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魔王を倒したけど誰も幸せになれなかった話

思いつきで書いてるので整合性とか取れてない気もするけど、勇者がお姫様と別れる前のお話しのつもり

直径100mほどの範囲で木々がなぎ倒され、中心辺りはクレーターのようになっていた。


その中心部を見つめる集団が居た。

髪をツインテールにした生意気そうなお姫様と、その従者と思われる騎士たち。

そして数人の冒険者。


大爆発の余波も治り、風向きが変わった。


「帰ろう…、もう全て終わった…」

お姫様が呟く。


「あの、勇者は?…」

おずおずと従者が尋ねる。

「…勇者は、待っても、帰ってはこない」

お姫様が冷たい声で答える。


この爆発は勇者と魔王が激突したことによって生じた爆発で、勇者は行方不明になっていた。

口々に勇者の無事を信じ、捜索を求める声をお姫様が否定した。


「そもそも勇者とは魔王と同質の力をぶつける事で相殺するための爆弾みたいな物なんだ。魔王を倒してなお生き残るなどと言う事はあり得ないんだ…」

「そんな…」


「そうさ、私は知っていた。知っていたんだ」

お姫様が目を見開き譫言のように呟く。

「全て知った上で、1人の人間の人生を狂わせ、異世界に連れ込み、魔王と戦わせたんだ…」


「そんな、それじゃ私たちの旅は…、いつか殿下が勇者と共に笑顔で過ごす姿を夢見た日々は…」

「な、何を言っておる…」

従者たちが口々に世界平和だの魔王討伐だのはそのための下地でしかなかったのにと嘆きだす。


「し、知らない。そんな事…」

お姫様が後退りする。

そのまま振り向いて走り去ろうとするが思うように走れない。


いつの間にか周囲は闇に閉ざされ、一人きりになっていた。


「逃げるの?」


振り向くとそこには見知らぬ少女が立っていた。

いや、直接見た事はないがその少女を良く知っていた。

もっと小さい頃の自分の姿だ。


「違う、逃げるんじゃない。もう終わったんだ、だから…」

「彼と約束したのに…」

「だって、私は話したもの、全部。はじめに…」


それは勇者と直接出会う前。

ここではない世界。いや、世界の間で、少女は全てを話し、少年に助けを求めた。


 ー 良いよ、やってあげる。その代わり、一つだけ約束して欲しい ー


「そうだ、あの時…」

少年と約束した。

少年のたった一つの願い…


 ー 決して諦めないで ー


「信じてる、信じてるよ、決して諦めてなんかいない…」

「…」

「…うそだ。諦めた。彼は全てを投げ捨てて私の無茶な願いを叶えたのに…私は…」

膝から崩れ落ち、地面に両手をついて項垂れる。


「信じれば良い」

懐かしい声が聞こえる。

「頑張ったわね」

顔を上げるとそこには今は亡き先王、自分の父親と母親であった王妃の姿があった。


「良い? あなたの本当の力は勇者召喚ではありません。人々の、国民や家臣やそしてあなたの願いを実現する力。それを具体化したのが勇者だっただけなのです」

「願い?」

「もう役目は十分に果たしたでしょう? そろそろ自分の幸せを願っても良いんじゃないかしら」

「そんな、私は…」

「叶えるのは人々の願う心。神への祈り。あなたが遠慮する必要なんてないのよ…」


母親の影に手を引かれて立ち上がると強風が髪を止めていたリボンを吹き飛ばし長い髪がはためく。

両親ももう1人の自分の姿もなくなって、周囲の景色も元通りになっていた。


勇者の従者であった冒険者たちが、騎士たちが祈っていた。

遠くの街や都市、冒険の旅の途中で出会った人々が、小さな姫が気丈に振舞う姿を思い起こしてその幸せを願った。

そこここから光の粒が舞い上がり、一箇所へとまとまり眩い光の珠となりゆっくりと、ゆっくりと降りてくるのだった。




「それで、その光の珠が勇者様だったんですか?」

「そうらしいよ」

宿屋の従業員が休憩中に話していた。

「そんじゃ、姫様は勇者様と懇ろになってめでたしめでたし?」

「いや、けっきょく王都に帰った姫様はお城に軟禁、勇者様は勇者を兵器か何かとしか思っていない現国王やお偉いさん方を嫌って王都にも寄り付かないで旅を続けているらしいよ」

「世の中上手くいかないもんだねぇ」


「もしかしたら、私たちの祈りも少しは届いたのかねぇ」

「だと良いねぇ」

「いつか、あのお姫様が幸せになれる日もくるのかしら」

「そうだと良いね」


そう言って少しお祈りをするのだった。


なんかこう、世に言うなろう系とか書きたくてアレしてたんだけど、全然そう言う感じにならなくてビックリ(オイ

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