1部 レッツ、状況確認!!
――――思い出した。
「俺は、多分死んだんだ......」
そして、生まれ変わったのか?
死因を思い出したはいいが、これからどうする!?
落ち着け......! 社会人の基本は落ち着いて「ほうれんそう」だろ!?
「いや、誰に『ほうれんそう』できるんですかねぇ!?」
渾身のツッコミにも、返ってくるのは何も無かった。
ふぅ...... 落ち着いた(虚しいだけだったけどね......)
ここは、若い子たちが言っていた『異世界』と言うやつなのだろうか。
「とりあえず状況の把握だ......」
それにしてもでかいベッドだな――――
体の大きさを把握する前にベッドから降りようとして足が空をかいた、
「んんーー!!」
――――顎を強打。
声にならない小さくて可愛い悲鳴があがる。
ん? 「可愛い」ってなんだ、おっさんが可愛いのはご当地キャラかぬいぐるみくらいなもんだろ!!
「まさか、俺はご当地キャラになったのか......?」
ありえない、疑問を否定するためにも、まずは体の確認をしないとな
――――身体は......無事か。しかし目線が異様に低い......手ぇちっさ!! 息子は......ない。そんなまさか、一生お前だけを愛すると誓った俺の息子はどこにいった?!
ま、まさか............!! 俺はおっさんではなく
「お、おお、おん......なのこに......?」
『さてと、かわいいかわいいリィお嬢様を起こしに行きましょうかね』
不意にでかい独り言(?)が聴こえた。
「ど、どうする? なんて話せばいいんだ......そもそも言葉は通じるのか?」
ドアの向こうから足音がする......多分1人。
「リィお嬢様ー! おっはようございますー」
勢いよくドアを開けたのは、白髪の美少女メイドさんだった。
「あら、リィお嬢様、珍しく起きていらしたんですね」
よし、名前はわかった! 俺は『リィ』と言うらしい! しかもお嬢様ときた、さしずめそこそこの貴族ってとこか?
「そ、そうよ、おはよう」
日本語! 通じろ、通じてくれ、ここで通じないと、詰みだ!!
『............?』
終わった......完全にはてなマーク出てる......
「あ、リィお嬢様ったら! さてはまた遅くまで『冒険譚』をお読みになっていたんですか? そんな言葉使って!」
あぶねぇ!! 言葉通じてたー!! ほんとに詰んだと思った!
「いつもなら、きちんと『おはようございます』と言って下さるのに、今日はどうしたのですか?」
「ごめんなさい、昨晩つい読みいってしまって......はは、はは......」
「もう、旦那様の前でそんな言葉を使ってしまうとおこれらますわよ」
そう言って、白髪メイドさんはウィンクをした。
その瞬間、緊張とか不安とか、全部吹き飛んだ!
うん、やっぱり生メイドって凄いわ! 成田に連れていかれた「メイドカフェ」とはわけが違うわ!
『――――ったですわ』
メイドさんなにか言ったか??
『リィお嬢様ってば、可愛すぎますわ!! いっその事、あの言葉遣いに教育してしまいましょうか......いえ、その先まで!!』
「なにか、いいましたか?」
メイドさんがとんでもないことを口走った気がして、つい問いただしてしまう。
「いえ? なにも?」
嘘つけよ! え、なに? まさか「ついうっかり」であの台詞喋ったの?
え、顔がマジなんですけど?
「それよりも、朝ごはんの準備が整っていますわ。」
食堂へ行きましょう、と、メイドさんは俺の手を取って部屋を出ようとするので、俺もそれに従ってついて行く。
『はぁはぁ......リィお嬢様の手ふにふにであったかい、ふふふ......後で旦那様に自慢しましょう』
............なんて?
やっぱりメイドさんとんでもないこと口走ってない?
「あの、やっぱりなにか言いました......?」
「どうしたんですの? 先程から少し様子が変ですわよ? 具合でも悪いのですか?」
なんで.........? なんでそうなるんだ??
様子が変なのはお前だよ?! さっきから凄い恥ずかしくなるんですけど?!
またしても、顔が真面目に俺のことを心配してるんだけど......
そうこうしてるうちに大きな扉の前にやってきた
「では、私は朝食の配膳をいたしますので、お嬢様は席にお座りになってお待ちください」
ここが、食堂ということだろうか
扉を両手で押すと見た目よりかは簡単にドアが空いた。
大きなテーブルと、沢山の椅子、本当にドラマでよく見るヤツだ。それよりも俺はどこに座ればいいんだろうか?
「おはよう、リリィ、もうすぐ朝ごはんだよ」
あれ? 俺の本名「リリィ」??
席の1番奥、上座の位置から大人の男の声がした。父親だよな? よく見るとその最寄りの席が少し高くなっていることに気がついた。
「おはようございます、お父様」
「うん、おはよう」
......セーフ
近くで見るとなかなかに渋いイケメンだなぁ。
彫りの深い顔に凛々しい眉毛、下だけ縁のある眼鏡がよくきまっている。これでお金もあるだろうからさぞかしモテただろうな。うらやまし。
「旦那様ー!! 朝食配膳しますわー!」
さっきから思ってたけど、このメイドさんテンション高くない?? 配膳とかいちいち宣言しなくても......
......もしかして、俺と一緒で、無理やりテンション上げないとやってけない人か! メイドさんも大変だなぁ
勝手に同情してると、食器が飛んできた。
続いてパン、サラダ、スープも飛んでくる。
それらはくるくると回り、綺麗に配膳された。
「これはなんなのですか?」
目の前で起こった現象が不可解すぎる......
「今日は、キノコでスープをお作りさせて頂きました」
「あ、サラダはいつも通りのキャベツでございますわ」
違う、俺が聞きたいのは料理名じゃない......
「あの、そうではなくて......今度この、配膳方法のコツをお聞きしたいなと......」
もしかして、この配膳方法って常識なのか?
「リィお嬢様は魔法にも興味がおありなのですね」
「魔法」って言った? やっぱりここ異世界なの? 若い子たちが社員旅行で1度は行ってみたいところランキングに上げてたけど......
「クロエ、もうリリィも9歳だし、そろそろ魔法適正診断に連れていってやってくれないか?」
まてまて、頭がこんがらがる......
「了承しました。では、リィお嬢様は家事が終わるまでお部屋でお待ちください。すぐにお伺いしますので」
『お出かけ......久しぶりに!! リィお嬢様と......』
......これは病気なのか? もう注意するのも面倒になってきたな
メイド(多分クロエ)さんは浮かせた食器と一緒に食堂を後にした。
しまった!! 俺はこの家の自分の部屋と食堂の位置しかわからん!! どうする?
そうだ......
「クロエさん! 待ってください!」
クロエさんを呼び止めることに成功!! この短時間で食器は片付けてしまったようだ。 これも魔法の力なのかな?
「お嬢様......急に「さん」付けなんてどうしましたの?」
しまった! 呼び捨てにしてたのか......
「いえ、その、なにかお手伝い出来ることはありませんか? お掃除とか......」
家の構造が分からないから細かく教えてとは言えず、お手伝いがてらトイレやお風呂、その他の場所を確認することにした。
『なんて、なんてかわいいの!? お手伝い!? あぁ、リィお嬢様が今日も天使......』
「それでしたら、一緒にお掃除と備品の確認をしましょう」
「......はい!」
「どうかしましたの? なにか言いたげなご様子ですけれど」
お前のせいだよ。と言いたい気持ちをぐっと抑えて、少し遊んでみることにした。
「いいえ、ただ......」
「ただ?」
「クロエのお手伝いが出来るのがとっても嬉しいので!」
「そうですか。それはなによりですわ」
『......』
あれ? 静かだな? やっと落ち着いたか。
「クロエ! 早速、行きましょう!」
「そうですか。それはなによりですわ」
あれ?
「クロエ? 大丈夫ですか?」
「そうですか。それはなによりですわ」
壊れた......? どうしよう!! このままじゃ!!
「クロエ?! しっかりしてください!」
「はっ......! 申し訳ありませんお嬢様」
良かった、治った。気を取り直して探索開始と行こうか!
こうして、俺の異世界(?)でのセカンドライフが幕を上げた!!
現在のnewプロフィール
俺
名前:リリィ?
年齢:9
メイドさん
名前:クロエ
年齢:未知(20くらいかな?)
魔法:使用可
父親
名前:未知
年齢:未知(40くらいかな?)
魔法:未知