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15部 お嬢様は面接を受ける

「本っ当にそろそろ離してくれても、バチは当たらないにゃ.........」


 しっぽを掴まれて身動き取れない会長さんは更に激しく解放を要求してくるようになった。ちなみにしっぽを握る力加減でいろいろ出来ることが変わった。


「ダメです、このまま連れていきます!」


「もしかして、部屋の中まで?」


「もちろんです」


 途端に会長さんのじたばた具合が強くなる。


「せめて! 目の前までにして欲しいにゃ!」


「フリですか? 押すなよ押すなよみたいな」


「よくわかんにゃいけど、そんなわけないにゃ!」


 そんなことをやってる間に面接会場と思われるドアの前までやってきた。そこまで豪華でもない普通の木製のドアだ。


「ここであっていますよね?」


「あってるにゃ......」


 会長さんからの肯定を受けるが、どうにも違和感しかない。自分たちよりも先に行った人達はどこへ?


「会場って一つですよね?」


「あー......どうせいつものことにゃ、入ればわかるにゃ......」


「じゅ、順番どうしましょうか?」


 人がいないことには不安な面も多いが、入れば分かるらしいので入るしかない。


 遠慮気味の質問をしたのは、火の魔法を使う赤髪のお姉さん、もといエンさんだ。同時にごくりと全員の喉が鳴る。


「緊張しますね......」


「あー、そろそろ離してくれたり?」


「しないです」


 会長さんがここまで嫌がってる部屋とか入りたくなくなってきたんだけど......


「残り全員いるかー?」


 部屋の中から声が届いくと会長さんが更にビクゥっとかたまる。渋めの大人の男って感じの声だな。


「は、はい!」


「よーし、はいれ」


 全員で顔を見合わせる。否、ドアの一番近くにいた赤髪のお兄さんことゴウさんに視線があつまる。


「お、俺か......」


「ゴウが行くなら私も......」


 これで一番目と二番目が決まる。残るは最後の争いだが、


「お先に行かせてもらいますよ、あれ? もしかして最後だと謎の緊張をしてしまう人でしたか?」


 こいつ、半笑いで......あからさまに煽ってきている。


 いいだろう! 中身は大人だからな、最後でも別に真ん中より緊張とか、ししししないからな!


「いいですよ、別に」


 負けじと嘲笑で返す。


『なにが別にだよ! 馬鹿にしやがって......』


 おーおー、悔しがってるが反論はできないだろう。なぜかって? それは相手も最後尾にはなりたくないからだ。


 先頭と最後尾の謎の緊張感は避けられるものなら避けたいからな。


「失礼します」


「どうぞー」


 ゴウさんがノックをすると中から返事が返ってくる。


 面接が前世とほぼ変わらないことにも驚きだが、いかにも不良っぽい見た目なのに常識がちゃんとあるゴウさんにも驚いた。


 順番に挨拶をして部屋の中に入る。身動き取れない会長さんは死体のように固まってしまっている。


「失礼します」


 中にいたのは、白髪と立派な白いひげを蓄えた五十くらいのおっさん。


 お父様をクールダンディとするならこの人は熱血ダンディといった見た目だ。


「ま、楽に座ってくれや」


 豪快な顔つきから放たれる屈託のない笑み。なかなかにイカす。


「は、はい」


 長椅子と呼ぶには少々豪華なソファに全員で腰掛ける。会長さんからは手を離したが、さすがに中に入ってしまえば逃げ出さないようだ。


「右からゴウ、エン、レパッセ、クラヴェリとポンコツであってるな?」


 女子らしくそこそこ小柄な会長さんがさらに小さくなる。この体の座高といい勝負ができるほどに......


「俺も全部を見てた訳じゃないが、よかったぞお前ら。そこでだ、俺からはそれぞれひとつずつ質問させてもらう。」


「それより棟梁......自己紹介が先じゃあ?」


「そうか? 俺は肩書きとしちゃあ理事長になるな、棟梁でも頭領でも好きに呼んでくれや。そっちからの質問は受かってからな」


 質問はひとつずつか、確かに一人ひとつの質問で合否が決まるなら他の人がいないっていうのも納得できるか?


「ゴウ、お前からだ。準備はいいか?」


「はい!」


『なんだコイツ......ちゃんと返事する系のヤツか』


 あ、やっぱりそう思うよね!


「お前はこの中だとさっきの評価は一番下だ。なんで、勝てない相手に挑み続けた?」


「俺にはそれしかできないから......」


「そうか、ひとつだけ俺から言えるのは、それしかできないんじゃない、できなかっただけだ」


 まさか、これだけで合否が決まるのか......! ゴウさんの表情はそこまでよくない。


「次はエン。ま、そこそこだな。最後の魔法は上出来だった」


「あ、ありがとうございます......」


 お! なかなか好感触じゃないか!


「だが、そこまでは力を抜いていたのか?」


「そんなことはっ......ただ、最後の魔法の前にクラヴェリさんから作戦を提示していただいたので......」


「そこに全力をぶつけたわけだな」


「......はい」


 まさかの上げて落とす作戦......二人連続であまり表情はよくない。


「レパッセ、お前は......なんかパッとしないヤツだな」


「そう、ですか......」


『コイツ、なんか可哀想になってきたぞ......ウザいけど不合格になったら我も焼けないぞ』


 ジークの言うことはごもっともだ。散々ウザいと思ったが、目の前で落とされるのは嬉しいことじゃない。


「最後、なんで他人を助けた?」


「協力者だったので、蹴落として行っては夢見も悪いかと」


「ふーん、協力者ねぇ......」

『素直にならないタイプか、友達少なそうだな』


 結構この人関係ないこと考えてない? 大丈夫かな?


「クラヴェリ......公爵家のだな?」


「はい」


 やはりどうしてもこの名前は着いて回るか。それが不利にならなきゃいいけど。


「お前はほぼ合格でいいと思ってるんだが、受かったら何がしたい? ここでどうしたい?」


「ここで......」


 聞き方がどうかと思うけど、一番面接らしい質問きたな!


「武を極めるもよし、知を磨くもよし、芸を身につけるもよしだ」


「そうですね、曖昧かも知れませんが成長したいです」


「それで、お前はどう、いやどのような成長をしたいんだ?」


「家族に認めて貰えるような、きちんとリリィ・クラヴェリとして名乗れるような、そんな心身の気高さを持って成長したいです」


 したい、というかしなくちゃだからな。クロエさんにもお父様にもそうやって宣言してしまったし。


 分かった、棟梁は短くそれだけ答えるとこっちまでやって来て、会長さんの首を掴んで持ち上げ、立たせた。


 途中めっちゃ猫みたいで面白かった。


「お前から見て、落としたいやつはいるか?」


「私からすれば、受験生全員合格でいいと思ってます。はい」


 まさに借りてきた猫状態。微塵もブレない脅威の気をつけを披露している。


「それでは、合格発表だ」


 発表までここでするのか!?


「全員合格だ。今回の受験の合格者はこの四名とする。書類は任せたぞ会長」


「えぇっ!」


 同時に驚きの声があがる。俺に対する発言とかフラグにしかみえなかったのに!


「よかった、よかったです......」


「そうだな! これで二人とも合格か!」


 赤髪の姉弟はそろって歓声を上げる。


「ふん、受かりましたか......」


「そうですね」


 受かってよかったけど......やっぱりウザイ、治んないかなぁこれ。


「まぁ、合格はスタートラインですから、それだけで舞い上がってもらっては困りますけどね」


「素直にこれからよろしくと言えば良いのに......」


「せいぜい落ちこぼれないように頑張ってください」


 四者四様の喜びの脇で、会長さんがげんなりしていた。


「棟梁......流石に書類丸投げはまずいんじゃにゃいとか、思わにゃい?」


「そうか、お前は合格者の書類作成よりも自分の勝手な行動の反省文が書きたいんだな」


「そっ、そんなことはないにゃ、誠心誠意、全力で早急に仕上げるにゃー......」

『はぁー......後でルディちゃんにやらせるにゃ』

今回も読んでいただきありがとうございました! 次回も楽しみにしていただけるとありがたいです!


入学試験も終わり次回挿話(お父さん目線)です!

あ、見なくても話は分かります。

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