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12部  お嬢様は切れる

 モフモフの猫耳と長い尻尾を揺らす会長さん。


「どうしたのかにゃ? もうお終いかにゃ?」


 おかしいだろこの人......まだ入学前の卵とはいえ一気呵成の進行を跳ね返し続けて十分以上だぞ!


「やっぱり、難易度おかしくなってるじゃないですか......」


「手応え? 歯ごたえ? にゃんか足んないにゃー?」


「今回は豊作だと思いますが?」


 時間経過で焦りと疲労が見えるのはこっちだけ、どうにか打開策がないか?


「あ、生徒会に入ってくれるのを約束してくれるにゃら手加減しちゃおっかにゃー?」


 そんな裏口的なのアリなのか? 毎年恒例とかだったらちょっと問題行動ですよ?!


「「「はいります!」」」


 当然のことだが、数人が即座に賛同する。しかし会長さんの対応は意外なもので、


「やっぱりそんにゃにゃん弱者いらにゃいにゃ!」


「「「えぇ......」」」


 バリバリっという轟音とともに、掌から生じた青白い稲妻が枝分かれして賛同者だけを正確に撃ち抜き、被害者は揃って困惑の声を上げて倒れ込む。


「思考が硬いにゃー? 工夫もないにゃー? 頭悪いにゃー?」


「うっせぇっ! 強行突破しかねぇだろが!」


 あらま、赤髪のお兄さん最後の言葉に反応しちゃったよ! 魔力を込め瞬間的な加速、まさかこの怒りで覚醒しちゃうパターン?


「クソがっ!」


 しかし、淡い期待を抱えた特攻も雷撃によりまたもや撃ち砕かれる。


 あの攻撃の避け方も防ぎ方もわからん。だったら、体が動かせないなら、頭を回せ! なにかないのか?


「バチバチくんじゃねぇか!」


「体は強いにゃー! でも、やっぱり頭悪いにゃ?」


「うるせぇっ!」


 言うとほぼ同時に三度目の雷撃。しかし今度は罵倒とも取れる言葉を否定するようにお兄さんが横に振った手にほとんどが寄せられる。


「手ぇだけ、バチバチきやが......った」


「先制攻撃だにゃ」


 この雷撃にはコントロールがきく。これはほぼ間違いない、問題なのは『ある程度』か『完全に』か。


 確定させるにはまだ根拠が足りない、よく見ろ、よく聞け、よく学べ。


にゃん人かはこっちのジリ貧を待ってるみたいだけど、生憎この程度の魔法じゃ終わりはみえないにゃ」


 体術に持ち込もうにも近寄れず、こっちから魔法を撃っても通用しない。今の発言からこの雷が魔法なのは分かったが、分かった上でも何も思いつかねぇ。




 ☆


 現在およそ十五分経過、お兄さんが突っ込んでは撃たれの繰り返し。


 ほぼ全員から常に援護射撃は入るものの、ことごとくルディさんに相殺される。あの人全部の魔法に対して有利属性でいなしてないか?


 その間に他の数人が突破を測ってもルディさんに打たれるか雷撃の餌食になるかの二択。


「嫌いじゃにゃいけど、ほんっとうに頭悪いにゃー?」


「っるせーよ......ゴチャゴチャしてんのは苦手、なんだ、よ」


「ますます嫌いじゃにゃい、ご褒美にこの一撃で完全に沈めてあげるにゃ!」


「くた、ばれッ!」


 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)の会長さん、その雷撃はさっきまでより内包する魔力量が多く、発言に重みを持たせる。


 相対するは啖呵すら一息で切れない赤髪のお兄さん、その拳は弧を描き、フックと呼ばれるパンチをかます。


 曲がった軌道、キレの落ちた威力、それ故に背後からくる火球を直前まで会長さんに察知させなかった。


『にゃっ?!』


 赤髪お姉さんが放ったらしい、高威力の火球は雷撃を相殺し、拳は綺麗な鼻っ面に叩き込まれる――






 ――直前。


 魔法の衝突による小さな爆発の広がりがスローにみえるほどの高速で、放たれた拳を掻い潜り、腕を取ると、赤髪お兄さんを地面に叩きつけた。


「ぐ、はッっっッ!」


 前世で言う、一本背負い。


 前世と唯一違うのは相手への配慮は全くないこと、渡り廊下の地面がヒビ割れ、その衝撃をものがたっている。


「そんな......」


「な、んだ、そりゃ......」


「まだ喋れるのかにゃ? そっちの子も魔力量はいいんだけどにゃー」


 あの魔法は避雷針があれば攻略出来るはず、今の攻防で避雷針の材料になりそうなものは二つ。


 ひとつは前世と同じ避雷針、大層な仕掛けは作れないから金属を投げるだけでもいいと思うが......


 効果はほぼないだろうな、複数人同時に雷撃を浴びせられるってことは持ち運べる金属くらいじゃおそらく効かない。




「やめだやめ、こんなのやってられっかよ」


 後方から魔法を撃っていた一人が口を開いた。同じ年齢くらいの4、5人も攻撃をやめ、聞こえよがしにこんなことを呟いた。


「公爵家の令嬢っつーからちょっとは期待したのによ」


「だよな、突っ立ってるだけじゃん」


「一回目通ったのも免除とかコネで通過確定とかそんなとこだろ」


「ハッ無理無理、俺らにゃこんなの受かんねーよ、どーせ受かるのはそこの可愛らしい令嬢様だけだろーぜ」


「ここまで役立たずなのによくこの年で受験しようと思ったよな」




 その他文句をしばらく言った後身を翻して帰っていった。クロエさんが言ってたのはこういうことか......


「お困りですか? もしかしてあの程度でお困りなんですか?」


「いえ、まったく?」


 急に声を掛けて来たのは半分半袖、半分短パンの名乗りもしないウザ茶髪、反発して声を上げてしまう。


「そうですか、ではさっさとどうにかしてくださいよ」


「それができたら苦労してないんです」


「ほう? 彼らの言葉を肯定するということでよろしいですか? よろしいですか?」


 コイツ......「あれ? 意外にいいやつ?」と思った時間返しやがれ。


「どうしたのかにゃ? もう終わりにゃ?」


 仰向けに倒れているお兄さんをつんつんしながら会長さんがつまらなそうに口を尖らせている。


「門番みたいにゃ感じだから来ない人に攻撃はしにゃいけど、時間無くなるにゃ、大丈夫かにゃ?」


 そうは言われても、無策で突っ込んで突破できるほど甘くないことは嫌という程見せつけられてる。


「あの、茶髪さん」


「レパッセです、名前がきちんとあるんですよ」


 あぁん? 名乗りもせずに喋りかけてきてたヤツがよくそんなこと言えるなぁ? 


 だが中身は大人だからなぁ、スルーしといてやるよ。


「レパッセさん、策と言っても仮説の域のものがあるんですけれど」


「そうですか、手伝えと?」


「はい」


 あぁぁぁ! ウザい、今はそんなことに構ってる場合じゃないけど! ウザすぎるぅぅ!


「でしたらそのように言って下さらないと」


『てんめぇ焼かれたいのがぁぁ?! あぁん?! リリィが策があるって言ってんだろうが!! 素直に聞かんかいゴラァァ! ぞ!』


 ジークさん! 気持ちはわかるけど! そんな申し訳程度に語尾に「ぞ」ってつけても! 今まで無理やりやってた感でるじゃん!


「手伝ってもらってもよろしいですか?」


「いいでしょう、その策とは?」


 外せば終わり、効果があったとしても突破できるかは別問題。犠牲は最小限に、合格者は最大限にしなきゃならない。


 それはそうと本気で後で焼かせよう。それだけ決意して作戦を始めよう!


「作戦は――――」

 今回も読んでいただきありがとうございました! 次回も楽しみにしていただけるとありがたいです!


 赤髪お兄、姉さんを多用していますが、自己紹介してないため名前が判明していないからです。血縁関係はございません。

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