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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十五章 混迷する学園
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740 担当を決めよう

 嫌な予感を振り切るように、さっさと話題を元へと戻しますですよ。


「言い忘れていましたが、この場にいない方への協力依頼は皆さんのご判断で構いません」


 出会って当初ならば無理だったが、今ならそれなりに信頼できている。彼らが選んだ相手なら信用くらいはできると思う。


「三年は卒業条件を満たして領地に帰っている者も多い。人数も減っているからうちの者たちを使えば私一人でも監視くらいは可能だろうね」


 学園生という括りではあっても外部の協力者を求めるくらいなら、身内を使うということか。貴族的にはそちらの方が一般店的な思考なのかもね。

 信用度は段違いに高いだろうし、情報の流出についても心配は少なくなる。こういう「人を使う」やり方はボクには思い浮かび難いから、トウィン兄さまのヘルプはこういう時にとっても助かります。


「そうなると、数の多い一年が問題になるか?」

「僕とジーナさんだけでは、見ていられる範囲は限られてしまいます」


 しかもこう言っては何だがジーナちゃんもまた下級貴族だ。他の面子に比べると動員できる身内も少なくなってしまうだろう。

 救いなのはあの怪我をさせられた一件以来、下級貴族や平民の女の子たちの中で――なぜかボクとセットで――ジーナちゃんの人気が高止まりし続けていることだろうか。

 もしも魔改造ドレスの子を迫害している場に遭遇してしまっても、彼女が止めるように言えば、渋々ながらも従ってくれるのではないかと思う。


「男子どもの面倒は私が見る。学年を問わずすり寄って来ていたやつらは少なくなかったはずだからな」


 横合いからそう割って入ってきたのは、何となんとジャグ公子その人だった。


「ジャグ様、よろしいのですか?」


 ライレンティアちゃんが心配そうに尋ねると、面白くなさそうに「フン」と鼻を鳴らしている。相変わらず偉そうな態度だわねえ。

 まあ、あえてそういう風に振る舞うことで、隙のない強い人物を演出しようとしているようだと分かってきたのだけれどね。

 偏ったイメージだなとは思うが、彼なりに公子の役割を全うしようとしているのかもしれない。


「落ち目になることが分かって見捨てたなどと陰口を叩かれるのは業腹ものだからな。それに、あいつらは私をいいように利用していたと思い込んでいるだろう。それが大いに間違いだったと知らしめてやらなければ気が済まん」


 思い込むも何も、思いっきりいいように誘導されていたでしょうに。

 まあ、ここは大目に見てあげるとしましょうか。そのことを理解できて認められるようになっただけでも成長したということだろうしね。


「ですが、さすがにお一人だけというのは問題になるのでは?」

「……私一人には任せられぬと言うつもりか?」


 意見を述べてきたミニスに、ジャグ公子は苛立った様子で言い返している。

 うーん……。沸点が低いのは相変わらずか。それでも問答無用で切り捨てはしないで、その真意を知ろうとするようになっただけ成長以下略。


「御身に何かあっては元も子もありませんのでね。状況が状況です。逆上する者や自暴自棄になる愚者がいないとは言い切れないでしょう。ですから、ローガーをお連れ下さい。ジャグ様の背後に立って睨みをきかせるにはもってこいでしょう」


 なるほど。学園生の中では最強の部類であるローガーが控えていれば、十二分な抑止力になりそうね。


「うわ、ミニスさん露骨すぎ。そして汚い……」


 おや?スチュアートが何か呟いていたが、小声だったので聞き取れなかったな。まあ、意見があるならしっかりと伝えてくる子だし、話を中座してまで尋ねるほどではないかな。


「俺か?確かにそういう分かりやすい役割の方が性にはあっているな。要は公子に喧嘩を売ってくるやつを片っ端から返り討ちにしたらいいんだろう」

「違う!」

「そもそも喧嘩をする気を起こさせないようにしろと言っているんだ!」


 そして、当のローガーはと言うと、微妙にズレた解釈をしていてジャグ公子とミニスから思いっきり突っ込まれていたのだった。

 本当にこのデコボコ主従に男子たちを任せておいて大丈夫なのだろうか?そこはかとなく不安に感じられてしまうのですが……。


「残るは女子たちだね。特に二年にはテニーレ嬢とその取り巻きの子たちがいるから、色々な意味で危険そうだ」


 兄さま、とっても他人事な調子ですね。まあ、本人が言っていたように三年の方を受け持ってもらわなくてはいけないから、関与していられる余裕はないというのが実際のところなのだろうけれど。


「では、二年はライレンティアが、そして一年はスチュアートが中心となり、補佐にミニスを置いて監視するようにすればどうだ。これならそうそう批判を受けることもあるまい」


 勝手が分かってきたのか、ジャグ公子が場を仕切り始める。

 片や侍従長の息子で、片や公子妃最有力候補だ。表立って文句を言える人はほとんどいないだろうね。


「いいえ。女子たちのことは同性である私にお任せくださいな。女は殿方がいては本音を隠す生き物ですもの。補佐もジーナ様とリュカリュカ様にお願いしたいですわ」


 ライレンティアちゃんからのご指名とあれば喜んで!彼女が将来妃として公子に並び立つための実績づくりとしては申し分ない。

 ジーナちゃんも同じ気持ちだったようで、小さくふんす!と気合を入れているね。


「あの……、それでは僕とミニスさんは何をすればいいのでしょう?」


 まさか仕事を取られるとは思ってもいなかったスチュアートが、情けない声で疑問を口にする。

 本当はそれくらい自分で考えてもらいたかったが、いきなりのことだったからそこまで求めるのは酷というものかな。


「それではお二人には、ジャグ公子の呼びかけに応じなかった男子学園生の監視と、全体の状況の把握をお願いしたいです」


 このタイミングでの声掛けだ。裏があるだろうと訝しんだり怪しんだりして、公子の世話になるのを拒否する者が必ず少しは出てくるはずだ。

 他にも兄弟がいるならばリスク管理のために所属を分散させようとする家もあるだろう。


「対象の人数こそ少ないかもしれませんが、お二人の担当も私たちにも決して劣らない重要なものですから、頑張ってください」


 そう告げると二人はすっかりやる気を出したもよう。

 実際にそうしたはぐれ者となった連中こそ、攻撃の対象になりやすい傾向があるからね。全体像の把握と合わせて責任重大なのは間違いないのです。


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