死亡。そして、
興味を持っていただきありがとうございます
初めての連載投稿になるので、間延び、ご都合、色々あると思いますがぜひ読んでみてください!
「ここは、どこなんだ......?」
見慣れない天蓋付きのベッドに、豪華なカーペット、無駄に装飾の凝ったタンスが2つ、大きな窓からは太陽(雰囲気的に恐らく朝日)が覗いている。
「これは、もしかして......」
酒の勢いでそのまま相手の家で......と言うやつなのか?
「というか、どうしてこんなことに......」
脳内で原因を必死に検索する――――
遡ること24時間前
「あぁ〜、今日も疲れが抜けてねぇ」
日々の体の老化を実感しながら、ごく普通の会社員、日下部英二は目を覚ました。
俺について追記するなら、小中高と野球をやってて礼儀正しく褒め上手、そのおかげで今では部長ってやつだ。育てた部下は数しれず、手を焼いた部下の半分以上がグループ会社で俺より上の立場だったり独立したりしている。
いわゆる、昨今ではほんのりレアな「いい上司」ってやつだ。
名前の通り次男だが親の面倒多少は見て、1人暮しには十分な稼ぎで人生を謳歌している!
7時35分、出発
「日下部英二、いっきまーす!」
いつものように上機嫌で玄関を出る(正直、頑張ってテンション上げないと管理職なんてやってられない)
8時30分、出社。
そしてすぐに部下と一緒に自分たちのフロアの掃除に取り掛かる。場合によってはこの時に、元気ない奴に声掛けたりもする。(風の噂では、毎朝の掃除で好感度がちょっとずつ上昇しているらしいが、好感度なんか要らんから少しでも月給上げてくんないかな?)
8時50分、朝礼開始
今日は俺のスピーチの番、『人間万事塞翁が馬』についてちょこっと喋って終了。(会社の中でこれが1番要らんだろ。ほとんど聞いてないと分かってても意外に緊張するんだぞこれ)
9時ちょっと過ぎ、業務開始
色んな人が考えたプロジェクトを確認。
そうこうしてるうちにすぐにお昼がやってくる。
13時30分、休憩
コンビニのサンドイッチと缶コーヒーでお昼ご飯を済ませる。
「日下部部長、ちょっといいですか?」
課長の成田が若い顔を連れてやってきた。
「こいつら、まだ馴染め切れてなくて......ご飯でも連れてってやってくれませんか?」
新入社員達に嫌かどうか確認してから、今晩は外食することにした。(頼ってくれるのは嬉しいんだけどさ......即日はやめてくれよ、というかお前が連れてってやれよ!!)
19時15分 退社
軽い残業もして本日の業務は終了、新入社員達はもう少し遅くなるということなので、脇のベンチでスマホを触っておくことにした。(こういう時間って暇だよなー、ソシャゲもする気にならんし、タバコもやってないし、ほんとに暇だ)
『ププゥゥゥゥ!!』
近くでクラクションが聞こえた。
(びっくりしたぁ! 本当にやめてくれよ! この歳になってもちょっとビクッとするんだよ! その度にちょっと気恥ずか――――
「かはっ......」
突然の衝撃で空気が漏れる、身体が宙を舞って何回転か、受け身などとれるはずもなく、顔面強打。
「ぁ......あ............」
声が掠れて出ない。
「キャーー!!」
悲鳴が聞こえた。少し遅れて脳が全身の痛みを理解する。
(何が起きた、事故ったのか?? それよりも痛てぇ!?)
ただ痛みに、全身を支配され、言葉にできない。
次第に痛みとともに意識が薄れていく。
(こ、れが......『死』なのか............? 俺の貯金......使われるのなんか嫌だ、な......それよ、り......あいつらに、なんて......謝る、べきか......)
どうにかして謝ろうと、そう思いながら日下部英二は42年の人生に幕を下ろした。