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001. 魔法発動の要件

 『予知の水晶』とは?

 世界中がそう思った。

 というか、人類の誰もが知らなかったのだ。


 結局、世界中で『予知の水晶』が探されたものの、結局見つからずに24時間が過ぎた。

 そしてこの世界を代表して、中華人民共和国外交部から『異世界軍』に対して声明が発表された。

 「まず台湾は我が国不可分の領土にして『異世界軍』を名乗るテロ組織はすぐに立ち去るべきである。」

 「次に『異世界軍』の要求する『予知の水晶』についてはこの世界で発見できなかった」

 「以上の事から『異世界軍』は即刻台湾を退去すべきである」

 この声明を受け、『異世界軍』は台湾島から撤退を始めた。しかし住民は一人も残っていなかった。

 世界中がこの『異世界軍』を注視した。

 彼等は『大召喚陣』とネットでは呼ばれていた光環には向かわず、与那国島へと向かった。


 ―日本国自衛隊

 「仮称『異世界軍』、現在与那国島3km地点まで接近」

 「上陸の開始と同時に『わが国に対する武力攻撃』と解釈する」


 日本国は憲法9条について次のように解釈している。許容される自衛の措置としての「武力の行使」とは、

 ①わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること

 ②これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと

 ③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと


 官邸も大慌てで最高裁からの判断を得て、国会の事後承認を条件に「存立危機事態宣言時の対応」と「存立危機事態宣言」を閣議決定した。

 「存立危機事態宣言時の対応」では、「存立危機事態宣言」が閣議決定された際に、武力行使の制限を憲法の許す限りで一切撤廃するというものであった。

 また『異世界軍』は正式な国家や主権体ではなく国際テロ組織であるため、武力行使は何ら問題はないと総理は会見で繰り返し強調した。


 しかし自衛隊機は『全機』撃墜され、駆け付けた駆逐艦なども『全て』沈められた。

 このニュースはどこからか漏れて、ネット上で拡散された。


 「自衛隊が全滅」

 センセーショナルな書き方に、日本国民は動揺した。

 南洋海域はすぐさま制圧され、日本国が僅か半日にして、沖縄県周辺の制海・制空権をも失った象徴となる出来事であった。


 「日本国政府に通知する」

 『異世界軍』からの通知が来たのはその日の21時。

 「日本国は『予知の水晶』を提供すべし」

 たったこの一文であった。

 しかしこの一文もまたネットに拡散され、『予知の水晶』とは何かが俎上に上がった。


 22時、またしても通知がやってきた。

 「日本国が『予知の水晶』を渡さぬ場合、我々は如何なる魔法攻撃をもはねのけて制圧する事が可能である」

 日本国政府はこの通知を公開した。尤も、公開せずとも明らかになっていたのだが。

 ネットでは「魔法攻撃?」と疑問符が上がっていた。




 魔法攻撃。この一文を見たラノベ作家・曽我二十六は、目を閉じて右手を宙に掲げ、こう呟いてみた。

 「ファイヤー・マジック」

 すると右手から火が出て、家の天井を焦がした。

 彼は焦って「水を!」と叫んだ。

 すると今度は水が現れてそれは消火された。

 すぐに家族がやって来て、

 「何事?」

 と彼に問う。しかしながら彼にも何の事やら分からない。焦げた天井に濡れた床板。この二つに意識が向かぬようにして、何とか部屋から追い出した。


 先程は確かに火や水が出た。しかし今呟いても、何も起こらない。

 「再現性」がないのだ。

 再現性とは、一度やった事が同一条件下でもう一度行えるという事を指す。科学においてはこれが検証可能性の柱の一つとなっている。


 どうして…

 彼は考えた。しかし結論は出ず、眠気が彼を襲った。

 そして彼は目を閉じたまま、もう一度呟いた。

 「ファイヤー・マジック」

 すると右手から火が出て、今度は机が焦げる。しかし目を開けると火は止まる。

 彼はやがて次の事に気付いてメモ帳に書きだした。


 ①目を閉じて欲しいものを念じながら呟くとそのものが出てくる。

 ②目を開けるとそれは止まる。

 ③具体的なものしか想像できないが、それについて詳しく知っていれば「創造」できる。


 また片目を閉じてもこれは上手くいくらしい。

 彼はこれをすぐさまTwitterに上げた。

 これは拡散されたものの、多くの反応が寄せられた。

 「出来た!」

 「私は出来ませんでした。嘘ですか?」

 「いや、出来ましたよ」

 「#証拠を見せろ曽我二十六」

 ―出来た人と出来なかった人の差異は一体。

 最初に見た人は出来る人が多かった。しかしながら最近は「出来ない」と主張する人が多い。

 彼はそれぞれのアカウントを表形式にして調べてみた。本当は暇人ではないのだが。

 そして彼は法則を見出した。


 「魔法を使えるのはWeb投稿のラノベ作家だけ」


 彼はネットでこれを呟いた。

 しかしながらこれを信じる人は居なかった。

 「新規投稿してみたのに出来ないんだけど」

 このツイートが再現性を破壊した。


 何故、何故、何故?

 彼はまた考えた。間違いな筈がない。そう思い込んでいたのかもしれない。

 もう一度調べたが、確かに「始めたのに出来ない」という人以外は出来る人ばかりだ。


 やがて一つの意見がネット上で提起された。


 「侵攻前にラノベ作家だった人しか魔法使えない説」


 とてつもなくふざけた仮説だが、彼はこれを信じる他なかった。

 このツイートは数時間の考察勢検証時間(シンキングタイム)の後に拡散され、官邸にまで伝わった。


 翌日には官邸から次のような発表がなされた。

 「ラノベ作家の皆様は、魔法を使える模様です。発動の要件は…」

 彼の仮説は「誰が使えるか」という一点以外については殆ど合っていたが、あまり注目する者はいなかった。

 しかし彼にとってはそのくらいが丁度良いと思うのであった。

不定期連載です。

登場したいラノベ作家さんを募集中です。

Twitter @soga_26まで。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めて読むタイプのローファンタジーで新鮮に感じました。 カクヨムの大賞応募頑張ってください。 失礼ながら、作者が主人公で草、だが、それもありか・・・ 私の場合は、名前がネタ過ぎて自分が主…
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