11部 お嬢様はイヤになる
男女別に案内された部屋にはシャワールームと着替え用の個室まで用意されている。うっかり男子の方について行きそうになったことは墓場まで持って行こう。
「クラヴェリさん凄かったですね」
シャワーも浴びて休憩してたところに赤髪お姉さんが話しかけてきた。スケバンの頭張ってる様な見た目だけど綺麗な高い声だ。
「いえいえ、そんなことないですよ。それよりもお召し物を汚してしまって......」
「お召し物だなんてそんな、私のはただのボロ切れですから」
赤髪お姉さんは俯いてしまった。
今まで顔に気を取られて気づかなかったがそんなにいい服ではないようだ。しかし言葉通りかと言われるとそうではなく、きちんとした一着の洋服だ。
「ごめんなさい、なんか暗くしていてしまいました。それでは」
『やっぱり私なんかとは身分が違うのに関わりを持とうなんて図々しすぎますよね......』
短い断りだけ残して部屋から出て行ってしまった。茶髪はともかく友だちくらいでいいのならすぐになるから後で挨拶に行かなきゃな。
『リリィまだぞ? 我暇ぞ』
外で待っているジークが呼んでいるな。暇になるくらいなら一緒に入ってくればよかったのに。
と言っても女子の着替えを覗くみたいになるのか......正直、俺もそこは個室だったことに助けられたけど。
クロエさんとの混浴もほぼアウトなのに、女子学生の着替えを堂々と見るとか完全にアウトだ。
☆
部屋から出て、ジークと合流するとあの茶髪が話しかけてきた。
「キミはなんてことをしてくれる! 泥汚れなら魔法でどうにでもなるものも焼き切れたら戻しようがないだろう?!」
『コイツの服、ちょっと可哀想に思えてきたぞ』
茶髪は身体こそ綺麗になって顔も汚れていないが右の裾が膝下までに、右の袖は肘が見えている状態になっている。
「そう思うならやらなければよかったのでは?」
「年下の分際で指図だと? ふざけるのもたいがいにしろよ!」
ジークに言ったはずの呟きを聞きつけてなんかキレてる。こういう自意識過剰なヤツって迷惑だよなぁ。
『コイツやっぱり燃やして正解だったぞ、しかもコイツ見てる分にはちょっと面白いぞ』
おい燃やした張本人。君のせいでこんなに面倒くさいことになったのに、どう責任とってくれるのかね。
「お互い受かるといいですね、では失礼します」
「おい! 話は終わって......ひっ!」
会話を終わらせようとしない茶髪にジークがちろっと火で脅した。その隙に退散する。
赤髪お姉さんと自己紹介でもと思ったが、赤髪お兄さんと二人で話しているから近づいて邪魔してしまうのもいけないな。
「そろそろいいですかー? 準備がよければ集合してくださいねー!」
ルディさんがみんなに呼びかけている、そういえばまだ試験の途中だった。泥を落とすためにシャワーまで浴びたからすっかりリラックスしていたな。
「ここを通過できれば最後は面接だけですので、魔法や体術を使った試験はここで最後です」
さっきのは本当にただただ魔力の測定をしただけだからまだ五十人ほどの受験者が残っている。しかし試験の最初のようなペースで落ちるなら合格者は三十人出ないくらいか。
「ちなみに面接会場はこの先すぐにあります。なので文字通りここを通過できれば、面接まで行けますよ!」
「制限時間は三十分、お相手は会長、副会長とその他諸々で努めさせていただきますにゃ!」
にゃ!? 突然現れた猫耳さんは会長のようでよく見れば猫耳店主さんとは若干似ているだけな気がする。朝見たのはこの人だったのか!
「準備はいいかにゃー?」
「ちょっとちょっと! 何してるんですか会長!」
「ええー、だってルディちゃんだけ若い子たちみるとかちょっと信じらんにゃーい。私も将来を担う若人たちを見にゃきゃだしー?」
猫耳さんまさかの飛び入りなのかよ......ルディさん超困ってる。
「難易度がおかしくなるでしょ! あとちゃん付けやめてください!」
「難易度とか難しいことはわかんにゃいけど、気持ちと根性があればいけるにゃ!」
にゃははと笑う猫耳会長さん。
どうしてこの世界はこんなにも美人さんが多いんだ!
間違えた! どうしてこの世界はクロシロさん達とかジークに茶髪にいろいろキャラが濃いんだ!
今回も読んでいただきありがとうございました! 次回も楽しみにしていただけるとありがたいです!
『どうしてこの世界はこんなにも美人さんが多いんだ!』←リリィちゃんも間違いなく将来は美人さんです!




