕けていたガラスや、雷が落ちて倒れた柱も、全て時空の番人によって修復された。観光客たちは奇跡だと、大喜びをしていたのだった。
そして現在、元春たちは今日で沖縄旅行の最終日である。そのため、お土産屋に寄っていた。
「あいつらには、これを土産にしよっか」
元春はとあるお菓子の箱を買おうとした。
「お兄ちゃん、その箱って紅芋タルト?」
「村上たちのお土産に紅芋タルトやさーたあんだぎーを買おうと思って」
その横に、倉木雪子が言った。
「チーフの土産にも買ったほうがいいのでは?」
「そうだな……。長脇チーフにはレモンケーキセットがいいな。あと酒井親子にはクラフトビール……」
元春はお土産を選んで取った。
その一方、ライアは元春たちを見て思った。
「どうしました、ライア様?」
ロレナが尋ねてきた。
「旅行というのは、こうも楽しいとは思わなかったのでな。大変なこともあったが、思い出にもなれる旅行だったぞ」
「寂しいのですか?」
「多少はな。だが、昨日見たあの光だけは忘れない。元春とセレナが出会ったのは、この世界の者じゃないだろうな」
「……私も、同じことを思ってました。ですがきっと、希望な感じかと思います。例え我らがかつての敵対関係でも、見守るしかないかと」
これにライアは認めるしかない。複雑に思うが、きっとこの先にも、幸福があると。
そこへ―。
「なにしとんねん?」
龍一がライアとロレナのところに来た。
「! あ、いや。なんでもない!」
ライアは動揺していた。
「よくわからんけど、もしかして考え事?」
「何のことだ?」
「……昨日のことや。二人が生きて帰ってきたのは、誰かと会ってたんやろうなって。それにあの光の柱、あれのおかげで台風は去って晴れた。それどころか、破壊されたところも修復された」
「……」
龍一は元春とセレナを見て確信した。
「ライア、もしかしたら二人だけの希望かと思うはずやけど、俺らもかもしれない」
「龍一……」
「俺だけやない、久本さんや、倉木さんや、桐島さん、高町マネージャーなど。皆が希望の先があると思うんや。俺の勝手な推測やけどな」
「……それもまた、一理あるかもしれんな」
元春たちの周りは、必ずの希望が見える。そう知ったライア。
「さて、土産はどんなにしようかな~っと」
龍一はお土産を見て探した。
「沖縄の飾り一つにこれにしよっかな」
元春はお土産の飾りを選んだ。
「なんですか、それは?」
「シーサー人形」
「しーさーって、あの銅像にあったアレですか? この人形可愛らしいような」
「だからこそ、沖縄の思い出にいいと思ってね」
元春とエリーゼが話していると、セレナはあるものを見つけた。
「これは、手作りネックレス?」
すると、元春はセレナを見た。
「それ、気になるの?」
「あ、いえ。気になるというか……、でも、これ高いのでは……?」
値段だと五千円ぐらいだった。
「さすがにこれは……」
「おごるよ」
「え?」
元春の一言に、セレナは驚いた。
「おごるって、そんな……」
「昨日のお礼さ」
それは、元春が子供を助けたが、足をつってしまった事にセレナが助けたという。
「……はい、ありがとうございます」
セレナの顔が真っ赤っかになった。
そして、お土産を買った後、元春たちは沖縄空港へ向かった。
「……」
セレナは元春からおごってくれた沖縄の手作りネックレスを持って微笑みながら喜んだ。
手作りにネックレスには少し輝いていた石があった。その中には、珍しい石があった。その様子を円は見ていたのだ。
(元春がセレナさんにあげた手作りネックレス、中にはローズクォーツがあったわね。彼は知らないけど、石言葉は『愛情』だったわね。やっぱり、セレナさんが大切な者はきっと―)
こうして、元春たちの沖縄旅行は幕を閉じた。そしてまた、いつもの日常が来て、騒がしくなるだろう。
沖縄旅行編 おわり