738 攻略が進む
「分かりました。それじゃあ、これからもご指導よろしくお願いします!」
先ほどまでとは一転して、いい笑顔でそんなことを言ってくるスチュアート。
「はい?」
「ははは。リュカリュカ、すっかり懐かれてしまったようだね」
「はいいいぃぃ!?」
いやいや、ちょっと待って!どうしていきなりそんな超展開になっていやがりますか!?
トウィン兄さまもそんな楽しそうな調子で言わないでもらえますかね!
しかも当のスチュアート君は年下ワンコ系男子の面目躍如と言わんばかりに、キラキラした瞳でこちらを見てくるのですが!?
そういえば中学時代、学校行事がある毎に里っちゃんたち生徒会役員の面々をそんな風にキラキラアイで見ていた後輩たちがいたなあ。
そのたびに居心地の悪そうな顔をしていたけれど、なるほど、確かにこれはむず痒いと言いますか、落ち着かないわ。
あれ?生徒会室に入り浸っているという点では今もあの時とそう変わりはないのかも。
……そういうことであれば、少しくらいお手伝いをするのもやぶさかではない。
「私が理解できているくらいのものですから、どこまで通用するかは不明ですよ」
だけど、仮に問題が発生した場合に何でもかんでもこちらの責任にされては困るので予防線を張っておく。もしもこれを嫌がるようであれば、しょせんはその程度の信頼だっただけの話だ。
「もちろんです!得た知識や力をどのように活用できるのかは僕次第ですから。決してリュカリュカ様の迷惑になるようなことはしません」
ん、んんー?なぜだかとってもいい笑顔。しかも有効成分多めというか、ボクの意見イコール正しいの図式になってしまっているような……。
その程度どころか、信頼が絶大過ぎて逆にこちらの方がドン引きしてしまいそうなのですが。
一方で、ミニスとローガーからは不満だという気配が漂ってきていた。それがまた割とガチめな雰囲気でして、「やめて!ボクのために争わないで!」とか冗談でも言えるような空気ではなかった。
兄さまとジャグ公子?
パートナーがいるやつらは余裕があっていいですね。けっ!
「ライレンティア様、リュカリュカ様を取り巻くお三方の様子が素敵な、いえ大変なことになっているように見えるのですが?」
「私にもそう見えますわ。あの三人にしては距離が近いので迂闊だとは思っておりましたが、どうやら本気になってしまっているようですね」
「それはお三方ともに、ということでしょうか?」
「おそらくはそうだと思いますわ」
そのパートナーたちはきゃいきゃいと二人で盛り上がっていたけれど。ジーナちゃんもライレンティアちゃんも、しっかりと聞こえているからね。
まあ、二人とも年頃の乙女だから恋愛ごとに興味を掻き立てられるのは仕方がないことかな。フな方へと突き進まれないだけましだと思っておきましょうか。
おっと、そろそろ話しの主題を元に戻そうか。先の騒動を機に色々と事態が動いているようだし、のんびりしていてはボクたちの知らないところで全てが終わっていた、なんて展開になってしまうかもしれない。
ゲームだから特定のフラグを立てないとイベントの進行がない可能性もあるが、そのフラグが立ってしまう要因が分かっていないからね。
加えて、時間経過で自動進行する仕掛けが組まれているかもしれないので、行動方針を決めて、できれば皆には協力してもらいたい。
「話を戻しますが、このまま粛清や処罰が進めばどうなるでしょうか?」
「いかに悪事を働こうとも『十一臣』を取り潰すとなると大事になり過ぎる。とはいえ、極端な言い方をすれば軍部を私物化していたようなものだ。当主の交代ならばまだ軽い方で、主家筋の交代もあり得るかもしれない」
ストレイキャッツを始めとした魔物の誘導のこともあるから、実際にはそれでは終わらないだろうね。
最終的には爵位の降下に領地の召し上げや転封、私兵団の解体と言ったことも行われるのではないかな。
先々のことは一旦置いておくとして、現状の情報からだとミニスが考察したような展開になると考えられる訳か。
ボクたちほど細やかで詳しくはないけれど、断片的な情報は学園生たちにも伝わってきているはず。
既に城内ではタカ派貴族に対しての風当たりが強くなっているようだし、大人たちにならえとポートル学園でも同じことが起こることは十分に考えられる話だ。これは思っていたよりも早く行動に出なくてはいけないのかもしれない。
「リュカリュカ様、何かをなさるおつもりですの?」
最初に勘付いたのはライレンティアちゃんだった。目ざといと言いますか周囲の変化に敏感と言いますか、これは本人の資質や性格もさることながら、妃教育を受けてきたことも影響しているのではないかな。
「このままでは、テニーレ様たちが害されてしまいそうで。それを止めたいのです」
魔改造ドレス集団がボクのペンを破壊していたのは記憶に新しい。他にも何一つ成功はしていないけれど、様々な嫌がらせを画策して実行しようとしていたことは、ボクたちだけでなく多くの学園生が目撃している。
また、ジャグ公子の太鼓持ちをやっていた男子たちも、虎の威を借りた狐のごとくその権威を笠に裏ではかなりやりたい放題していたという噂もあった。
恨みに思っていたり悔しく感じていたりする人だって少なくはないだろう。
中には仕返しをする機会をうかがっていた人だっているのではないかしら。そんな彼ら彼女らの目には、今回の件はまたとない絶好の機会として映ってしまうことだろう。
「だけど、それだけのことをやって来たのも事実ですよ。やり返されたとしても自業自得というやつなのでは?」
「スチュアート様の言うことももっともだと思います。ですが、やられたらやり返すというのは、時に相手と同じ程度に自らを貶めることに繋がります。そのことを考えも理解もしないままに一時の衝動で行動してしまっては、きっと後悔することになると思うのです」
それでもなお行動に出ようとするのであれば、好きに堕ちてしまえばいいよ。
ただし、こちらの目につく範囲、手の届く範囲であれば徹底的に邪魔をするつもりだけれどね。
「誰かが加害者となることも防ぎたい、ということか。ふふふ。甘いね。でもリュカリュカらしいようにも思える」
あらら。やっぱり貴族的には甘い考えということになるみたい。
ところで兄さま、そういうキラキラしい笑顔での肯定台詞は、ボクではなくジーナちゃんに言うべきです。
〇攻略ワード
このセリフを聞くことができれば、三段笑いをしようが、「勝ったな!」と言おうが、お風呂に入ろうが、ご飯を食べていようがグッドエンド以上が確定するというもの。
通称「約束された勝利の台詞」。
ただし、ハッピーエンドへの分岐には別の条件が必要となる。
また、スチル回収のためにバッドエンドルートへ進もうとしていたプレイヤーにとっては「敗北の証」へと早変わりする。
ジャグ公子 「光栄に思えよ。国のために生きるはずの俺が天秤にかけたんだから」
ローガー 「無駄だろうが何だろうが、努力をするやつは嫌いじゃないぜ」
ミニス 「負けたくない相手がいるというのも、案外面白いものだな」
スチュアート 「これからもご指導よろしくお願いします!」
トウィン 「これでも振り回されることには慣れているつもりだよ」
????? 「剣を振るしか能のない人間にとんだ無茶なことを言うやつだ」
ライレンティア 「私たちはどんなことがあってもずっと一緒ですわ」
ライバル令嬢が混ざっている? 隠し攻略キャラなので問題なし!
友情エンドと百合エンドの二種類が実装予定?です。