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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第八章 一人目の仲間
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87 冒険者協会へ移動

 本命以外の事に時間を取られまくったというのがなんとも言えないところではあるけれど、宰相さんとの会談を終えてやっとのことでお城から脱出したボクたちは、その足で冒険者協会へと向かっていた。

 ミルファ――本人からそう呼んで欲しいと懇願された――の冒険者登録をしに行くためと、探索目標であるお墓について何かしらの情報がないかを探るためだ。


 協会の建物に入って軽く周囲を見回してみたが馴染みの顔は一人もいなかった。どうやら依頼を受けて外に出ているみたい。

 まあ、ボクとそれなりに仲が良い人なんて限られてくるんだけどさ。


 視線が合うだけで難癖をつけるその筋の人みたいに思われそうだから、ボクの姿が見えたからって露骨に眼をそらすのは止めて頂きたいと切に願う次第でございますです。

 大の大人というか、筋骨隆々な熟練冒険者っぽい人たちですらそれをやるんだから始末に悪いと思う。


「ふわあ……!。これが冒険者協会の中ですのね」


 そんなことを考えてイラッとしていたボクの隣では、ミルファがお上りさんのごとくホールのあちこちを見回していた。

 うん。とりあえずその恋する乙女のような眼差しと口調は止めておこうか。

 超絶美少女な外見と相まって、多数の男どもが釘付けになってしまっている。


「はいはい。ミルファ、カウンターに行くよー」


 ボクの言葉に反応して、彼女の背後に回ったリーヴが強引に押して歩かせ始めた。

 すっかりうちの縁の下の力持ち的役回りとなっているね。見た目は綺麗な鎧兜姿なのに、なんか申し訳ない。


「あ、ちょっ!?もう少しこの感動に浸らせてくれても!?」

「それやっていると、いくら時間があっても足りなくなるからまた今度」


 主にボクのリアルでの時間がピンチになるからね。

 今回のイベントクエストは下手をするとテスト明けに持ち越さなくちゃいけないかもしれないかも……。


 往生際の悪いことを口走るミルファにぴしゃりと指導しながら、お昼前で並ぶ人もいなくなったカウンターへと向かう。


「こんにちは」

「あら、リュカリュカちゃん。こんにちは。今日はどんなご用件かしら?」


 さすがは協会の顔役だけあって、受付のお姉さま方は今日も綺麗です。


「ちょっと色々あって、こっちの彼女とパーティーを組むことになりまして」

「まあ!リュカリュカちゃんもついにパーティーを組む相手が見つかったのね!」


 ちょっとお姉さん!その言い方だとまるでボクがボッチだったみたいじゃないですか!?

 そしてホールにたむろっていた冒険者の人たち、「マジで!?」みたいな感じで驚くの止めてくれません?


「え?なにこれ?上等だ、表出ろってキレる場面?」

「すんませんでした!!」


 カチンときて呟くと、即座に謝罪の大合唱が巻き起こる。一寸の狂いもない斜め四十五度のお辞儀を繰り出してます。


「りゅ、リュカリュカ?あなた一体何者なんですの?」

「ただの十等級冒険者。あの連中のことは気にしないように」


 その様子に恐れおののいた感じで尋ねてくるミルファへの返答が適当なものになってしまったのは仕方がないはず。

 それにしてもこの注目を集めた状態というのは、ミルファの素性のことを考えるとよろしくない気がする。ここは先に情報収集を進めた方が良さそうな気がしてきた。


「それはともかく、デュランさんはいますか?」

「支部長なら部屋にいると思うけれど、どうかしたの?」

「ちょっと相談事があるんですが、会えますかね?」

「リュカリュカちゃんから相談事って聞くとなんだか不穏なものを感じてしまうのだけど……。まあ、いいわ。聞いてきてあげる」


 物騒なことを言い残して席を立つお姉さま。

 綺麗だし人当たりもいいのだけれど、微妙に口が軽いというかノリが軽いのが、彼女たちの欠点だと思う。


 そして待つこと数十秒、すぐに面会してくれるということで、お姉さまの案内に従って支部長室へとれっつらごー。

 その間、ミルファが「支部長とあっさり面談できるなんて……」とこれまた驚いていたけれど、突っ込んでいると時間泥棒に遭遇しそうなので放置しておきます。

 自分でいうのも何だけど、段々と彼女の扱いが雑になっている気がするなあ……。


「そんな訳で指名依頼を受けることになったので、何か情報があるなら教えてください」

「うん。ちょっと待とうか、リュカリュカ君」


 部屋に入って挨拶もそこそこに事情を説明してからそう切り出すと、デュランさんから待ったの声が掛かった。


「どうしたんですか?」

「それはこっちの台詞だと思うんだがね。ともかく、そんな重大な内容をさも世間話をするような態度で話さないでくれないか。ほら、そっちの彼女なんて呆気に取られて固まってしまっているじゃないか」


 ミルファが硬直しているのはボクの話のせいではなく、デュランさんと近距離エンカウントしたことによるものなんだけどね。

 でも、言ったところで状況が改善することもないので、ここはスルー一択です。


「これからボクたちとパーティーを組むことになるんだから、嫌でもそのうち慣れますよ。それよりも情報です。何か心当たりはありませんか?」

「いきなり言われてもな……。いくら公主の墓とはいえ『三国戦争』以前のものとなると、破壊し尽くされていても不思議じゃない」


 当時、戦いに巻き込まれたいくつかの小規模な都市国家が崩壊してしまったほどの激しい争いだったという。


「城の方でもごく一部に記録が残されていただけの極秘扱いだったようなので、一般的な権力者の墳墓とは違って、目立たないどころか隠されている可能性もありますよ。それに戦争の際に発見されていれば、もっと知られることになったと思うんです」


 一方で、だからこそ権力者の埋葬されているお墓なんて見つかったら、資金源として漁り尽くされていたと思うのだ。


「確かにその考えも一理ある、か……。しかし隠されているというのも、それはそれで面倒だな」

「そうなんですよ。だからそれらしい報告だけではなくて、何でもいいので情報がないかと思って聞きに来たんです」

「微妙に便利屋か情報屋扱いされているような気がするけど、そこは今のところは置いておこうか。だが、せっかくやって来てくれたところすまないが、それらしい情報はない……。いや、待てよ……。そういえば砦跡で地下に続く扉のようなものがあったという話をずいぶん昔に聞いたことがあるような……」


 おおっと!これはもしかして当たりかしら!?


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