騎士団の方が風邪を引いた店長の看病をしてくれました
ある日のこと、元春は風邪を引いた。
「三十八度、熱あるなぁ」
「大丈夫ですか、元春さん?」
セレナは心配して言う。
「う~ん、さすがにこれは休んだほうがいいかもしれないな」
「私が店に伝えときましょうか?」
「頼むよ。確か、今日の店のカギの担当は桐島さんだったはず」
セレナは電話をかけることにした。
「お兄ちゃん、私が代わりに行こうかな?」
そう言ったのは、咲夜だった。
「大丈夫だよ、咲夜。今日は非番だから、咲夜は―」
しかし、咲夜は……。
「やっぱりお兄ちゃんの代わりに行くわ!」
「え、ちょ、咲夜!?」
咲夜は素早く準備して、出掛けた。
そこへ……。
「今のは、咲夜さんですか?」
「代わりに行くって言って、もう行っちゃった」
するとそこへ、セレナが戻ってきた。
「あの~、桐島さんから電話で通じましたが、休んでいいと」
「わかった」
「それから、私とエリーゼさんで元春さんを看病しろと」
「わかった。……、は?」
元春は驚いていた。
「いまなんて?」
「つまり、私とエリーゼさんで元春さんを看病しろと。桐島さんが、休んでいいと」
「……あの人、何考えているんだよ」
元春はため息をした。
「まぁ、仕方ないわ。とりあえず元春の看病をしないと」
「そうですね」
セレナは頷いた。
こうして、二人は元春の看病をすることになった。
数分後……。
「しかし、よく考えたら女性二人に看病するなんて初めてなんだけど」
そこへ、エリーゼが来た。
「元春さん、風邪が治る物を持ってきましたよ」
「あぁ、ありがとう」
「これでよくなると思いますので」
エリーゼが用意したのは……。
「…………」
ネギだった。
「なぜネギ?」
「風邪をひいたときはこれです。兵士が風邪をひいたときはこれを使っていました」
これに元春は言った。
「いや分かるけど、これでネギはないよ」
「この世界ではそういうのは流行っていないのですか?」
「流行るとか、こういうやり方には現世にはないよ」
「では、何を使っているのですか?」
元春はエリーゼに、風邪の治し方のことを言った。
「まずは、氷枕とかだね。風邪薬もあるから、それを一錠から三錠ぐらいに飲む。それから、額に貼る冷えピタとか、あと汗が出たときはスポーツドリンク」
「そういうのもあるのですね。この世界の風邪の治し方は便利ですね」
エリーゼは感心した。
すると、セレナは何処かへと出かける。
「スーパーに行って、おかゆを買ってきます」
「ありがとう」
セレナは出かけた。
「しかし、何とか早めに治したいですね。これに治す方法は……」
エリーゼは考えると、一つあった。
「あ、ありました。アレなら治るかも」
「アレって?」
エリーゼは外へ行った。
「? 一体何するつもりなんだろう?」
元春は首を傾けた。
数分後、エリーゼは戻ってきて何か作っていた。
「これだったら……」
「…………、エリーゼさん? 何やっているのですか? というか、もの凄~く臭いけど?」
「実は、ソルフィルスではこれがめずらしく、秘伝の薬の一つなんです」
「秘伝の薬って、一体何作っているの?」
エリーゼは言った。
「ミミズのだし汁」
「おえぇぇぇぇっ!」
ミミズのだし汁と言ったのち、元春は少し吐き気した。
「出来ました、どうぞ」
「いやいやいやいや、さすがにそれはないだろ!? というか、なぜミミズなんだよ!?」
「ミミズには薬があります。なにしろ、これにはいろいろな病気にて、すべての病が吹っ飛んだのがこのミミズなんですよ。死の病から助かった人もいます」
「いやでも、さすがにこういうのはないよ!」
「いいから飲んでください! こうなったら強引です!」
エリーゼは、強引で元春を拘束した。
「ちょ、やめて!」
そして、元春はえりーぜによって、ミミズのだし汁を飲んだ。
すると……。
「んがぁァァァァァァァァ!」
小樽市の半分くらいで悲痛の叫びをした。
翌日、元春は風邪が治った。しかし、そのかわりエリーゼが風邪を引いた。
「う~ん……」
「昨日、元春さんにミミズのだし汁飲んだそうですね」
「いや、団長……、これにはその……」
言い訳するエリーゼ。
「風邪薬の粉があるけど……」
「もしかして、苦いのですか?」
「苦いけど?」
これにエリーゼは……。
「な、なんだか、よくなりましたねぇ」
冷や汗をかいて、ごまかしていた。
「いやもう手遅れですよ」
セレナはツッコんだ。
「いや、私もう大丈夫なんで! そういうのはいらないので!」
「さすがに飲んだほうがいいよ、ほら」
「ちょ、苦いのは、嫌ァァァァ!」
エリーゼは悲痛の声に叫んだのだった。