表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

a dog

作者: 白雪紅羽

人も車っ気もないまばらな住宅街と新幹線の陸橋に挟まれた抜け道を、

いつものようにあたしは速度制限無視しまくりで、いつものROCKを

ガンガン鳴らしながら車を走らせていた。



すると突然、

すぐ目の前の右脇の細い道から黒い大きな犬が飛び出してきた。


「…こいつっ…自殺する気っ!?」


その犬は明らかにこの車を確認して走ってきていた。犬は挑戦的な

鋭い眼差しをあたしに向け「轢けるもんなら轢いてみなよ」とこの

運転席からも嘲るのがわかった。



ああ。

そう…


そんなに死にたいんならこのままアクセル全開でゴム玉みたいに

弾き飛ばして楽にしてやるよ。


瞬時にその選択肢を選んだあたしは、ためらうことなくアクセルを

踏み込んだ。


「仕留めてやる!」


なかば半笑いであたしは叫んでいた。



タイミングは完璧に思えた…






が、犬はグンと後ろ脚の筋肉を使い、まるでチーターから逃げ回る

ガゼルみたいに跳躍して車を擦り抜けた。


と、同時に、もうひとつの影がまた右側から倒れ込んできた。


すっかり犬に気を取られていたあたしは、その影を犬の代わりに

ゴム玉みたいに弾き飛ばしてしまった。




ボムッと、柔らかいような硬いような、なんとも言えない、それ

こそゴム毬を思いっきり蹴飛ばしたような音が辺りに響いた―――。




あたしの鈍い脳みそは影の正体を理解出来ていないかと思えた。

でも、あたしの眼球は、影の正体をしっかり映像として映して

いたみたいだ。


あたしの見た映像は、禿げてやせ細った爺さんが、恐怖に眼を

見開き、まるでマネキンみたいに不自然にポーズ止められたまま

弾き飛ばされていったものだ。


「嘘…」


訳がわからないまま、遅すぎた急ブレーキで斜めに停まった

車の中、あたしはあの黒い大きな犬のいるはずの方を振り返った。


その黒い犬は全力疾走後の身体全体の呼吸をしながら、だらしなく

耳元まで口を裂き、よだれを滴らせて舌を出していた。

そして首元には、誰かの所有物であることを証明する革の古びた

首輪と、そこからだらりと垂れ下がる途中でちぎれた紐―――――




その犬のだらしない口元とちぎれた紐が、さっきまで勢いづいて

いたあたしを嘲け笑っていた。




¨お前、人殺し。¨




止め忘れたROCKの大ボリュームで何も聞こえないはずなのに、

あたしの頭の中で、何度も何度もその言葉が響いていた―――――。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ご依頼ありがとうございます。数か月もお待たせして申し訳ございません。それでは評価のほうを。  ストーリーとしては面白い作品であったかと思われます。黒い犬、ということから何か不吉な連想もでき…
[一言] はじめまして、評価依頼を受けました、ノラネコです。 評価が遅れてしまい申し訳ありません。 早速、評価のほうですが、全体としては読みやすい文章でしたが、「すぐ目の前の右脇の細い道から黒い大きな…
[一言] 白雪先生、初めまして。僕はアルルという者です。秘密基地でお見かけして、呼ばれてないのにやって来ました。 文字数が少ないのに、良くあれだけ纏める事が出来ますね。凄いと思います。然し、いかんせん…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ