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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第七章 ド偉い人とエンカウント
72/933

72 あっという間に日々は過ぎゆく

 襲撃してきたおじさんへの嫌がらせを行ってから、リアルで二週間の時間が過ぎていた。

 あれ以来ボクは騎士団本部へ行くこともなければ、取り調べの状況を尋ねることもしていなかった。下手に接触することで、イベントの続編が発生しないようにするためだ。

 ランダムイベントに関連していたから、その続編でも発生のお知らせがない可能性があるのですよ。はっきり言って、何の準備や心構えもなしにあんな危険な目に合うのは二度とごめんだった。


 それと色々と調べた結果、テイムモンスターのデスペナルティについても知ることができた。

 テイムモンスターのHPがなくなってしまった場合、一時的に『○○の魂魄石』というアイテム化してしまい、レベルに応じたお金を消費しないと復活できないようになっていたのだ。

 しかもリアルでの端末への呼び出しすらできないという徹底ぶり。


 今やエッ君とリーヴはボクにとって癒しの存在となっている。そんな二人に会えなくなるというのは、とっても辛い!

 絶対に死んでしまう可能性があるような危険なことはしないでおこうと心に誓ったボクなのでした。


 さて、それではこの期間に何をしていたのかというと……、一応色々やってました。


 例えば、三人パーティーになったので本格的な集団戦の訓練とか。

 そうそう、リーヴには今の時点で購入できる最高品質の剣と盾を買ってあげました。……その際、エッ君が駄々をこねて手鉤を改造した専用武器を作ってもらう羽目になったのは予定外だったけど。

 まあ、うちの子たちが強くなったということで結果オーライ!ということにしておこう……。


 集団戦の訓練だけど、ボクたちにもしもの事故があってはいけないということで、なんとディランのおじいちゃんにサイティーさん、ゾイさんという豪華メンバーが相手をしてくれることになった。

 そこに時々支部長のデュランさんまで加わってくるのだから勝ち目などあるはずもなく……。連戦連敗の記録を伸ばす毎日だったとだけ伝えておきます。


 そのお陰もあって個々の技能熟練度だけでなく、三人で戦う際の連携の練度はかなり上昇していた。

 今ならおじさんに操られていた大量のブレードラビットを相手にしても勝つことができるような気がする。ある日の休憩時にそんなことを口にしたら、


「数の脅威を甘く見るな」


 と、大真面目に叱られてしまった。さらにその後、ゾイさんとデュランさんの魔法を使った疑似集団戦をやらせられて、ボコボコにされてしまったのも今では良い思い出です。

 ……いつか仕返ししちゃるからね、こんにゃろう。


 ちなみに、街の外に出る時には騎士さんか衛兵さんのどちらかが必ず付いてくるようになったので、魔物相手の実戦はほとんど経験できていなかったりします。

 デュランさんたちも魔物の討伐依頼を受けられないようにする過保護っぷりを発揮してくれたから、余計に戦闘する機会がなかったのだった。

 そんな訳で、未だにどの程度強くなったのか実感できていないボクたちなのでした。


 その代わりと言っては何だけど、薬草類はかなりの量を採取することができていた。〔調薬〕の訓練用に雑草ですら根こそぎ取っていたからね。同行していた騎士さんたちが若干呆れ顔になっていたっけ。

 でも、まさかこの雑草があんなに評判になるとは、騎士さんたちはおろか、ボク自身も予想だにしていなかった。


 雑草は〔調薬〕の技能を使うことで、超低級ポーションの材料となる。

 液状薬(ポーション)系のアイテムのすごいところは回復量が最大HPの割合となっているところだ。つまり高レベルになって最大HPが上昇しても変わらずに使い続けることができる。ううん、それどころか、逆に効果が増すために、価値も上昇する可能性すらあり得るのだ。


 まあ、超低級ポーションの回復量は最大HPの一パーセントでしかないから、高値で売り買いされるようなことはないだろうけど。

 それでも小数点以下は切り上げとなるために一ポイントは回復できるのだ。


 そして、この一ポイントの回復量が重要だった。


 NPCたちの多くは街や村の中で日々の生活を送っている。実は『OAW』は町中イコール安全地帯ではない。魔物こそ出ないけれど、攻撃されれば死んでしまうことすらあり得るのだ。

 当然、ちょっとした怪我をすることもある訳で、ボクが〔調薬〕の熟練度アップのために作りまくった超低級ポーションは、そんなちょっとした怪我のための薬として利用されることになったのだった。


 手頃な値段と回復量でボクの作った超低級ポーション『兜卵印の液状薬』は文字通り飛ぶように売れていくことになる。そして、


「リュカリュカ、近くの雑貨屋から『兜卵印の液状薬』の追加依頼がきているんだが?」

「リュカリュカ君、職員用に常備しておきたいから、『兜卵印の液状薬』を冒険者協会にも納品してくれないかな」


 と連日問い合わせが殺到することになってしまった。


「うええ!?いつもお世話になってる女将さんとか雑貨屋のお姉さんへのお礼のつもりでしかなかったんですけど!?」


 元々知り合いの人たちへのお礼代わりに渡していた物だったから、当然のように製作量が間に合わなくなってしまい……、


「ボッターさんヘルプ!『兜卵印の液状薬』ブランドは譲渡するから、クンビーラの商業組合で何とか数を揃えて!」

「今一番の売れ筋商品の出所も嬢ちゃんだったのかよ!?」


 商業組合に泣きつくことになってしまった。


「それが無理なら、雑草を集めてくださいよ」

「いや、それは冒険者協会に依頼することだろう!?」


 超低級ポーション自体は、〔調薬〕の一括作成で大量に作ることができるのだけれど、いかんせん材料となる雑草が確保できなかったのだ。


 結局、これからも新規に薬品類を作ることになるだろうということで、ボクの『兜卵』ブランドは譲渡することができなかった。そのため、超低級ポーションはボクが作り続けなくてはいけなくなってしまったのだった。


 加えて、作った『兜卵印の液状薬』は全て商業組合に卸すことになる。その代わり冒険者協会への雑草採取の依頼や商品の販売、さらに今はボクの独占状態である市場の開放と新規参入などなどの面倒事を、全て商業組合が請け負ってくれると約束してくれた。


「まずは各店ごとにバラバラな売値を統一させなくちゃいかんな。はあ……。問題が山積みだぜ」

「ご面倒をおかけします。あ、疲労回復ができる薬ができたら、ボッターさんに一番に持ってくるね」

「頼むから大人しくしていてくれ!」


 という会話があったとかなかったとか。いや、あったんだけどね。諸悪の元凶のように言うのはどうかと思うんですが、そこのところどう思われます、奥様?


 そんな感じで、ゲーム内で十日足らずの日々はあっという間に過ぎていったのだった。


〇エッ君の新装備


・脚装備 専用蹴爪(手鉤改造)×2

 手鉤を改造したもので物理攻撃力2、物理防御力1。耐久値は200。



〇リーヴの新装備


・右手装備 鋼鉄の剣

 鋼鉄製の剣で物理攻撃力5。耐久値も高く300。


・左手装備 鋼鉄の盾(魔銀塗布)

 鋼鉄製の盾に魔銀でコーティングした物。魔力を高める効果が付いたが、反面物理防御力や耐久値は下がっている。物理防御力4、魔法攻防力1.耐久値は250。




改造費等諸々込みで二万デナー(端数は割り引いてもらった)のお買い物。


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― 新着の感想 ―
[一言] このゲームのことだからテイムモンスターも復活不可なんじゃないかと思ったけど安心 言ってしまえば傷薬 固定回復と割合回復、どちらにも利点はありますよね さらっと2万デナー(日本円換算20万…
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