表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十四章 『天空都市』へ
892/933

892 技能が大活躍

 隠された門を抜けて『神々の塔』の内部へと入り込んだ瞬間、スライムと姿がはっきり見えない謎の魔物に襲われることになったボクたち。不意打ちこそ避けられたけれど、良いとは言えない状況となっていた。


「迷宮のそれぞれの階層に入らない限り安全という話ではありませんでしたの!?」

「ここも迷宮の階層の一つということなのかもね!」


 憤懣やるかたないといったミルファの怒声にそう返す。スタート地点が安全圏となるかどうかはそれぞれの迷宮によって異なっているからだ。過去には迷宮に入った瞬間に魔物からの攻撃を受けて死に戻りをした、なんて愚痴が掲示板に書き込まれたこともあったらしい。


 もしくは長い年月の間に魔物が住み着いてしまったのか。これならスラットさんから何の注意もなかったこと、つまりは彼も知らなかったことに一応の説明はつく。

 スラットさんがすべての元凶で黒幕だった――「ナ、ナンダッテー!?」――な展開でもなければ、今さらボクたちが不利になるようなことをする必要はないから、十中八九はこれだろうと思う。


 実はあの人が……、というのはそれらしいことを頻繁に匂わせていないと成立しないものだからね。

 ……あれ?そういえばスラットさんは最後の王の弟で、しかも孤立していたのだよね?これはもしや十分にそれらしいことに該当している?


 ……ヨシ!まあ、そんなこともあるよねー、ということで深くは考えないことにしよう!なにせ今は魔物たちに襲われている真っ最中であり、そんなことを考えている場合じゃないもの。

 みんなが抑えてくれている間に、少しでも敵の情報を仕入れないと。〔鑑定〕先生、出番ですよ。技能を使用して分かったのは以下の通り。


 天井に張り付いていたスライムは『アシッドウーズ』。名前の通り体内に強力な酸をため込んでいる極めて危険な個体だった。至近距離からプシュッとそれを吐きかけるのが主な攻撃方法らしい。ダメージもさることながら武器や防具の耐久値を著しく減少させる効果があるようで、トレアの攻撃で距離を取れたのは不幸中の幸いだったね。


 ただし、酸への耐性が高いのはそれをため込んでいる袋部分だけで、上手くそれを破壊することができれば自滅させることも可能であるとのこと。

 また、スライム系の共通の弱点でもある核を破壊することでも倒すことができるぞ。


 対して、背後から迫ってきていた謎の人型は『冷たい陽炎(かげろう)』なる魔物だった。暑い日の陽炎のように向こう側が揺らいで見えるためというある意味そのままな名前だわね。

 とてつもなく厄介そうだが、こちらも対処方法はある。実は保護色的なそれに能力を全振りしているようなのだ。なるほど。接近に気が付くことができたのもそのためという訳だ。


 そして、位置の特定がし辛くて戦い難い反面、攻撃を当てることができればすべて有効打になるらしい。攻撃方法もシャキーンと伸びた爪によるものだけなのだとか。

 まさに一点突破型だわね。アシッドウーズとの挟撃が決まっていれば、成す術もなく敗北していたかもしれない。


 まあ、現実――ゲームだけれど――には奇襲をしっかりとくい止めることができたので、ここからはボクたちのターンだ。

 それにしても、なんやかんや使い続けて熟練度が上がったからなのか、予想していた以上の情報を仕入れることができたよ。


「ミルファ、リーヴ!その冷たい陽炎は攻撃も防御も大したことないから受け身に回らずに攻め立てて!ただし逃げられると発見するのは難しいから、必ず止めを刺すように!ネイトは用心で二人の回復を第一にサポートへ回って」


 もしも怪我をしてしまっても、彼女の回復魔法があれば問題ないはず。これでは以後は何とかなるだろう。

 問題はアシッドウーズ(こちら)だ。近付けば酸を受ける危険があるから、必然的に遠距離からの攻撃が中心となるだろうね。そしてこちらには遠距離攻撃のスペシャリストのトレアがいる。


 が、ことはそう簡単には進まない。確かにこの戦いだけを見れば、トレアはアシッドウーズの天敵とすら言えるだろう。しかし目線を変えてこれから先のことまで含めて考えると、必ずしもそうとは言えなくなってしまうのだ。


「うわーお……。撃ち込んだ矢が跡形もなく消えちゃってるねえ」


 それほど耐性が高くないとはいえ、どうやら酸をため込んでいる袋以外の箇所にも、多少はその性質が存在しているらしい。


「いくら矢が消耗品とはいえ、無駄になると分かっていて撃ち込みたくはないよ……」


 『神々の塔』へと踏み込んだことで、イベント内容の流出やネタバレを防ぐために『異次元都市メイション』への出入りや購入できるものに制限がかけられている可能性が高い。『天空都市』で死霊たちを相手に大立ち回りをしなくちゃいけない、かもしれないことを考えると矢の一本すら無駄にはできないのだ。


「消耗しても時間経過での回復もできるMPを使った攻撃を中心に据えるしかないか」


 要は魔法及び一部の闘技だね。……しまった!ネイトもミルファも冷たい陽炎の相手を任せてしまったよ!?こちらの残るメンバーはボクとエッ君とトレアの三名だ。

 先程説明した通りトレアは除外となる上に、エッ君は肝心要のMPの総量に不安が残る。

 え?〔不完全ブレス〕?非破壊オブジェクトすらもぶっ壊しちゃうような危ないものは使えませんから!エッ君本人への反動もシャレにならないレベルだし。

 よって、攻撃面ではボク一人で何とかするしかないということになる。


「エッ君は距離を取りながらあいつの注意を引いて。安全第一でお願いね。トレアはあいつを一発で倒せるように、核か酸袋のあるところを探って」


 サクッと倒せてしまえるなら、矢の一本くらいは必要経費どころか安いものだ。ついでに言うと、今後のこともあるからここで彼女に役立たずだと凹まれても困るのだ。


 ちらりと横目で伺ってみたところ、ミルファとリーヴがなにもなさそうに見える場所をズバズバと斬りつけていた。位置を悟られないようにするためなのか、視界隅に表示されている冷たい陽炎のHPゲージがぐんぐん減少している。あちらはそのままお任せして問題なさそうだ。

 余談ですが、敵のHPゲージは隠ぺい系の技能によって隠されている場合を除き、基本的には相手の頭上に表示されるよ。


「それじゃあ、こっちもスライム退治を始めましょうか!」


 ちょろちょろ動き回ることで、上手い具合にエッ君がヘイトを集めてくれているようだ。ふむふむ。それなら単に魔法をぶつけるだけでなく、大ダメージを狙ってみましょうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ