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10部 お嬢様は疑う

 ルディさんに連れられてやってきたのは中庭と思われる場所だ。中心には水晶とも金剛石ともつかない透明な縦長の結晶がぷかぷかと浮かんでいる。


「つぎは魔力の簡易測定です。あの結晶に触れてください」


「なんでそんなモンがこんなド真ん中にあんだよ」


 ルディさんに喧嘩腰で突っ込んだのは赤髪長身で目つきの悪いお兄さんだ。少し離れたところに同じような髪色のお姉さんもいるから兄妹か双子だろうか?


「詳しくは僕もわかりませんが、保健室の身長計と同じ扱いをするようになっていましたね」


 保健室の身長計て......毎時間のように測りに行くやつか、そんな短時間で身長変わるわけもないのに。


「ようは純真な夢をブチ壊す器具か......」


 そんな?! これそんなに落ち込む要素だった?!


「順番は誰でもいいけどとりあえず触ってみようか」


「......はい」


 そんなに?! この人絶対教師とかボコボコにするタイプの見た目じゃん! 返事なんてもっての他でしょ!? もしかしてまだ本性を潜めてる?


「これは......」


 完全に燃え尽きた赤髪お兄さんがぺたんと手を付けた途端、三方向にそれぞれ岩の柱、水の弾丸、風の刃が突き出る。

 このお兄さん『火』の属性じゃないの?! どう見てもおかしいじゃんよ!?


「なかなか強い魔力を持っていますね。では次の方」


「......ンだよ、そんだけか」


 確かに素人目にはかなり凄いように見えたんだけどルディさんの反応はイマイチだ。赤髪お兄さんは吐き捨てるようにつぶやいて下がった、不良度もイマイチ。


「ハッ、次は僕が行こうかな」


 茶髪がなんか笑った。態度が鼻に着くのかジークは頭の上で低く唸っている。


『消し炭にしていいぞ?』


「流石にダメです!」


『リリィに害を与えるまでは見逃しといてやるぞ』


 ジークさんそれだと一回は害を受ける事になるんですが......そこんとこどうなんですかね?


「どうだ、見たか」


 なんかこっち振り返ったぁぁ......明らかにライバル視か敵対視されてるな、参ったなぁどうしたもんか。


「どうしましょうか、なにかいい案ないですか?」


『やっぱりちょっと焼くぞ?』


「それはダメです!」


 どうしてジークはそこまで茶髪君を焼きたがるのだろうか? そういえばまだ名乗られてないな。そんな奴にライバル視されてるのはどうなんだ?

 ジークとのちょっとした会話の間にも手際よく測定は進み、残るは赤髪お姉さんと自分だけになった。


「「おおっ!」」


 赤髪お姉さんが結晶に触れると火柱とともに数名から歓声が上がる。キャンプファイヤーの三倍くらいの高さで迫力満点だ!


『どうしようどうしよう、目立っちゃうぅ......』


 火柱を作り出した本人は顔を赤らめてそそくさと戻っていく、意外に照れ屋さんのようだ。


「クラヴェリさんで最後ですね、どうぞー」


「はい!」


 俺はシロエさんに観てもらってるからそんなに気負う必要ないんだけどな。


『あー、もう触らずともわかるわー』


 おっさんの声! どこからだ?


『今回は豊作なのはいいけど疲れたわー』


 もしかして......この結晶からか?


「あ、あの、意識があるのですか?」


『ん、わかるん? そうそう備品含めてこの学校だったりするんだわー』


「生き物以外の心を読み取るなんて......」


『珍しい例だけどな、莫大な感情とおっそろしい量の魔力が注がれた結果こうなった』


 魔法を扱う学校故の特殊な状態か。声だけじゃなくて考えもどこかおっさんぽいな。


「これからよろしくお願いします」


『お、もう受かった気でおるんか、いいよいいよー! どうせ受かるだろうしよろしくな』


「リリィ・クラヴェリです」


 ひそひそと周囲の視線が痛いけど仕方ない、挨拶は大事だし。


『おうおう、よろしくな! 生まれて一桁だけど色んなモン見てきたから舐めんといてくれよ、学校だからガッコさんとでも読んでくれや』


「はい、よろしくお願いします。触ってもよろしいですか?」


 まさかの生まれて一桁。しかも名前の安直感が半端じゃない。


『いいけど上のドラゴン君は避けてくれ、とてもじゃないがぶっ壊れてしまうわ』


「ジークちょっと降りててください」


『じゃあちょっと......』


「焼いちゃダメですよ?」


『うぐぅ......』


 なんですぐに焼きに行こうとするんだよ! ここにいる半数近くを焼くことくらいはできそうだけどやめてくれ!


「では!」


 結晶は思ったよりもひんやりしていて抱いて寝たいくらいだ、特に最近は寝起きが暑かったし。


『あ、ちょっと踏ん張ってて!』


「え?」


 台風クラスの風が中庭中に吹き荒れる。ちょっと熱かったり泥が混じってたりするのはその他の属性のせいか?


『やー、ごめんごめん。でもワシ悪くないし』


 いや、どう見てもアンタのせいだろ。

 周りを見渡すとみんなが所々汚れている、ただ一人を除いて。


「ねぇジーク、なんで茶髪だけ焦げてるのです?」


『リリィのせいだと思うぞ......?』


 足元のジークと目が合わない、コイツやったな。

 ガッコさんとジークのせいで臨時の着替えの時間が設けられることになった。

今回も読んでいただきありがとうございました! 次回も楽しみにしていただけるとありがたいです!


ジークよくやった!!

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