捨て猫を拾ったらまさかの獣人でした
――ある日の雨の中、一匹の猫が震えていた。紺色の猫は、寒そうに丸くなっていた。
「にゃーご……」
その時だった。
「ん? 捨て猫か?」
仕事の帰りにて、傘をさして歩いている御子柴元春が、猫を見た。
「全く、最近の人はこういう事するなんてな……。動物だって命あるのに」
元春はそう言うと、猫を拾う。
「うちのアパートは、動物禁止はなかったはずだな」
「にゃーご、にゃーご……」
元春は猫を連れてアパートへと向かった。
「可愛いです~、この猫さん」
帰宅すると、公休日だったセレナたちが待っていた。
「お兄ちゃん、この猫どうしたの?」
「拾ったんだよ」
「それにしても、ビショ濡れですね。どうしましょうか?」
元春は言った。
「とりあえず、清潔なタオルがあったはず。それ持ってきて」
「わかりました」
エリーゼはタオルを持ってきて、元春はタオルで軽く猫の体をふいた。
「それにしても、猫さん寒そうですね」
「お風呂に行って、少し温めようか」
「そうですね、やかんにお湯を入れて沸かしますね」
「少しでいいんだ。猫は、水とか苦手だからな、ぬるま湯で十分だよ」
元春達は、拾った猫のため準備した。
元春は風呂場にて準備をした。
セレナはやかんにお湯を少し温めて、一分間ぐらいに沸かした。
「洗面器に入れてくれないか?」
やかんに入ってお湯を洗面器に入れた。
「にゃーご……」
「少し我慢してね」
お湯に猫を入れた。そして、石けんで猫を洗った。
「にゃーご、にゃーご」
「気持ちいいか? すぐに温めてやるからな」
丁寧にする元春。だが、その時だった。
「? なんだ?」
紺色の猫が、ボンッと煙が出てきた。
「!?」
そこへ、セレナたちも駆け付けた。
「元春さん!」
「お兄ちゃん!」
「どうしたのですか!?」
咳を吹き込む元春。そこにいたのは……。
「ありがとう」
「?」
人間で頭に耳、腰に尻尾が生えていた。
「…………」
だが、彼女は女性。しかも、裸だった。
「! うわああああああああああああ!」
元春は彼女の全裸にて叫んだ。
そして……。
「やっぱりここにいた。セレナ団長とエリーゼ隊長」
「……、その姿はもしかして、キャロルですか?」
元春は言った。
「知り合い?」
セレナは説明した。
「呪術師の獣人のキャロル・ケットシーです」
「てことは、アンタも異世界から来たのかよ」
「ん」
キャロルは頭をくしくしした。
「獣人ということは、久本さんと同居しているソルトさんと同じなんだな」
「ソルト? それって、ソルト・シールス?」
「あ、ああ」
これにキャロルは思った。
「そうなんだ。で、この世界に来て獣人がいないから、猫の姿でいたんだけど」
「雨のせいで寒くなったんですか?」
「そうなる」
キャロルは頷いた。
「それにしても、呪術師にも異世界にいたんだね」
「うん。だからお礼を言わせて」
キャロルは元春に近づく。
「ちょっ、ちょっと! 近いですが!?」
「気に入ったから」
「気に入ったって……」
その時だった。
「どっせいぃぃぃぃぃぃ!」
セレナ、エリーゼ、咲夜の三人は元春を押した。
「ぶべらっ!」
「お兄ちゃんに何してるの、アンタは!」
「? 別に気に入ったから」
「そ、それは駄目ですよ! そんなことしたら、元春さん困ります!」
「キャロルは羞恥心とかないのですか!?」
これにキャロルは首を傾けた。
「……?」
このことに元春は言った。
「さ、三人とも、落ち着いて。要するに、恩返ししたいだけだよね」
「うん」
キャロルは頷き、これに元春は考えた。
「といっても、どうしようか……」
元春が考えて決めた結果は翌日だった。
「というわけで、うちに働くことになったキャロルさんです」
「よろしく」
ハトバにて働くことになった。
「可愛い~」
「猫かいな! 世の中ってそういうのもあるんやな……」
そして元春の考えに、義子と雪子は言った。
「大丈夫なのか、元春?」
「少し変わった薬局店になりそうね」
「ハハハ……」
元春は苦笑いした。
確かにこの先、この店には変わった人が多い。少しハトバの将来が心配だった。