表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第九章 そして二人目
94/933

94 技能について

「そろそろ装備を整えてはどうかしら」

「ほえ?」


 ミルファがそんなことを言い出したのは、上昇した空腹度を解消させるためにがつがつと朝ご飯を食べている最中のことだった。

 エッ君とリーヴ?もちろんイリュージョンな食事風景でしたとも。


 ちなみに、ミルファはお家ではなくボクと同じ『猟犬のあくび亭』に宿泊していた。

 彼女いわく、「パーティーメンバーなのですから、同じ宿に泊まるのは当たり前のことですわ」ということらしい。

 お友達の家にお泊り会をしに行くお子ちゃまのようで、微笑ましく思えたのは秘密です。


「んぐ。……装備を整えるもなにも、エッ君もリーヴもついこの間新しい武器や防具を買ったばかりだよ」


 口の中でもきゅもきゅしていたスープの具を飲み込み、ミルファに答える。使い込むと言えるほど使用していないので、耐久度の方も全く問題ないはずだ。

 ちなみに当の二人、というかエッ君はご飯を食べ終えて退屈になったのか、リーヴの体に上ったり彼の頭の上からテーブルにジャンプしたりして遊んでいた。


「ち・が・い・ま・す!リュカリュカ、あなたの装備のことですわ」

「ボクの?」

「ええ。確か昨日の戦闘で四レベルになっていたでしょう?この調子で行けば五レベルに上がるのもすぐですわ。最上級の物とまでは言いませんけれど、もう少し良いものを身に着けるべき頃合いだと思いますの」


 彼女の話によると、五レベルというのは装備を変更する一つの目安になっているのだそうだ。

 特に冒険者だとちょうど等級が一つから二つは上がって、『初心者』ではなく『駆け出し』として周囲から認識されるようになるとのこと。


「受けられる依頼にも、魔物の討伐や薬草採取の護衛といった少し難易度の高いものが含まれるようになるため、少し上の装備が必要になってくるという訳ですわ」


 要するに、そろそろ初心者用装備からは卒業しろ、ということのようだ。


「うーん、装備かあ……。安い買い物じゃないよね……」


 もぐもぐとパンを咀嚼しながら物思いにふける。

 そんなボクにミルファは何を悩むことがあるのかと怪訝(けげん)な顔をしていた。実は今の今まで忘れていたのだけど、高価な買い物ということで一つ思い出したことがあったのだ。


「ねえ、ミルファ。技能屋さんってどこにあるの?」

「技能屋?もしかしてそれは『オーブ販売店』のことですの?」

「お、『オーブ販売店』?」

「リュカリュカが言っているのは、技能を取得するためのアイテムを扱っているお店、ですわよね?」

「いえす」


 そう、キャラクターメイキングの時にアウラロウラさんとの話で技能を買うことができる、と言っていたことを思い出したのだ。


「それなら、やはり『オーブ販売店』のことですわね。クンビーラで有名なのは、北東地区の貴族街にある『レオン宝石店』と、南西地区に店を構える『ホウク商会』かしら」

「貴族街!?宝石店!?」

「オーブは希少な上に造形が美しい物も多いのですわ。そのため高価で手を出せるのは貴族が大半というのが現状ですの」


 以下、ミルファの解説をまとめ。

 オーブとは使用する――破壊するともいう――ことで技能を取得することができる特殊なアイテムで、見た目はヒューマン種の成人男性の握り拳大の球状をしているそうだ。

 水晶玉のように無色で透き通っていることが多く、魔法技能を内包している一部のみがほんのりとその属性を示す色が付いている。


 その肝心の採取元はというと、何とビックリ、魔物のドロップなのだとか。

 しかも単にその辺の魔物を倒していれば良いというものではなく、クエストやイベントでボスとして登場するような特定の強力な個体のみがその身に宿していることがある、というレベルなのだそうだ。

 そりゃあ、希少っていわれる訳だよね。


 ただし、プレイヤーの間では少々事情が異なってくる。

 これは後から調べて知ったことなのだけど、立場上クエストをこなしたりイベントに参加したりすることが多いため、必然的にオーブを所持しているような魔物と戦うことが増える。

 その結果、オーブを手にする機会も増えるという流れとなっているようなのだ。


 はい、そこの「NPCの冒険者にも同じことが言えるのでは?」と思ったあなた!なかなか良いところを突いてきますね。

 確かに同じ冒険者であれば同じ流れができてもおかしくはない。と言いたいところなのだけど、ゲームの都合なのか、NPC冒険者たちは特定の街を拠点にしていて、そこから離れることは滅多にない。

 つまり、プレイヤーのように行く先々で片っ端からクエストを行うようなことはしないのだ。


 また、手に入れたオーブを売却する際、プレイヤーであれば同じプレイヤーに売るという選択肢も取れる。

 そして大抵の技能オーブであれば、プレイヤーへと売却する方が儲けになるのだ。

 こうした事情もあって、各ワールドでは希少な技能オーブも、『異次元都市メイション』であればかなりの頻度で目にすることができるのだった。


「ですがリュカリュカ、確かにオーブを使用すればあっという間に技能を取得することができますが、その分デメリットも存在するということはご存知?」

「え!?デメリットがあるの!?」

「その反応からすると知らなかったようですわね……。オーブを使用して取得した技能は、鍛錬や勉強によって習得したスキルと比較すると、明らかに熟練度の上昇が遅いのです。さらに熟練度の最大値も多くなるとされていますの」


 逆に熟練度が多い方がメリットになる〔回復魔法〕などは、熟練度最大値が低く抑えられているそうだ。


「それと、上位技能や派生技能を取得する事はできないというのもオーブの特徴ですわね。まあ、これは通常の方法で技能を習得する場合にも言えることですが」


 一足飛びで楽をする事はできないようになっている、ということだね。そうそう、ここまでのボクたちの会話で気が付いた人もいるかもしれないけれど、『OAW』ではオーブで取得する以外に、訓練や勉強をすることで技能を習得することができるようになっている。


 どちらかと言えば、こちらの方が正規の方法という扱いかな。


 ただし、本人の適性というのが関わっているとか何とかで、習得できるまでの時間がバラバラだという話だ。今のところ、最長で百時間以上掛かったという報告もあるくらいだ。

 この長時間に耐えられない人のために、オーブが存在するといっても過言ではないのかもしれない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ