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3部 ロリの中身と賢者さん

 黒いクロエさんといつものクロエさん......


 顔の違いはほとんどなく、強いて言うなら黒いクロエさんには涙ボクロがあるくらい、やっぱり1番の違いは髪型と髪色だな。


 いつものクロエさんはふわふわの白髪(はくはつ)をボブにしてるけど、こっちのクロエさんはさらさらロング黒髪を後でとめている。


 色違いのクロエさんは自己紹介をしてくれた。


「私はこの塔に住んでる19歳のうら若き乙女で、クロエちゃんの双子のおねーさんなのです!」


 双子のおねーさん......ってことはクロエさんも19歳ということになるな、思った以上の若さだな。


「この人は、育成校時代から周囲に天才と呼ばれ、弱冠(じゃっかん)15から賢者として認められている人ですわ、(わたくし)の方がお嬢様の役に立ちますけれど」


 この世界にも学校はあるんだな、いずれどこかの学校に入学するのだろうか?それよりクロエさんの当たり強いな......


「普段使いの便利さはクロエちゃんの方が便利だけど、まぁそれまでよね」


「貴女の出番はほとんどありませんけどね」


「あれれ? そんなこと言っていいのかな? なんのためにここにきたのかな?」


 おっとりした顔から予想外の(あお)り性能の台詞がでて、クロエさんが完全に押されている......


 やっぱりおねーさんパワーすごいな!


「さ、それじゃ始めようか。部外者は外に出てねー」


「リィお嬢様、何かあったらすぐに呼んでくださいませ。それと、貴女に限ってそんなことは無いと信じますが、手を抜くことのないように」


 クロエさんは俺の手を取り上目遣いで語りかけてくる。俺が前世でこんなことされたら間違いなくオチる。


 それから、賢者さんに凄く冷たい視線をぶつける。俺が前世でこんなことされたら間違いなくオチる。(断じてドMでは無いと言っておく。)


「もちろんだとも、リリィちゃんは美少女だからね! 隅から隅まで調べ尽くすよー!」


「極力、お嬢様に触れないように」


 クロエさん顔が怖いです。凄い剣幕です。


「むり」


 即答。クロエさんますます怖いです。


 仕方ない......


「クロエ、あまり怖い顔したらダメですよ?」


『っふふ! やっぱりリィお嬢様は私のものですわね!』


 クロエさん分かりやすっ!


 あからさまに機嫌をよくしたクロエさんは鼻歌混じりに外にでていった。


 初対面の明らかに地位が上の人と2人きり......懐かしい場面だな。何を話すべきか、現役時代は交渉前にある程度相手の背景は調べてたけど今回はそうもいかないからな。


「そんなに力を入れなくて大丈夫さ」


「は、はい」


 態度に出したつもりはないが、やっぱり分かるものかな。


「やっぱり分かるものなのさ」


「......そうですか」


『ふふふ、驚いてるねー!』


 そりゃ驚くよ! 頭のなか読まれてる感じするもん。


 しかし、賢者さんのしてやったり顔、かわいいな。


「おっと、詳しいことはきちんと見てからかな」


 人間ドック的な緊張感だな......


「じゃあ始めるよ! まずは自己紹介から」


 マジで? 全然自己知らないんだけど......


「リリィです、9歳です。今日は魔車に乗ってここまで来ました」

「おっけー! しっかり者だね! じゃあ目をつぶってしんこきゅー」


 え、こんだけでいいの? 全然紹介になってないけど!


「いいんだよー、大丈夫大丈夫」


 俺ってそんなに顔に出やすいタイプだろうか?


 俺が目をつぶるとほっそりとした冷たい指がおでこに触れる。


「吸ってー、吐いてー」


 呼吸をしていくにつれ、体に変化が現れ始める。


 温かくなって、冷たくなって、ふわふわして、重くなる。


 きっと体自体がどうにかなった訳ではないだろうけど、実際に体の形ごと変わっているんじゃないかと思うほどの感覚がある。


『はいおわりー』


 4つのセットを3週したところで手が離れる。


『どんな感覚だったかな?』


「あったかくなって、冷たくなって、体がふわふわしたり、重くなったりしました」


『ふむふむ、特にどれをおぼえてる?』


「ふわふわしたのがすごかったです」


 飛ぶ感覚ってのは初体験だったし、なかなか忘れられる感覚でもなさそうだな。


『それじゃあ結果発表でーす』


「はい」


『まず初めにだけど、今はできるだけ安静にしといてね』


 どういうことだ? 病気でも見つかったか? この幼い体に?


「どこか悪いんですか?」


『悪いとこはないけど、魂ってとこかな』



 魂......? この人は俺の中身に気付いているのか?


『君の魂、体とは別だね? だけど......』


 気付いているなら話は早い。俺がこの世界に来てから1番の質問をぶつける。


「この体の前の持ち主はどうなったのですか?」


『まーまー、落ち着いておねーさんの話を聞きなよ、先に言っておくけどその点に関しては心配は要らないよ』


「心配は要らないとは......?」


『君は転生者というやつだ、それ自体はそこまでない話でもない。そして転生は元の持ち主のやる気がなければ絶対に起こらない』


「つまり......?」


『リリィ本人は望んで体を空けた、ということになるね』


 なんか複雑な気持ちだよ......なんでリリィは転生なんかしたんだろうか?


『なんでかは分からない、ただ体の状態から怨みとか辛さとかそう言った感情はないね! あるのは「飽き」かな、お嬢様扱いとかに飽きたんだろう』


「それだけで、転生って起こるものなのですか?」


 飽きただけで誰かが転生するのであれば、しょっちゅう中身がバラバラ......なんてことも起こり得るだろう。


『もちろん思いだけじゃ転生なんて起こらない。そこで結果発表その2といこう』


 さらに爆弾情報が飛んでくるんじゃあるまいな?


『リリィちゃんはとっても高い魔力適性と感受性があるね! 特に「風」だね! 正直私もちょっとうらやま!』


 ......それだけ?


「それがなんなんですか?」


『わかんない? 望みとそれを叶える力があれば、すぐに実行するさ。私たち人間はそういうものなんだよ』


 それで、俺が転生した? 訳がわからない、体を開け渡したなら魂はどうなってしまうんだ?


『だから心配いらないって。元リリィちゃんはきちんと生まれ変われてるよ』


「ここで1つ授業だ、転生についてのね」


「......教えてください」


「素直でよろしい、転生っていう術の目的は、生まれ変わって新しい人生を歩むことにある。誰かが元自分の体に入ってくるのはその次の段階だよ」


「誰かに無理やり転生させられることは?」


「ないね、断言しよう。そんなことが出来るなら、邪魔なやつの魂を飛ばせるわけだが、そんなもなのはやる価値がない、殺した方が早いからね。そして、魔法では他人の魂には直接干渉できない」


 それなら、俺がリリィを押し出して強制的に身体を奪った可能性......


「それもない、さっきも言ったけど、転生の目的は肉体の持ち主が他の器に魂を移すことだ。他人の魂を押し出すことはない、出来るとすればそれは魔法ではない領域だろうね」


 ならば、安心しても良いのだろうか?

 俺は他人の命を奪ったわけではないと、


「そう、安心してくれて構わない。君が気にしなくちゃならないのは別のことだ」


「何に気をつければいいのですか?」


「大怪我だね。魂が移ったばかりで意識を失えば、戻って来れない危険がある。クロエちゃんの手の届く範囲ならケガは大丈夫だろうけど、用心するに越したことはないよ」


「それと、精一杯今回の人生を生きること、これが最優先事項だよ、絶対にだ」


「わかりました」


 とは言ったが事故って死ぬ場合ってどう注意するんだろうか?


「それじゃあテンションあげて結果発表その3といこう!」


「わかりました」


「ノリが悪いからもう1回! 結果発表その3といこう!」


 賢者さんがジト目でこっちを見てくる......。


「お、おー!」


 及第点だね、と前置きしてから


「リリィちゃんは超能力をもってるねー! だけどおねーさんと違ってコントロールはできてないね!」


 一気にテンションあがってキター! 俺って超能力使えたのか! おねーさんもだけど!


「もしかして、さっき本当に心の中読まれてました?」


『読まれてました、しかもお話してました』


 あ、これ? この微妙にクリアに聞こえるやつ?


「そうだよー、まさかここまで無自覚だとは思ってなかったわー、途中で試してたの気づいてなかったんだねー」


「試してたんですか? 全然気付きませんでした」


『こんな感じだよー、脳に直接! ってやつよー』


 テレパシーみたいなもんか。これって名前とかあったら格好いいよな。


「これはねー、『心読(ハートリーダー)』っていうのさ!」


 また、読まれた! 


「でも私こう見えても努力家なのよー! 努力し過ぎて、脳死しかけた末にこのくらいまで来たからねー! スタートラインで他人の心が声で聞こえるなら上出来ー! おねーさんが能力の名前つけてあげるよー!」


 わー! サラッと凄い発言したー! しかも長ゼリフー!


「ノリのいい子は大歓迎よー! そうだねー、『心話(ハートスピーカー)』とかどうよー?」


 なんか、かっこいい名前着いたー! それにします!


「やっぱり女の子はこのくらい明るい方がいいよー!」



 ふう、疲れた。いっつもこのテンションなんだろうか?


『人が来た時はそうだよー、基本こんな所に人なんてこないけどねー!』


「そうだそうだ、『心話(ハートスピーカー)』だけど、名乗るのは特訓してちゃんと使えるようになってからねー」


「特訓って、脳死、するんですか......?」


「する......かも?」



 ドゴォン......!


 爆音と共に後ろからドアが吹っ飛んでくる......


貴女(あなた)、お嬢様になんて言いやがったんですか?」


「んー、事実だけよー!」


「どうして、『死』なんて言葉が出てくるんですか? おかしいでしょう?」


 まずい、クロエさんがバチバチしてる......


『ちょっとやりすぎちゃった! てへ!』


 ええ! やりすぎたってどうなるの?!


『リリィちゃんだけかなー? 止められるの』


 こうなったら!


「クロエ! 落ち着かないとダメです!」


 しかしクロエさんはこっちに全然取り合わない。こんなこと初めてだ、全然クロエさんの視界に入ってない!! いつの間にナイフだしたの?! ていうかナイフ常備??


『こうなったら武力行使しかないねー! リリィちゃん思い切り殴っちゃって!』


 殴るっていっても、この体じゃろくなダメージはいらないでしょ? やるしかないんですかね?


『やるしかないのです』


 やるしかないのか......


「クロエのばかー!」


 ポコっと腹パンを食らわす。


「え......?」


 クロエさんは簡単に倒れ込んだ、多分拳じゃなくて言葉が届いた段階で......


『あっはは! 思ったよりもクロエちゃんはリリィちゃんにぞっこんだったんだねー!! あれれ? でもなんか嬉しそう......』


『リィお嬢様に罵倒......ふふ、ふふふ、悪くないですわね! 時々やってもらいたいかも!』


 クロエさんは床でぴくぴくしてた......


「これ、どうしましょう......?」


「リリィちゃんが起こせば起こせると思う......たぶん」


 この賢者一番頼りたい時に役に立たない......


「私を頼ってるうちはまだだよ! お弟子!」


 いつから俺はお弟子になったんだよ!


「クロエ、起きて、クロエが居ないと話進まないから......」


『はっ......! 天使のお迎え?』

「お嬢様でしたか......」


 もしかしてだよ、もしかしてだけど、朝からのちょっと暴走気味なクロエさんのセリフって、もしかしたりする?


『もしかして? いやいや、十中八九心の声が漏れてたのをリリィちゃんの能力で拾ったんだろうねー』


 それなら、今日の朝からの行動は割と説明がつく......


「それで、なんの話ですか?」


 やっと起きたかと思ったら、切り替え速いな。


「そうそう、リリィちゃんの診断結果聞かせてあげるよ。魔力量はかなりのものがある。特に『風』の感性がズバ抜けてる感じだね。それと最重要事項だけど......」



 やっぱり中身が違うことだろうな......

 最悪の場合、家から追い出されることも有り得るかなぁ。だって元と全然違うもんな......きっと、


『最重要事項は残念だけどそこじゃない』

「リリィちゃんは私と同じ能力もってた!!」


 え、それ? そんなに大事?


『クロエちゃんの反応見てみなよ』


 あれ、灰になってるのが見える......


「お嬢様、ずっと気づいていたのですか......?」

「......はい」


 すっごい気まずいな、どうしよう......


「............」

『消えて無くなりたい......』


「クロエちゃん、今はリリィちゃんも未熟だから自分から覗くことは出来ないから安心しても大丈夫だよー!!」


「......じぶんからは?」


「そう、クロエちゃん()リリィちゃん()送り付けた感情とかは全部バレてるんだけどね!」


 みるみるうちにクロエさんが小さくなっていく、気がする......


「それと、ついでだけどリリィちゃん、きちんと中身変わってたよー!」


 え、ええ! それ言う?! 今言う?! サラッと?


「そうですか......よかったです」


 は? また、壊れた? 重大発表のはずなのにクロエさんは力なく返事をしてそのまま気絶した。



「なんで、そんな重大発表をサラッといっちゃうんですか?! これで家から追い出されたら......」


「そんときはここにおいでよ!」


 学生のお泊まり会のノリか!


「それに、多分追い出されたりはしないさ、その辺は後で2人で話し合ってもらうとして、クロエちゃんが起きるまで授業するよー!」


  絶対に中身入ってこない自信あるんだけど......


「これは中身入れないとダメなやつですよー。これから生きてくためにもねー!」


 読まれた......


「まずは魔法の基礎知識!! 興味ない?」


 ある、おおいにある!


 興味に負けて、そんなこんなで授業スタート!

今回も読んでくださってありがとうございました!


連載小説を書くこと、特に一人称の地の文って難しいですね。自分の文章力のなさにビックリです。ダメ出しやアドバイスは常に募集してますので、ぜひともよろしくお願いします!


次話も楽しみにして頂けるとありがたいです!

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