ハトバ社員が遂に旅行進出しました
それは、ある島にての事。一つの洞窟があった。その中は柱のような光があり、アクア色のような湖があった。すると、その中に何かが呟いて声を出した。
「………」
何かは上を向いて空を見た。
「遂に、この時が来たのか……。この世界を、二つの世界を救う者が―」
ハトバ小樽店にて、本部からの報告があり、元春は全員を読んだ。
「今日は皆に集まったのは他でもない。実は本部からの朗報が来たんだ」
「朗報とは?」
元春は朗報を言った。
「なんと、うちらの店が繁盛しているため、特別に社員旅行の許可が出た」
「! 本当ですか?」
「出張じゃないのか?」
信じられない顔をしている社員たちはざわめく。
「ガチのバカンス、四泊五日の旅行だ。本部からの上司から言うと、羽を伸ばして楽しんで来い、ということだ」
「お~!」
これに皆は興奮した。
「その旅行先って、どこですかいな?」
「沖縄県だ」
これに驚いたのは、龍一だった。
「沖縄って、あの南国のですかいな! ホンマに大丈夫ですか?」
「本部によると、飛行機のチケット代などは手配済みらしい」
「太っ腹なもんやなぁ」
「さらに社員旅行だけじゃない。親子連れでも構わないと言っている」
その話に義子は納得した。
「それなら、安心だな」
すると―。
「あの……、それってどこですか?」
セレナやエリーゼは不思議な顔をしていた。これに言ったのは桜子だった。
「日本からの南にある国だよ~。中で一番暑くて、海が美しくて、トロピカルな国なの~」
「トロピカルな国、ですか?」
「噂によると、水族館があったり~、パワースポットやダイビング体験もできるんだよ~!」
桜子は語りだし、目を輝かせる。
「まさに癒しな旅行だよ~」
「は、はぁ……」
元春は旅行について言う。
「参加者はもちろん全員だ。本部からのご褒美と言っても、くれぐれも浮かばれないように」
そして、休憩室にて桜子達は社員旅行の事を話した。
「近日にて社員旅行かぁ~、沖縄県は暑くて南国なところだけど、楽しみだねぇ~」
ワクワクしていた桜子。
「特にパワースポットが気になるんだよねぇ~」
「そのパワースポットって、何があるのですか?」
これに雪子は言った。
「確か……、沖縄県古宇利島というところにあるわ」
「こうりじま?」
「あの島は別名・恋の島というパワースポットなのよ。なんでも、恋島伝説があるらしくてねぇ」
「この世界にはそういう伝説があるのですか?」
桜子は、恋島伝説について言った。
「大昔に、神様がその島に男女二人は海岸でジュゴンのつがいを見て、後に子作りを知った。それ以来子孫から、今になって伝説を残しているというスポットなんだよね」
「こ、こ、子作り……」
セレナはこれに赤面をした。
「大丈夫か、セレナ?」
「は、はい……」
さらに、雪子はもう一つのスポットを思い出した。
「あ、そういえば……これも噂だけど、沖縄県那覇辺りの海に野生のクジラが出たらしいわ」
「野生のクジラ?」
「そのクジラを見たら、幸せになるという噂なのよ」
「そんな噂が……」
このことに、セレナは黙っていた。
「? 団長? どうしましたか?」
横からエリーゼが声を掛ける。
「あ、いえ、何も……」
そして、時刻は二時になった頃……、セレナはため息をしていた。
「はぁ~……」
するとそこへ―。
「セレナさん?」
「! 円さん」
声を掛けてきたのは、円だった。
「どうしたの? 元気ないけど?」
「いえ、ちょっと疲れているだけで……」
これに円は思った。
「もしかして、社員旅行の件?」
「え? どうしてそれを?」
「私も行くからよ。ここのマネージャーだから」
「……」
セレナは元気がなかった。
円は、彼女の顔を見て横に座った。
「相談、するわよ。何かあったかは知らないけど」
「円さん……」
「最近、セレナさんは元春を見て、ため息していた。きっと何かあるかもしれないって思って」
「……」
これにセレナは言った。
「鋭いのですね、円さんは」
「元春とは昔からの幼馴染だったから、分かるよ。けど、セレナさんも彼のこと気になってるんでしょ?」
「……この世界に来て、元春さんと出会った。そして、あの人の事を気になってしまった。異世界では騎士団長として、皆からは憧れで見ていた。なのに、今の私は……」
セレナは俯いていた。
「……そんなに苦しいなら、本当の気持ちでいかないと」
円の言葉に、セレナは驚く。
「それは、どういう?」
「近日には、皆で社員旅行。ならば、元春がきっと旅の筆頭になるから、そこで彼の気持ちがあるかどうかの勝負よ」
「……気持ち、ですか」
セレナの心に少しずつ揺らいでいた。
つづく