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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第四十一章 『水卿エリア』での冒険
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657 さっそく動きが?

今日で本作の連載開始から丸三年となりました。

途中、休載したり連載の頻度が下がったりしていますが、完結できるように頑張りますので引き続きよろしくお願いします。

 やってきましたお隣の国、『水卿公国アキューエリオス』。

 その最初の街であるニミの街へと立ち寄ったボクたちだったが、メインのお仕事である「ブラックドラゴンの話を広める」ことはしない方針となった。


「そっちは俺が顔なじみに会うついでにこっそり広めておくから、嬢ちゃんたちは食料の調達とか旅の準備を頼むぜ」

「了解でーす」


 そんなわけで早速市場(バザール)へゴー。

 うちの子たち並びに座敷童ちゃんは残念ながら『ファーム』で待機となる。目立つみんなを連れていては、余計な面倒ごとを引き寄せかねないからね。アコが色々やってくれているそうで、『ファーム』の中からでも外の景色を見ることは可能らしい。

 ……あの子とは一度詳しく話し合っておいた方がいいかもしれない。


 市場は大きく人の出入りも多くて活気があった。が、クンビーラのあれを知っている身としては少しばかり物足りなく感じてしまう。


「なるほど。確かにこれはクンビーラの下位互換だわね」

「決して劣っているようには思えないのですが、なぜか今一つのような……?」

「そうですの?」


 クンビーラ出身のミルファが一番よく分かっていなかったが、まあ、彼女はこれでも特級のお嬢様だからね。いくら地元でも余所者の出入りも激しい市場にはほとんど出入りさせてもらえなかったのだろう。


 ちなみに、物足りなく感じたのは純粋に規模がクンビーラに比べると小さかったことに加えて、出入りしている人の大半がこの街の住民であるせいだと思われます。

 要するに雑多さが少なく上品な感じがするのだ。別にそれが悪いという意味ではなく、単にボクたちがクンビーラの雑然さに慣れ親しんでいたというだけのことだ。


「領都のジェミまでは途中の村で一泊して、何事もなければ次の日の夕方には到着できるんだったよね?」

「ええ。大人の男性の足でなら余裕をもって二日目の日の高い間に辿り着けるという話でしたから、早朝に出発するようにすれば荷馬車の護衛があるとしても夕刻には着くはずですわ」

「その村で買い足すこともできるでしょうから、当面は三日分の食料を買っておけば良さそうですね」


 経験則から導き出される距離や所要時間というのは、案外合っていたりするのだ。

 まあ、現代ニポンで育ったボクとしては「正確な地図寄こせ!」と言いたくなることもあるけれどね。そちらはミニマップさんに頑張ってもらうことにするよ。


 余談ですが、このまま領都へ向けて北上を続けるボクたちとは違い、別働で『水卿公国』入りを果たしているだろうクンビーラの冒険者並びに商人さんたちは、ニミの街以降はそれぞれ領内の東と西に分かれて進んで行くことになっているらしい。

 ブラックドラゴンの話を広めるのと同時に、隣の領――どちらも『風卿エリア』と国境が接している――の動きも探る予定とのことだった。


 特に東のタウラス領の領主はタカ派に分類こそされていないが、極めて親しい関係にあるそうだ。

 その上ジェミニ領に隔意を抱いているという噂まである。なんでも「同じように他国と国境を接しているのに、ジェミニ領だけが物流の窓口になっているのはズルい!」ということらしい。

 まあ、国防のための労苦は等しいだけ背負わされているのに、ジェミニ領だけが人や物の行き来によって利益を上げていれば、文句の一つくらい言いたくなってしまうのかもしれない。


「ですが、そんな文句を言っている裏で密輸に精を出していて、それで得た金で勝手に独自の軍備を増強しているという噂もありますね」

「他にも多数の後ろ暗いことに手を出していて、それが原因で大公家から目をつけられているらしいですわ」

「ボクの同情を返せ!」


 ぐぬぬ……。まさかただの悪党っぽいというオチが付いてくるとは。

 とにもかくにも、こうした噂話があるから真偽のほどがどの程度なのかを確かめておくべきという判断されたみたい。エルってば大出世だね。


 食料に消耗品――ご飯を作る際に使う炭や、火を焚いておくために不可欠な薪など――と旅に必要な物を買い込みながら、変わったものや面白そうなものがないか市場の中を見て回る。


「……もしかして、誰かに後をつけられてる?」


 技能を使うまでもなく、女の子としての本能的な何かがそう訴えかけてきていた。

 客として呼び込もうとしている眼差しでもなければ、異性へ向けられたぶしつけな視線でもない。強いて言うなら見定めようとしている感じだろうか。

 ただし、商品価値を計るようなとっても冷ややかなものだったけれどね。


「リュカリュカも感じたということは、わたしの気のせいではないようですね」


 セリアンスロープの特性もあってボクより数段敏感なネイトも、やはり視線を感じ取っていたらしい。

 一方でミルファはその頭上に(ハテナマーク)を浮かべていたが。基本クンビーラのお城で生まれ育った生粋のお嬢様だからね。他人から見られるということに慣れてしまっている部分があるのだろう。

 だけど魔物とかが発する敵意や殺気などにはしっかり反応できるのよね……。お嬢様ってなんだっけ?


「食料を買い込んだあたりから子どもが着いてきているのですが、そちらは恐らくかく乱のための囮でしょう」

「小銭を握らされた孤児ってところかな。誰に命令されたのか、どんなやつだったのかを尋ねるくらいはできるかな?」

「その代わりに本命からは警戒されることになりましてよ。ここはあえて泳がせて、向こうの出方を探るのも手ではありませんこと」


 ふむふむ。ミルファの言うことも一理ある。それにこの段階でボクたちを見張る相手となると、なんとなく予想がつくものね。

 一つはタカ派の一味、もう一つがジェミニ侯爵の配下といったところか。

 ぼろが出てしまうかもしれないため、こちらはかなり低い可能性だとは思うけれど、街に潜んでいるクンビーラ側の諜報員という流れもないとは言い切れない。


 ひとまず相手の様子を見ようと買い物の続きへと戻るボクたち。

 ところが予想外の人たちに阻まれることになる。


「クンビーラから来た冒険者というのはお前たちだな。我々はニミの街及び国境検問所の警備兵団である。確認したいことがあるので大人しく同行してもらうぞ」


 ボクたちを取り囲んだ屈強な体格をした複数の男性たちの一人が、静かにそう名乗ったのだった。


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