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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十二章 続『水卿エリア』での冒険
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674 裏取りや根回しには時間がかかるものです

 ストレイキャッツに懐かれて以降の出来事をダイジェスト風にお送りいたします。


 まず一番聞きたいだろうストレイキャッツをテイムしたかどうかなのだけれど……。

 ええ。当然のごとく仲間にしましたともさ。例えエンゲル係数が膨れ上がることになったとしても、ボクにはあのつぶらな瞳での訴えを拒否できるような強靭な心は搭載されていませんでしたので。


 念願の「ちみっこモフモフ」だったこともテイムの後押しになったことは言うまでもない。が、それ以上にパーティーメンバーやうちの子たちからの「テイムしろ」圧力が半端なかったのよね……。プレイヤーよりもモフモフ欲求が高いとか、割と本気でこの世界の人たちのことが心配になってしまった。


 名前はニポンの古式ゆかしい猫の名であるタマにちなんで、「タマちゃんズ」とした。それぞれの名前については今後考えていく予定です。


 ちなみにテイムモンスターではあるけれど、ボクの中ではどちらかと言えばペット枠なので戦闘に参加させる予定はないです。

 さらにNPCたちからも恐れられている存在であるため、基本的には『ファーム』の中で座敷童ちゃんたちと一緒にのんびり過ごしてもらうつもりだ。


 え?アコの迷宮?

 ……何のことだか分りませんね。


 さて!その後ですが、近くの村――元々宿泊する予定だった村だよ――へと移動し、警備兵団に事情を説明して気絶したままの男たちの身柄を引き渡そうとしたのだが、ボッターさんが言っていた通りに罪人や容疑者を収容できるような施設がなかった。

 結局話し合いの末、ボクたちが向かうついでに領都ジェミへと移送することになり、一晩だけの一時預かりとなったのだった。


 ただ、不幸中の幸いというべきか、村の警備兵団は領都から派遣されているジェミニ領の軍人たちだったため、ボクたちに先んじてジェミの警備兵団と領主のジェミニ侯爵へと説明を行ってくれることになったのだった。


 そして翌日、早朝に村を発ったボクたちだったが、昨日とは異なり領都ジェミへの旅路の後半はこれといった問題が起きることもなく、わずか半日ほどで終わりを告げることになる。

 ネムタ草を原料にした昏睡薬によって男たちが延々眠り続けていたから、という部分もあるだろう。

 平和って素晴らしい。


 と、のんきに考えられていたのもそこまでだった。

 ジェミの入口に到着すると、警備兵団の人に馬車へと放り込まれ、あれよあれよという間に侯爵と面会することになってしまったのだ。

 眠っている男たちを引き取ってもらえれば、それだけで良かったのになあ……。

 もしかすると、ニミの街のロナード代官から何かしらの報告が届いていたのかもしれない。


 ジェミニ侯爵ですが、さすがは大国『水卿公国アキューエリオス』の動向を左右させられる権限を持った『十一臣』の一人というべきか、とっても威厳のあるお人、というのが第一印象だった。

 えー、まあ、つまり、お顔が(いか)ついのですよ。


 実際に言葉を交わしてみての印象は、現場の意見をないがしろにしない人、というものだった。

 いやあ、リアルでもそうだけれど立場があって権力を持っている人の中には、現場の状況や状態を一切考慮しないで「自分の指示や采配通りに動け」と平気で言っちゃうような人もいますので。

 まあ、ジェミニ領自体が国境に面していてなおかつ――表向きには――陸路としては唯一の通商路がある最前線の現場のようなものだからね。

 領主の彼が実践主義、現場主義となるのはある意味当然なのかもしれない。


 そんなジェミニ侯爵との話し合いの結果、ストレイキャッツの攻略法を発表する権利を譲ることにした。もちろんタダではなく、けしかけてきた男たちの処分とタカ派によるちょっかいへの対処が条件だ。

 歴史に名を刻む絶好の機会だっただけに、ミルファやネイトが渋い顔をしたりボッターさんから考え直すように言われたりもしたのだけれど、身の安全には代えられないからね。

 他にも『冒険者協会』へのけん制とかクンビーラばかりが有名になることを防ぐといった狙いもあるのだけれど、詳しい話はまたの機会にということで。


 一方、ジェミニ侯爵は名誉と一緒に面倒を押し付けられた形となるのだが、「人の領地で好き勝手やっている連中に(きゅう)をすえる良い機会になるだろう」と獰猛な笑みを浮かべていました。

 タフ要塞へと派遣される兵士には血の気が多い荒くれ者が多いらしく、器物破損や住民への暴行などがたびたび発生しているのだとか。

 その都度侯爵からタフ要塞へと苦情を入れたり謝罪の要求を行ったりしてきたのだけれど、「いざというときに守ってやるのだから」と上から目線でまともに取り合おうとすらしなかったのだそうだ。


 だから今回の一件は、タフ要塞に詰める兵士たち、さらにはタカ派の貴族たちに痛撃を与える絶好のチャンスになる、と考えたみたいです。

 このあたりの盤上すべてを見通す目というか、不利を有利に変える手際の良さは、さすがロナード代官の上司だと納得してしまうものがあったね。


 会談は問題なく終わったが、それで「はい、さよなら」とはいかないのが、お偉いさんの大変なところだ。

 話し合ったことの裏を取ったり、あちらこちらに根回しをしたりする時間が必要ということで、ボクたちはそのまま領主の館に留め置かれることになってしまった。

 突如降って湧いた大物との繋がりに、ボッターさんだけは大張り切りで担当者各位へと売り込みをしていたけれどね。


 幸いにも軟禁されて監視される生活は一日だけで済んだので、うちの子たちが暇を持て余すようなことはなかった。

 スキップ機能を併用して寝て過ごしていたことが、あちらの警戒心を下げることに繋がったみたい。

 だらけていただけなのに、らっきー。


 ちなみに、ミルファとネイトは館に置かれている美術品を見学して回っていたそうだ。さすがは『水卿公国』の重鎮、いたるところに無造作に置かれている物ですら年代物の貴重品だったらしい。

 技能の〔高等教養〕に加えて〔目利き〕を持っているミルファの見立てなら間違いなく本物だったのだろうね。その証拠という訳ではないけれど、ミルファの審美眼に感心したジェミニ領主が、美術品を収蔵している部屋を特別に開放してくれたのだそうだ。

 なにそれ、ちょっと羨ましいんですけど。まあ、ボクが行くとなるとうちの子たちも参加すると言い出したかもしれないので、いずれにしても美術品見学はできなかった可能性が高そうだわね。


 そんな調子で丸一日を休養に充てることができたボクたちは、都合二泊した館を退去して、ジェミの街へと繰り出すことになったのだった。


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