それぞれの旅行の準備をしています
―前回のあらすじ。御子柴元春率いるハトバ小樽店に初の社員旅行が決まった。場所はなんと、南の島・沖縄県の四泊五日の旅行。もちろん本部からの飛行機代なども、すでに手配済みだった。
沖縄と言えば、有名なスポットやダイビング体験などもある。旅行の為に、近日に出発することとなった。各社員の所でも、動きが起こり始める。
「なに? 社員旅行だと?」
龍一はライア達に、社員旅行の事を話した。
「そうや、場所は沖縄県。南の島に行くんや」
「ほう、南の島か。そこへ行ってどうするのだ?」
「バカンスや」
「バカンスだと?」
「店長が羽目を外して楽しめってことや」
このことにライアは頬を膨らむ。
「? なんや?」
これにロレナは言った。
「おそらくは、羨ましいかと」
だが、図星なライアは言い訳をした。
「そ、そんなことない! 我は羨ましくなんかないぞ!」
これに龍一は、ライアの態度を見て思った。
「行きたいんやな?」
「うぐ……ッ!」
ギクッとしたライア。
「行きたいなら行くって言えばええやん」
「いやそんなこと一言も……、……え?」
龍一の言葉に、ライアは唖然した。
「いま、何と言った?」
「行きたいなら行くって言えば、って」
ライアは唖然しているが、ロレナもマリーナも驚いていた。
「龍一様、それはつまり……、私達も旅行に同行してもいいと?」
「そうや」
龍一は軽く答えた。
「本気なのか?」
「店長が言ってたで、連れでも構わないってな。親子連れも可能や」
「……」
すると、ライアは旅行に行けることに態度が変わった。
「な、なぁ……」
「なんや?」
「おきなわ、だったな? そこに何があるのだ?」
「何って……、どう言えばええんやろうか?」
龍一は説明したいが、異世界出身であるライア達にはどう納得な話をすればいいのか。
すると龍一は、ある物を持っていることに思い出した。
「そうやった! 確か店長から沖縄のパンフレットを渡されたんや」
カバンから元春(本当は本部からの渡し物)に渡されたパンフレットをライア達に見せた。
「簡単な沖縄のパンフレットや。写真でよく見いや」
写真を見ると、沖縄のスポットやスポーツなどもあった。
「ほう……、これは……」
「すごいやろ? 俺らは近日にそこへ行くんや」
「なるほど。まさにこれは、バカンスなところですね」
ロレナも流石に頷いて納得していた。
すると―。
「へぇ~、沖縄のバカンスねぇ」
「!」
ライア達の背筋がビーンと来た。その後ろに、紅麻衣がいたのだった。
「ま、麻衣様!? いつからいたのですか!?」
「隣の部屋から。旅行準備中に、聞こえていたから」
麻衣は指でライアのほっぺをウリウリした。
「行きたいなら言えばいいのに~」
「……」
ライアは恥ずかしそうに沈黙した。
(といっても、ライアはエリーゼさんとは仲が悪いからなぁ。俺が監視しないとアカンな)
その頃、義子のとこでは……。
「社員旅行ですか?」
「娘も連れて行くからな。もちろん、シャルア。お前も行くんだよ」
「私なんかがいいのですか?」
義子は言った。
「御子柴は羽を伸ばした方がいいと言ったからな。お前を一人にするわけにはいかないからな」
シャルアはこれに考え、決断した。
「分かりました。同行しましょう」
「本気か?」
「主の為なら」
ハトバの店員たちも、それぞれ近日に旅行に同行する者も、荷物の準備をしていた。
そして……、ハトバ小樽店メンバーの社員旅行日が来た。
皆は、羽田空港に集まった。
「やはり、貴方も同行ですか?」
「我は龍一に誘われたのだ、文句あるか?」
「ありませんが、足引っ張らないでくださいね」
「その台詞、そのまま返そうぞ」
エリーゼとライアの睨みに、ロレナはツッコんだ。
「どっちもどっちもです」
これに見た和正は二人を見て思う。
「睨み合っても、きっと楽しみにしていたはず。好奇心を楽しむ踊るかの如しです」
「いや、あれいつものやつやから」
セレナは空を見て思った。
(元春さんとどうすべきか……、別世界から来た私でも、恋してもいいのでしょうか?)
するとそこへ―。
「セレナさん?」
「元春さん」
「大丈夫? もしかして、飛行機に弱い?」
「いえ、そんなことは……」
セレナは両手を振ると、隣から円が言う。
「元春、全員そろったみたいね」
「ああ、そうだな」
元春は皆に言う。
「皆、よく聞いてくれ。今日から、社員旅行の四泊五日、沖縄県でバカンスだ。羽目を外していいが、やりすぎには注意しろよ。飛行機代もホテル代も、本部から出している。決してふざけないようにしてくれ。―また、乗り物酔いやすい者が居たら、俺か高町に言ってくれ」
「はーい」
「よし、飛行機に乗って、沖縄に行くぞ! 社員旅行の始まりだ」
こうして、元春一行は沖縄県に行くために、飛行機に乗った。
だが、この時元春達に、トラブルが起こることを本人たちは知らなかった。
つづく