お姫様の勇者
凄くありがちなネタを、凄くありがちな感じに書きたかったのです
お屋敷の広い廊下を二人の少女が走っている
一人はお姫様。一人は薄汚れた服を着た少女
外からは戦いのような物々しい音や叫び声が響いてくる
ここはお姫様がなかば幽閉されている離宮
勇者召喚の能力を持つお姫様はその能力だけ必要とされ隔離されているのだ
少女は度々お屋敷に忍び込んでいた平民の娘で、いつしかお姫様と友達になっていた
何かにつまずいたお姫様が転んでしまう
駆け寄る少女
お姫様「私はもう走れません、あなただけでも逃げてください」
少女「ダメです、あなたは生きなければ…」
お姫様「私は、生きないと、いけないの?」
少女「そうです。あなたは王女様なのですから」
お姫様「王女は生きないといけない…」
周りの人間から言われ続けた言葉がぐるぐるまわる
「あなたは王女なのだから…」
「王女として…」
「あなたのその能力は…」
「王女らしく威厳のある態度で…」
少女「王女様は綺麗な服を着て、お城とかお屋敷に住んで、美味しいものを食べて…」
お姫様「…」
少女「そして、白馬に乗った王子様と恋をして幸せになるの」
お姫様「幸せに?」
少女「そうです。あなたは誰よりも幸せにならないといけないの」
お姫様「ダメなの?」
少女「私たちは、そんなあなたの姿を想像して、いつか自分もお姫様みたいになりたいと、決して叶わない夢を見て、それにすがって生きるんです」
お姫様「私が、夢?」
少女「そうです。あなたは私たちの希望なの」
お姫様「ごめんなさい、そんな事を言われても、私には窮地に駆けつけてくれる王子様は居ないの…」
少女「それなら、王子様が来てくれるまでは私が守ります」
お姫様を引きずるようにして突き当たりの大広間に逃げ込む二人
少女「あれ?ここはまずかったかな、隠れるところすらないわ」
お姫様「…いえ、ここで正解です。たぶん」
少女「え?」
お姫様「王子様ではないけれども、ここで勇者を呼ぶことができます」
そう言いつつ辛そうな顔をするお姫様
激しい振動と共に何かが壊れる音が響き渡る
建物に魔獣が侵入したのだ
謎の声「緊急事態を検知。勇者召喚システムを起動します」
お姫様を中心に光の魔法陣が描き出される
謎の声「召喚済みの勇者とそのパーティを検出しました。勇者を転送しますか?」
俯いたお姫様が絞り出すようにイエスと答えると、魔法陣の外周に4本の光の柱が建ち、その中から人影が現れる
少女「あの人が、勇者…」
勇者は二人に背を向けたまま黙って立っている
勇者のパーティ、双剣士、魔法使い、弓使いが困ったような顔をしている
広間の真ん中にへたり込み、俯いたままのお姫様が絞り出すように語りかける
「勇者よ、この世界は窮地に陥っています。その力で、この国を、世界を守ってはもらえませんか?…」
勇者「悪いが俺はこんな世界どうなろうと知ったことじゃない」
少女「な、なんで?そんな…」
食ってかかろうとする少女の腕を掴んで首を横に振るお姫様
目には涙が溜まっている
突然の轟音。ドアを壁ごとぶち抜いて巨大なトカゲのような魔獣が突入してくる
たくさんのツノの生えた頭が6つぐらいある化け物だ
しかし、勇者は一撃のもとに斬りふせる
その衝撃は後続の魔物をも吹き飛ばしてしまう
勇者「こんな国、どうなろうが知ったことじゃないが、あんたの事は守ってやるよ」
お姫様が顔を上げると炎上した魔物を背に勇者がこちらを向いてこう言うのだった
「俺はあんたの召喚に応じてやってきた勇者だからな」
キャラの名前考えるのが無理…