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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十二章 続『水卿エリア』での冒険

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678 訓練所で行われていたのは?

 助けてもらったからにはお礼をしなくてはいけない。


「えーと、訓練場にいますからあのお二人が出てきたら連絡ください。それと、ドロップアイテムの売却は帰り際でもいいですか?」

「それで問題ないわ。それよりも、変なのに絡ませてしまってごめんなさいね」

「いいえ。油断しきっていたボクの方にも非はありましたから」

「そ、そう。でも、今後はこんなことが起こらないように、しっかりと支部長とも話し合っておくから」


 あらら?「気を緩め過ぎていました。失敗しっぱい」と言ったつもりが、「アウェーだから信用できないなあ」にすり替わっている!?

 さっきのことで周りにいた人たちを責めるつもりは全然まったくさっぱりないのだけれど……。

 無碍(むげ)に扱われたくはないけれど、やたらと慇懃(いんぎん)な扱いをされるのも居心地が悪いのよねえ。

 ボクたち同様に訓練場へと向かう人の流れに乗りながら、ジェミの街にいる限りこの立場は変わることはないのかな?とぼんやり考えていた。


 奥という言い方をしたけれど、正確には下ということになるのだろう。ジェミの冒険者協会は地下に広大なスペースの訓練場を保持していた。

 ざっと見た感じでも学校の運動場くらいの広さはありそうだ。壁際ギリギリまで使えるなら四百メートルのトラックも描けそう。


 これだけ大きな施設を保有する代わりに、いざというときには市民の避難場所として利用することが義務付けられているのだとか。


 そして現在、その広い空間にはたくさんの冒険者たち、と協会職員の方々が集まっていた。一部は屈伸(くっしん)などの準備運動をしていたけれど、大半はこちらへと視線を向けている。

 高等級な歴戦の猛者たちも含まれているためなのか、圧が半端ないです。

 全部投げ出して逃げ出したくなるが、そういう訳にもいかないのよね。だから思わず逃げ腰になってしまうくらいは許して欲しいところです。


 ジェミの冒険者協会で、どうしてボクたちがこんなにも丁重に扱われているのか?

 どうしてまだ日の高い時間であるにもかかわらず、こんなにも大勢の冒険者たちが協会の建物に集まっていたのか?


 その答えがこれ(・・)だ。


「みんな、出てきてもいいよ」


 うちの子たちが現れた瞬間、歓声が沸く。

 ライブ会場とかこんな調子なのかな。うるさすぎて耳が痛くなるレベルなのだけれど……。


 以上の様子から分かってもらえたと思うが、一応説明しておこう。最初に挨拶に来た時のあれやこれやで、うちの子たちと座敷童ちゃんが冒険者並びに職員たちのアイドルになってしまったのだった。

 つまり、この世界でも「カワイイは正義」だったということだ。まあ、制作と運営に携わっている人の大半がリアルニポン人なのだから、さもありなんという話だわね。


 一番人気は新参のタマちゃんズだ。老若男女に関係なくフリーダムな子猫たちの動きにデレッデレになっていますな。たまにデレてすり寄ってきたり抱っこをせがんできたりするのがたまらないそうで。

 うん。気持ちはよく分かるから鼻息荒く語るのは止めて。怖いよ。


 フリーダムの代名詞のようなタマちゃんズだが、それ以上に自由気ままに動き回っているのが翡翠ひよこだった。まったく姿を見せない日があったかと思えば、子猫たちに紛れて冒険者たちにご飯をたかっている日もあった。

 今日は……、アフロヘアーな冒険者の頭上で熟睡しているね。巣のような安心感を覚えるのだろうか?


 座敷童ちゃんはお姉さま方に人気だね。今は数人とお手玉で遊んでいる。

 そんな彼女たちを少し離れた位置から数人の男性陣が羨ましそうに見つめていたのだが、お姉さま方の鉄壁のガードを越えることはできないもよう。

 座敷童ちゃんや街の女の子たちの安全のためにも、彼らにはずっと紳士のままでいてもらいたいものですね。


 さすがにアコは出られないし公表することもできないので『ファーム』内に待機したままだった。が、時折配下となったイフリートの幻影を出現させては冒険者たちを驚かせる、といういたずらをしていた。

 あの子だけ仲間外れというのも可哀想だから大目に見ているけれど、冗談で済む範囲に留めておいて欲しい。


 そんなまったり組と対照的なのがエッ君、リーヴ、トレアだ。三人は冒険者たちを相手にそれぞれ自分の得意分野で勝負したり模擬戦を行ったりしていた。

 街の外では魔物を相手にあれだけ動き回っていたのに、元気だねえ。これが若さというものなのでしょうか。


「リーヴの堅い守りにムキになって攻撃しているあの人は要注意だね」

「座敷童ちゃんにこっそりと近付こうとしている者がいますわ。……あら、女性職員の肘がみぞおちにめり込みましたの。お手玉の失敗を装いながら仕留めるだなんて、彼女、なかなかやりますわね」

「タマちゃんズを愛でている人たちの中に怪しい動きをする人はいないようです。まあ、全員挙動不審だと言ってしまえばそれまでですが」


 ボクたちはというと、テイムモンスターたちの心配をしている親バカを装いながら、不審者やタカ派を始めとした敵対派閥の密偵が紛れ込んでいないかをチェックしていた。

 今のところ成果は皆無なのだけれどね。だって、疑い始めるとネイトが言ったように全員が挙動不審で怪しく思えてしまうのだもの。

 冒険者協会側のセキュリティも働いているので、そう簡単には入り込めたりしないこともあって、格好だけの監視になりつつあった。


「しまった!出遅れたか!?」


 バタンと大きな音を立てながら背後の扉を開けて入ってきたのは、ジェミの冒険者協会のトップである支部長だった。

 おや、珍しい。いつもはいの一番にやって来ていてタマちゃんズと(たわむ)れていたというのに。そして最後の最後まで居座るのも彼である。

 支部長がそれでいいのか?という疑問は持つだけ無駄ですよ。


 ちなみに、他の職員さんたちは日替わりや時間ごとに交代でやって来ています。全員がいなくなったら業務に支障がでるどころか、警備面でも困ったことになってしまうからね。

 『冒険者協会』の建物というのは、貴重なマジックアイテムは設置されているし、大量のお金も保管されている街の重要拠点の一つなのですよ。


 その管理を任されているはずの支部長は、子猫たちにつっけんどんな対応をされて凹んでいますがね。


 うーむ……。いろいろと心配になってしまう光景だわ。


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