酒類を契約するためお酒の店へと向かいました
ある日の事、ハトバのチーフ・長脇茂からの話が来た。それは、ハトバの商品コーナーに一つ増えた場所の話である。
「あそこに、酒類を置くのですか?」
「そうなんだ。酒類だけじゃなく、ワインやビール。それから、おつまみのおやつもね」
「それはいいのですが、大丈夫なのですか?」
茂は言った。
「ワインやおつまみは、既に手配はとっているからね。あとは、ビールとお酒だよ。ただ……」
「ただ?」
茂は不安そうに言う。
「ビールと酒類のとこの店の契約は既に別の店が抑えて、ウチでは契約できないんだ」
「そうなってしまったら、どうなるのですか?」
セレナは心配そうに言うと、茂はメモを見て契約場所を言う。
「まぁ、あと一つだけ。ウチと契約ができる場所があるんだ。そこに行けば、契約を成立できるかどうかだけどね」
「それでもいいです、私達が直々にそこへ向かいましょう」
「あぁ、頼んだよ」
「ちなみに、契約場所はどこですか?」
茂は契約する店を言う。
「『酒井屋』だ」
こうして、元春はセレナとエリーゼと共に『酒井屋』という店へ向かった。住所は茂が教えてくれたメモで見る。三人は商談交渉の為、いつものハトバの服装ではなく、元春はオフィス、セレナとエリーゼはキャリアウーマンの服装で行くことになっていた。
「この格好って、この世界ではキャリアウーマンって言うんですね。といっても、これは……」
「団長と同様、太ももの足出てますし、丸見えです。現世ではこういうのあるんですか?」
セレナとエリーゼは、キャリアウーマンの恰好で少し恥ずかしがっていた。
「仕事ではこういう恰好しないといけないんだ。日本は真面目で几帳面な国だからな」
「なるほど。でもこういうの、慣れないといけませんね」
「団長……」
エリーゼは険しい顔をした。
「ところで、その『酒井屋』って、どこにあるんでしょうか?」
元春は茂に渡されたメモを見た。
「この住所を見て、そこに行けばいいんだ」
「といっても、酒の店ですから目立つのでは?」
「確かにそうかもしれない」
しかし、元春達は調べてもその店はなかなか見つからない。
数十分後……。
「見つかりませんね……」
「おかしいなぁ、『酒井屋』って一般の家じゃないはずだが……」
「もしかして、その店もうないのでは?」
「う~ん……」
元春はやむを得なく、人に尋ねた。
「すみません、この辺りに『酒井屋』という店はどこですか?」
尋ねた相手はおじいさんだった。
「それなら、あそこの路地裏にあるぞ」
「路地裏?」
「昔からず~っとある酒屋だからな。今は既に令和であの店は大正時代からやっていたが、流行らなくなってしまって、今にも潰れそうな感じなんだ」
「はぁ……」
おじいさんは言う。
「アンタら、そこに行くのか?」
「えぇ。それが何か……?」
「行ったほうが、あの人の店は継続できる。だが、契約したい者がみ~んな、撤回していく。若いアンタらなら、もしかしたら納得できるかもしれん」
「…………」
おじいさんの言葉に、元春達は路地裏へ向かった。
そこは、かなり古い酒屋だった。
「これは……!」
和風な酒屋だった。元春達は呆然したのだった。
「なるほど、これはかなり古いところですね。といっても、ホコリとかもクモの巣も一切ありませんね。でも、ここの店なら契約できそうなのに、どうして誰もここに来なかったのでしょうか?」
するとだった。
「誰だ?」
「!」
そこにいたのは中年の男だった。
「俺の店にここまで来るとはな。情報で良く調べたな」
「あなたは?」
「俺はここの店の五代目・酒井炭三だ。アンタらは?」
元春は言う。
「私はハトバ小樽店の店長・御子柴といいます。実は、あなたの酒とビール類、契約してほしいのです」
「フン、ようやく認めた人間がいたか。中は清潔にしているのに、外回りはボロボロで悪評が広まってしまった。おかげで、こんな路地裏でやっていた事に自分として許せなかったわ」
「なら、別の所に移動すればよかったのでは?」
エリーゼが言うと、炭三には理由があった。
「そいつは無理だな。なんせここは、昔からず~~~っと、守っている店だ。ご先祖様から受け継いだものだからな」
「そうだったのですか……」
「だから、俺は死ぬまでこの店を守りたいんでな」
「…………」
これに元春達は、炭三の執念に感じた。
「元春さん、どうしましょうか?」
「こいつは参ったなぁ……、一回出直して、長脇チーフに報告するしかないな」
出直すことにした元春達。その時だった。
「すみませ~ん、ここに酒井さんいらっしゃいますか?」
「?」
やって来たのは、サングラスをした男だった。
「なんだ?」
「私は北野と申しまして、酒についての契約してほしいのです。我が社の酒の製造としての契約してほしい物で……」
「…………」
元春は北野を見て、何かに怪しんだ。
「フーン、そうかい。だが、ここは代々から守ってきたところだからな」
「それはご安心を、こちらにサインをすれば」
「…………」
その時だった。
「サインは止めといたほうがいいのでは?」
「!?」
元春は北野の前で言う。
「な、何ですかな? あなたは」
「…………酒井さん、こいつとは契約しなくていいですよ。というより、騙されるとこでしたよ。そうですよね、悪徳詐欺師さん」
「な……!」
元春は北野に対して、詐欺師だと気付いたのだった。
つづく




