黒き男が詐欺師にアドバイスをしたそうです
―前回のあらすじ。ハトバに新たなコーナー・酒類を加えることになった。だが、ビール・酒類の店との契約は別の店にて契約済みだった。残ったのは、『酒井屋』という酒類の品物がある店だった。契約に向かった元春、セレナとエリーゼ。しかし、昔から続いていた店で、五代目・酒井炭三が守ってきた酒屋だった。仕方なく一回出直しすると、そこに北野という男がやってきて、炭三と契約しようとしていたが、元春は、北野の行動に詐欺だと気付くのだった。
「わ、私が詐欺師? 何のことですかな?」
「この契約書にサインした後、ここの住所についてのこと書いてあるでしょ? もし、名前とここの住所を書いた場合は、それに特定して金庫や隠している通帳などを調べるため。この建物は古いからおそらく何かあると、ターゲットを傀儡のように信用して騙し取る。どうせ、アンタは契約したのち、この店に上がらせるつもりだろうな」
「な、何を言って……、そんなの知らないよ!」
「金の目当てで、この建物を調べるんだろ?」
「…………!」
北野はギグッとした。
「貴様、いい加減にしろ! 証拠はあるのか!?」
「丁度、胸ポケットにペンがありますねぇ」
元春は北野が持っていたペンを取った。
「何ですか、これは?」
「小型用のペンカメラだ」
「! そのような物があるのですか?」
「うぐ……っ」
北野は元春によってバラされてしまう。
「さて、どうでしょうか?」
すると北野はこれに―。
「覚えてろよ!」
と、逃げて行った。これに炭三は元春を見て気付く。
「アンタ、凄いな。もう少しでやられるとこだったな」
「すみません、こんなことになってしまって……」
その時、炭三は決断した。
「こんな若い奴、なかなかいないな。アンタ、ハトバの御子柴と言ったな?」
「は、はい」
「契約、してやるよ。アンタの店」
まさかの契約するという流れだった。
「! 本当ですか!?」
元春達もビックリしていた。今まで断っていた彼が、遂に契約したいと願ってきたのだ。
「正直、アンタらのような奴らは初めてだな。契約してやるよ、ハトバ小樽店だったな。契約書を出してくれ」
「わ、分かりました」
契約書を出した元春。炭三は、自分のサインを書いた。
こうして、契約成立ができた。酒類が出るのは一週間後になると炭三は言う。これに、セレナとエリーゼはビックリしていた。
「それにしても、頑固なあの男がまさか契約するとは思っていなかったですね」
「元春さん、これはかなりの期待ですよ。チーフも喜びますよ!」
「…………」
だが、何故か元春は深刻そうな顔をしていた。
「元春さん?」
「…………確かに契約はできた。でも、どうも不穏がするんだよな」
「どういうことですか?」
元春はその理由を言う。
「あの北野とかいう、詐欺師のことだよ。あの男が諦めてない可能性があるかもしれない」
「か、考えすぎですよ」
「何も起こらなければいいけど……」
その不穏は、元春は少し当たるのだった。
その頃、詐欺師だと見破られた北野という男は―。
「くそっ、あの男! 俺が詐欺師だと見破りやがって! だが、こんなところで諦めない俺じゃないぞ! だが、あの頑固野郎をどうするかだな……」
そこへ―。
「おや、何かお困りだね」
現れたのは、黒村克茂だった。
「ん? アンタ誰だ?」
「ただの相談者だ。困ってるなら、知恵を借りようかな?」
「…………」
北野は思った。
(なんだ、この怪しい奴は? いや、待てよ……。もし、こいつを嘘なことを言って利用すれば、あの頑固な奴を……)
北野はニヤリとした。
「実は、ある方が契約してほしいのですが、どうしても拒否するんですよ。このままでは、うちの会社は大赤字になってしまいます。どうすればいいのか……」
「なるほど、それならいい方法がありますよ。その人と君の会社と簡単に契約が出来ることを」
「有難い、助かります!」
「ところで、その人物の店はどこですか?」
北野は黒村に教えた。
「『酒井屋』というトコだよ」
「そう、ではまず、その男を私が会って見ましょう。その後、翌日には契約ができると思いますから」
一方、炭三は元春らを見て知り、亡くなった妻の遺影しながら言った。
「あんな若造は初めてだった。俺にとってはなかなかやる奴だった。決めたよ、これからハトバ小樽店とかいうとこで、ウチの酒類を出すよ。ようやく、報われた気分がするよ」
そこへ―。
「ごめんください」
「? 誰だ?」
黒村がやって来た。
「実は話がありまして、貴方にどうしても重要な話があると」
「何?」
その陰に、北野がいた。
「…………あの男を利用して、犠牲の罪になれば……」
と、スマホで写真や動画と撮っていた。
その翌日……。
(ついに、酒コーナーができるな。少しかかるが、更に店に客が来るだろうな)
かなりご機嫌な元春。ところが―。
「元春さん、大変です!」
「? どうしたの?」
「昨日契約した『酒井屋』が……!」
元春達に危機が迫っていた。それは、『酒井屋』に事件が起こったのだった。
つづく




