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000. 異世界からの侵攻

 ―尖閣諸島・魚釣島上空。

 突如として、六芒星と逆五芒星を組み合わせたような図形が日中両国のレーダーに捉えられた。


 ―日本国

 海上保安庁ではこんな会話が交わされた。

 「中国軍の新型兵器でしょうか」

 「既に自衛隊機がスクランブル発進して調査に向かっているとの事」

 「詳細はそれまで待つとしよう」


 ―中華人民共和国

 中国海警局員もまた、部下にこう話した。

 「あれは日本国の戦闘機編隊か」

 「現在周辺海域の巡視船が調査にあたっています」


 ところが、両国の調査結果は予想と大きく異なった。


 ―日本国 

 事は日本国自衛隊に引き上げられていた。

 「先刻調査に向かった自衛隊機が行方不明とのこと」

 「官邸からの指示を待て。これは高度に政治的な事項だ」


 ―中華人民共和国

 中国海警局もまた、事態を注視せざるを得なくなっていた。

 「先程日本国自衛隊機が対象に接触。直後反応が消失」

 「確認だが、あれは日本国のものではないのだな?」

 「複数の巡視船がそれを確認しています」

 「では海警局からこれを北京に報告する。巡視船は引き続き警戒にあたれ」


 ―日本国

 日本国自衛隊では混乱が広がった。

 「先程、官邸より連絡があった。中国当局からも報告があったそうだ」

 「あれは中国軍のものではない、と?」

 「どうやらそのようだ」

 「引き続き周辺の警戒にあたれ」


 ―中華人民共和国

 中国海警局もまた、北京からの指示を受けていた。

 「日本国自衛隊機の反応消失について軍と共に詳細を調べよ。『日本当局からも』報告があった」

 海警局員の一人が訊く。

 「つまり?」

 「『あれ』は、日中どちらのものでもないということだ」




 「現在周辺空域を調査飛行中。中国軍機も周辺に3機。中国軍機から連絡あり。」

 「こちら中国軍機、自衛隊機に応答願う」

 「こちら日本国航空自衛隊。未知の飛行物体は既に貴国のものではないと確認している」

 暫くの沈黙の後、かすかに声が聞こえた。

 「…我失去(そうじゅうをうしなっ)Mayday(メーデー), Mayday(メーデー), Mayday(メーデー)…」

 そして光を放ち、中国軍機が消失した。

 「報告。中国軍機が謎の光の環に接近し、消失」

 これは北京と官邸とに瞬時に伝わった。




 ―首相官邸

 「総理。中国共産党主席より緊急電話会合の申し入れがありました」

 「こちらも申し入れたいと思っていた所だ、急いで繋げ」


 「今回の事態について確認したい。貴国もあの光環により戦闘機が行方不明になっていると聞くが」

 「その通りです。そのため、我が国としては至急情報協力をお願いしたい所です」

 「了解した。早速ではあるが、光環の降下について日中共同調査を行いたい」

 「光環の降下?」

 「先程より複数の海警局巡視船が光環の降下を確認している」

 光環の降下は次第に加速していった。

 日本政府が科学者を集めて日中科学者会合を準備する頃には、上空1万mにあった光環は上空1000mにまで到達していた。




 ―首相官邸

 「先程、中国海警局より自衛隊経由で連絡がありました」

 「何だ」

 「光環の中身の撮影に成功したとの事です」

 「その画像がこちらです」

 画像は一世代前のカメラで撮ったような劣悪な画像ではあったが、光環の中に大量の赤い点が映っていた。




 光環が遂に海面に到達した。

 魚釣島など尖閣諸島は光環に飲み込まれていた。

 中国海警局、そして日本国海上保安庁の船舶は共に音信不通となり、戦闘機も撃墜された。唯一の手掛かりは戦闘機から送られた映像で、それだけしか残らなかった。

 海面に達した光環の上からは、大量の龍の如き生き物や巨人、エルフのような空飛ぶ生物、ヤマタノオロチのような怪物、その他妖怪や魔物といった類のものが溢れ出ていた。

 そして両国に対し、未知の言語での音信が届いた。

 数時間にも及ぶ長い音信であったため、これの解読が可能だろうと研究者らは考えた。しかしこの数時間の間に、日中両国は周辺の制海権を失った。




 最初に襲われたのは台湾であった。

 台湾北東には数万から数十万という魔物が集結した。彼等は先鋒となる魔物が島を見つけ、一旦戻って仲間を呼んできたのであった。

 台北は抵抗むなしく十数分で制圧された。

 台湾島自体も北半が魔物の手に落ち、制圧下の北部台湾の住民は台北に集められた。

 台湾政府の残存勢力は高雄に集結し、他の地域を捨ててでも高雄を死守する事を当面の目標とした。

 アメリカ軍は「一つの中国」という中華人民共和国政府の理念に抵触する事を恐れ、台湾政府からの緊急援助要請を拒否した。というのもアメリカ政府では財政難が深刻化していた上に現状把握も出来てなかったためであった。そのため沖縄の米軍基地で警戒にあたるよう指示を出すのみに留まった。

 この頃、台湾が唯一の頼りとしていた日中両政府は共同して尖閣海域の奪還を計画していた。

 そして台湾には遂に誰の助けも来る事なく、翌朝3時に高雄も陥落した。

 残存住民や兵士は協力して山中でゲリラ戦を展開し善戦するも、第2軍としてやってきたゴブリン部隊に殲滅されてしまった。




 台湾の惨状はインターネットを通じて世界中に中継された。

 というのも彼等魔物らがこれを送りつけてきたからであった。

 「我々は異世界からやってきた。我々は『予知の水晶』を要求する。24時間以内に台湾島に届けなければ、人類を殲滅してでも奪取する」

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