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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十二章 続『水卿エリア』での冒険
701/933

701 舞台は首都へ

本日二回目の更新です。

 ピスケス領から首都近郊の大公家直轄領へと移ったからなのか、それとも仮忍者たちを捕らえたからなのか、首都アクエリオスへと向かう旅の最終日は魔物の襲撃が一度も発生することなく過ぎ去ることになった。


 まあ、両方とも正解ということなのだろうね。首都の近くで大量の魔物に襲われた、などということが発生すれば大騒ぎになるのは目に見えている。

 間違いなく犯人探しと事態を引き起こしてしまった責任の追及が、おそらくは国主導で行われることになると思う。


 そしてタカ派の中心貴族は軍閥だ。どこまで牛耳ることができているのかは知らないけれど、首都近郊の警備にも口を挟んでいるはず。

 つまり、ここで魔物襲撃などを起こすということは、普段から魔物退治の仕事ができていないと――真実かどうかは別として――暴露するようなものなのだ。

 その上、犯人探しの方も厳しく行われる可能性が高いから、そちらの方面からも悪事がバレてしまうことになる。いくら脳筋思考が多いタカ派とはいえ、これだけのリスクを背負うことはできないと判断したのではないかな。


 このように手出しができない場所だったことに加えて、仮忍者たち手出しをする人間もジェミニ侯爵に捕らえられたことでいなくなってしまったと考えられる。

 こちらの理由は簡単で、仮に大勢の実行者を準備したところで襲撃の本体となるのは魔物であり、操るためのアイテムが必要不可欠となる。限定的とはいえ魔物を操ることができるなどという凶悪なアイテムだ。大量に調達することはできなかったのではないかな。


 と、以上のことからボクたちを含むジェミニ侯爵一行は無事に首都アクエリオスへと到着することができたのだった。

 もっとも、何のトラブルも発生しなかった訳でもない。首都へ入る際、わざわざ侯爵が「道中の警護のために雇った」と口添えしたにもかかわらず、番兵たちがしきりと冒険者メンバーの身元を調べようとしてきたのだ。

 しかも門の外に待たせたままで。入口こそ貴族と平民に分かれていたので、これが元で大渋滞を起こすということはなかったのだが、その様子は並んでいる人々から丸見えである意味晒し者状態となっていた。

 要するに、ここにもタカ派の息がかかった人間がいたということだね。


 ところで、これって場合によっては手討ちにされてもおかしくないレベルの不敬だったりします。

 リアルの現代ニポンで例えるならば、大企業の重役に向かって一社員が「あなたの言うことは信用できない」と公の場で確固たる理由もなく言い放ったようなもの、ということになるかな。


 侯爵本人も顔をしかめて不快をあらわにしていたのだけれど、それ以上に彼の部下たちの怒り度合いがとんでもないことになっていた。

 特に番兵のリーダーらしいやたらと強硬な姿勢を見せていた人物が、


「最近は貴人の護衛と称して育ちの卑しい者が入り込もうとする事件が増えていまして」


 とそれらしい風を装った嫌味を口にした時などは、いつ誰が切りかかったとしても不思議ではないほどの殺気を放っていた。

 もしかすると、そうやって暴発させることこそが狙いだったのではないか?と考えてしまうほどだったよ。言った本人の額に大量の冷や汗が浮かんでいたので、どうやら限度を間違えてしまっただけだったみたいだけれど。

 最終的にはジェミニ侯爵の、


「それでは出入りをしている全ての貴族に対しても同様のことをしているのか、城に確かめさせてもらおう。なに、文書での正式な問い合わせという形を取らせてもらうだけだ。職務に忠実で後ろ暗いことがないのであれば堂々としているがよい」


 この言葉で引き下がることになっていた。

 でもそこで取り下げるということは、後ろ暗いところがあると自白しているも同然なのですが……。きっとそこまでは頭が回っていないのだろうねえ。

 侯爵の方は平民の列に並んでいる人たちにまでしっかり聞こえる声量だったので、見聞きしていた連中はきっといい感じに酒の肴として、この出来事を首都中に広めてくれることだろう。


 さてさて、一連のジェミニ侯爵への言い掛かりはある意味きっかけで、番兵たちの本当のターゲットはボクたちだったと考えるのが妥当かな。

 もしも侯爵が向こうの顔を立てるなどして譲る態度を見せていれば、国外出身であることなどを理由にボクたちの身柄を拘束するつもりだったと思われます。


 もしくは仮忍者たちの奪還だろうか。このままジェミニ侯爵の屋敷などの手が出せないところに連行されてしまっては、どんな情報が洩れるか分かったものではないからね。

 タカ派にとっては死活問題となってしまう訳で、そのため急遽アクエリオスの入り口で奪還を試みたのかもしれない。

 碌に準備もできずに応対する必要に駆られたとなれば、あの下手な検問にも一応は納得できる、かな。


「やれやれですわね。まさか侯爵様を相手に難癖をつけてくるとは思いもしませんでしたわ」


 クンビーラ公主の血筋であり、封建社会の身分差制度の中で生きてきたミルファからすれば、彼らの態度は考えられないような暴挙だったようで。


「それだけ向こうも追い詰められている、という証なのかもしれません」

「そうだね。しかし全部ではないのだろうけど首都の武力を握られているのは痛いね。場合によっては独断で部隊を動かすくらいのことをするかもしれない」


 もしかすると、眠っている間にジェミニ侯爵の屋敷がタカ派の部隊に取り囲まれている、などということが起きてしまう可能性もありそうだ。


「まさか!?いくら何でもそこまでは……」

「ボクもそう思いたいけどね。ただ、それしか方法がないと追い詰められてしまえば、ないとは言い切れない」


 最悪の展開はタカ派によるクーデターの勃発かしらん。あちらの関係者が門番として配置されているなら、首都の内部に戦力を呼び込むのは容易いだろうしねえ。

 対する『水卿公国アキューエリオス』の上層部だけれど、首都全体で籠城戦をする計画はあっても、城下と分断されて城だけで立てこもる展開は想定すらしていないだろう。

 いざ、実行されてしまうと成功してしまう確率は意外に高いような気がする。


「侯爵邸に到着したら、すぐにでもジェミニ侯爵と話し合っておかないと」


 ミルファではないけれど、「やれやれ……」と言いたい気分だわ。

明日も 6:00と18:00 の二回更新です。

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