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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第五十三章 設定公開中
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886 透けて見える思惑

 ビックリ仰天な衝撃の事実が発覚!なんと『大霊山』こと『神々の塔』は『古代魔法文明期』に造られた超巨大建造物で、さらにさらに人工の迷宮ですってよ、奥様!

 アタクシとしては頂上を含むどの階層にも出入りできることが気になりわ。迷宮を活用できれば資源問題は一発解決できますもの。

 だけど奥様、あの迷宮は『大陸統一国家』の人々でも歯が立たない、チョー危険なようですわよ。

 あらやだ!調査隊の誰一人として帰還していないだなんて、怖すぎですわね。


 と、脳内の寸劇はこれくらいにしまして。


「本当に誰も帰ってきていないの?」

「本当だよ。『神々の塔』内部の迷宮攻略が国家プロジェクトとして進められた時代もあったほどなんだけれどね、結果は散々だった。騎士団の精鋭に腕自慢たちを動員してその上貴重な通信系のマジックアイテムまで持たせて攻略に向かわせたけど、開始五分で全員音信不通になってそれっきりだったらしい」


 騎士たちは管理していた迷宮で厳しい訓練を積み重ねていたし、腕自慢たちは小規模とはいえいくつもの迷宮を攻略していた猛者だったのだが、そんな彼らですら手も足も出なかったようだ。

 この失敗で人的にも物的にも大きな損害を出してしまい、中興の祖と呼ばれた賢君が現れるまで、長らく低迷の時代が続いたのだとか。


「魔物の討伐や駆除が追い付かずに建国以来初めて餓死者が出てしまってね。国家史上最悪の時代とセットで苦い教訓として語られるようになったのさ」


 そんな危険で因縁のある場所を『天空都市』の出入り口に利用していたのだから、ある意味肝が据わっているよね。


「人工の迷宮だからなのか、魔物があふれ出すといった災害は一度も発生していなかったからね。使えるものは全て使い倒してやろうと開き直っていたのかもしれない」


 そんなものかもね。という訳で、頂上への移動だけなら危険はないようだ。


「むしろ敵地に乗り込むんだから、『天空都市』に入ってからの方が問題かしら?」


 ミルファのご先祖様が残した碑文いわく、自我を失って死霊と化した住民たちが徘徊しているみたいだからねえ。しかも襲われたらしい。


「あ、それは死霊たちがやってた研究か何かを盗み見てしまったからだっけ」

「研究といっても自我のあった生前の真似事をしているだけだろうから心配はいらないよ。本当に研究が進められるようであれば、とっくに完成して死霊たちの支配する世界になっているはずだから」


 たとえ仮定の話でも笑えないから、そんな朗らかなお顔で言わないでください。

 死霊たちが敵対判定を下すスイッチがどこにあるのか分からないのは困る。ディストピアで大量の資料と鬼ごっこだなんてどんなパニックホラーだ、という話だよ。


「リュカリュカ、死霊たちの対処法も重要ですけれど、もっと根本的な問題がありますわよ」

「え?」


 割って入ってきたミルファの声に振り返ると、ネイトが神妙な顔で頷いて続ける。


「乗り込むのはいいとして、わたしたちは『天空都市』で何をどうすれば良いのですか?」

「あ……」


 その通りだよ!勢いで「なんとかする!」と考えていたけれど、具体的にどうするのかまでは頭が回っていなかった。これでは向こうで右往左往するばかりでバッドエンド行きになってしまう。


 ノリや勢いと書くと熟考しないその場しのぎのように思われるかもしれないけれど、それはちょっと違う。上手く噛み合えば想像しうる最高のパフォーマンスを発揮できたりと、なかなかに侮れないものががあるのだ。


 ただ、意図的には発揮し難いという厄介な性質も持っているため、当てにし過ぎていると思わぬしっぺ返しを食らうこともあるので要注意。

 そして、計画や準備の段階ではそうした不確定な要素は極力排除して計画を練らなくてはいけない。当たればデカいロマン砲も、当たらなければどうということもないのだから。


「それじゃあ、ボクたちの勝利条件とかやらなくちゃいけないこととかを洗い出しておこうか。スラットさんには引き続き特別顧問としての参加をよろしくお願いします」

「とてつもなく今さらな話だね……。まあ、話し合いの方には参加させてもらうけど」


 まあ、ボクも今更だとは思うよ。ただ、死霊は危険、死霊は怖いという印象が刷り込まれていたこともあって、連中を外に出さないことばかり考えていたからなあ。

 今に至るまで『天空都市』に自分たちの方から乗り込むだなんて考えてもいなかったのよね。できることなら死霊と顔を合わせたくはないのは今でも同じだ。


「『神々の塔』の頂上にある『天空都市』への入り口を壊すなりして使用不可能にするのではダメなのかな?」

「それは止めた方がいい。物資の搬入を行っていたあの場所は生命線だということで、当時から過剰なほどの防衛網が敷かれていたんだ。自動反撃装置の大半は機能を停止しているだろうけど、中には未だに生き残っているものもあるかもしれない」

「うわあ……、自動反撃装置まであるんだ……。あれ?そうなると部外者が入り込めないように監視装置なんかもあるんじゃないの?」

「そちらは人の管轄さ。マジックアイテムでは心の機微までは判別できないから」


 意外とアナログだった!?それともこの場合は適材適所というべきなのかしら?


「『天空都市』への移動そのものは問題なく行えるはずだ」


 くうっ……。やっぱり死霊の巣窟への突入は避けられないのかあ……。

 だけどどうして『天空都市』の人たちは入り口を閉ざすことはしなかったのだろうか?いくら主砲が使い物にならないとはいえ、制空権を取れるのは圧倒的に有利なはずなのに。


 ……まさか死霊になる、というか肉体を捨て去ることで『神々の塔』の迷宮攻略ができるようになると考えていた?

 活用さえできれば迷宮は資源の宝庫となるから、長期戦や反撃の機会を見据えて確保しようとしていたのではないだろうか。

 貴重なマジックアイテムを使ってまで『神々の塔』に入れないように閉鎖空間の罠を仕掛けたのも、それが本当の理由だったのかもしれない。


 そして入口の方に手を出せない以上は内部を何とかすしかない、ということになるのよねえ……。


「絶対なのは、今後おかしな野望を抱いた人が現れても『天空都市』を悪用されないようにすることだよね」

「そこは最低限のクリア条件に設定してもらいたいかな」


 ですよねー。そもそもボクたちの行動の起点もここにあると言っていいから、異存はないです。


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