外人さんが小樽アパートに引っ越してきました
―ある日の朝。小樽アパートにて、一台のトラックが止めていた。
「おや、アンタかい。ウチのアパートに引っ越してきた、外人さんというのは? 私はここの管理人の柳文子というもんだけど、アンタ一人なのかい?」
「いや、もう一人従者がイル。だが、今は買い物でいないのダ」
「それなら、ここに住んでいる若いモンにお願いするかね?」
これに外人は喜んだ。
「お~! それは助かるゾ!」
「ところで、名前はなんていうのかね?」
外人は本名を言う。
「メルア・スリキート、ダ」
「で、大家さん。俺達を呼んだのは、その人の引っ越しの手伝いなのか?」
元春達は小樽アパートの管理人・柳文子に呼ばれて来た。
「ああ、そうだ。若いモンのアンタらならお願いするからな」
「それはいいのですが、その人は……?」
セレナはメルアの方を指した。
「ウチに越してきた、メルアさんだ。ギリシャ人でな、日本が気に入ってここにやって来たらしい」
「ギリシャ人ですか……?」
エリーゼは言った。
「ぎりしゃ? 何ですかそれは?」
元春はギリシャのことを言う。
「ヨーロッパ州にある国だ。ここから飛行機ではかなり遠くで、ギリシャ神話が有名なとこだからな」
「でも、ここの日本語喋ってますよ」
「おそらく、日本語をマスターしたんだろうな。ギリシャ人はギリシャ語で言うからな」
メルアは言う。
「お前たちは、名前何というのダ?」
元春達は自己紹介をした。
「御子柴元春」
「セレナ・ガーネットです」
「エリーゼ・ルドベキア」
「御子柴咲夜です」
「エルザ・リークレット」
「高町円といいます」
メルアは元春を見て言う。
「ほほう、そういう名前なのカ。私はメルア・スリキート、国の王女次女であるゾ!」
メルアの一言に、元春は首を傾げた。
「お、王女? 大家さん、この人頭おかしいのですか?」
文子は言う。
「私もそう思っていたんだが、どうやらこの人、ギリシャのある都市の王女らしいんだ」
「…………マジですか?」
これにセレナ達も、少し戸惑う。
「元春さん、この現世にも王国あるのですか?」
「よくわからないが、もし本当だったら厄介な人が越して来たことになるな」
「さて、早速だが引っ越しの手伝いを頼む」
メルアは布をどかすと、そこにはかなりの荷物があった。
「…………」
元春達は啞然と見て、ギリシャ人の王女すごいなとビックリしていた。
その頃、キャロルは―。
「…………」
猫と遊んでいた。
「そろそろ、戻らないと」
アパートに戻ることにしたキャロル。すると、そこにいたのは―。
「…………」
「…………? パンダ?」
目の前に、何故かパンダがいた。
「…………」
この時、キャロルは目の前にいたパンダに思考した。
(ソルフィルスでは普通だけど、この世界にパンダいてもいいのかな? でも、なんでここにいるのか分からないけど)
「…………」
「何か用?」
キャロルはとりあえず、ツッコまないことにしてパンダに尋ねた。
すると、パンダは何かを取り出した。
「…………? 住所? しかも小樽アパート住民募集?」
小樽アパートに住む人の募集のチラシのようだ。
「もしかして、捜してる?」
パンダは頷いた。
「ちょうどいい、私もそこに住んでいる。案内する」
キャロルはパンダを小樽アパートへ案内した。
その頃、元春達は―。
「これで、全部ですかね」
「ああ、そうダ。今日から、ここが我のスタートであるゾ!」
「生活ですか?」
メルアは言う。
「いや、生活だけじゃなイ。旅行もいくゾ」
「旅行?」
「日本列島、すべて制覇の旅でアル! 四十七の都道府県全ての旅行に行くのダ」
「は、はぁ……」
元春達は汗で頬を垂らした。
「更に、近日には宮城県に行く予定だからナ」
これに元春はメルアについて気付いたことがあった。
「気になっていたのですが、大家さんに聞いた話だと、あなたは日本が気に入って、ここに住み始めたんですよね?」
メルアは答えた。
「そうダ。最初に空港で入国したのは、関西にある大阪府だったのダ。ところが日本が面白く、京都府、奈良県、兵庫県など旅行して気に入ったのダ。日本の大都市である東京都に来て、ここに我はすむことになっタ。それで、近いうちに宮城県に行く予定なのだからナ。一目で伊達政宗像を見たいものダ」
「…………」
これにセレナたちは思う。
「こういう人、いるんですね」
「…………」
だが、一つだけ気になっていたことがある。
「でも、一人旅なのですか?」
円の質問に、メルアは言う。
「ああ、それなら大丈夫ダ。我には眷属がいるのだからナ」
「眷属?」
するとそこへ―。
「! お、お兄ちゃん! 向こうに……」
咲夜は何かを見て、ビックリしていた。
「ん?」
そこにいたのは、キャロルとパンダだった。
「ぱ、ぱぱぱぱぱ、パンダァァァァァァァ!?」
「お~! 戻ったか、ダンカンヨ!」
「あ。元春や皆、何してるの?」
元春達は唖然しながら言う。
「引っ越しの手伝い……って、なんでパンダがここにいるんだよ!」
メルアはダンカンというパンダの事を文句言う。
「パンダではない、ダンカンダ!」
「いやいやいやいや! どう見ても、パンダなんですけど!? ていうか、眷属ってパンダの事!?」
メルアはダンカンの背中に乗って、アパートの中に入ろうとした。
「引っ越しありがとうナ。ごきげんようゾ!」
アパートの中に入って行くメルアとダンカン。この時、元春達は呆然としていた。
「…………厄介な人、越して来たなぁ」
ややこしい人物だ、そう思った元春達だった。