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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い
616/933

616 vs イフリート 後編

 サモンモンスターは召喚の最中、召喚主との間に魔力の繋がり(パス)ができる。

 サモナーとしての経験が増える、つまりは上位職にクラスチェンジすると、これを使ってMPのやり取りができるようにもなるそうです。

 テイマーとの差別化を図るための要素の一つとも言えそうだね。


 今回の場合は演出的な面もあるのだろうが、イフリート氏がそのパスを強引に開いて召喚主のローブの人物からMPを奪った、ということになる。

 もちろんプレイヤーにこんなことは発生しないようになっているのでご安心を。

 以上、運営から付け加えてくれとお願いされた説明でした。


 そしてこの展開はボクたちが狙った通りのものだった。

 まあ、思い付いたのはつい先ほどのことなのですが。


 極端な話イフリート氏とローブの人物のどちらが脅威かと言えば、圧倒的に後者だ。『土卿エリア』で遭遇したそっくりさんの方は、おじいちゃんたちですら楽に勝てる相手ではないと言っていたくらいだからね。

 どうやら同一人物ではなさそうではあるのだけれど、格好的に同格だと見て間違いはないと思う。


 つまり、これまではミルファとネイトが押さえてくれていたが、それはボクたちのことを格下だと侮って本気を出していないだけという可能性がとっても高く、「くっくっく。やつは我らの中では最弱」ということでもない限り、ボクたちが全員全力全開で戦ったとしても勝つのは至難の業ということになりかねないのだ。


 だが、しかーし!

 相手を弱体化させることができるのであれば、また状況は変わってくるというものでしょう。


 ローブを着込んでまともな得物の一つも持っていないことから、あいつは魔法主体の戦い方をすると考えられる。

 実際イフリート氏を呼び出しても疲れた様子の一つも見せていなかったことから魔力、MPが高いのは間違いない。それこそ空っぽに近かったイフリート氏のMPが八割方回復するほどに奪われても、極端に動きが鈍ることがないくらいには。


「わーお!あれだけMPを吸い取られても動き回れるとはビックリですよ。まあ、これで足りないならもっと吸い取ってもらうだけでけど」


 イフリート氏は確かに強敵だが、元から威力重視で命中精度が甘いという欠点を持っていた。

 今はそれに加えて挑発で頭に血が上っており、攻撃の大雑把さに拍車がかかっていた。要するにかわすことがそれほど難しくなくなっていたのだ。


「鬼さんこちら。ほらほら、こんな風にちゃんと狙って。【アクアドリル】!」

「グワッ!?ち、ちくしょうめ!!」


 こうやってちまちまと反撃する余裕すらあったほどだ。

 うちの子たちを下がらせて正解だったね。元々はイフリート氏の凶悪な範囲攻撃を警戒してのものだったのだけれど、もしも一緒に戦っていたら呆気なく勝利してしまい、MP吸い取らせ大作戦は失敗に終わっていたことだろう。


「コソコソと逃げ回りやがって!もっとだ!もっと俺様に力を寄越せええええ!!」

「や、止めんか!そうやってお前を怒らせるのがあちらの策だと分からんのか、このバカ大精霊め!」


 恨むなら大精霊だから使えると考えた自分自身の浅慮を恨むことだね。せいぜい外部充填装置の役割を果たしてくださいな。

 もっとも、当たらなければどうということはないので、全部無駄になるだけという結果に変わりはありませんがね。


「これならどうだあ!」


 少しは頭を使ったようで、ボクを中心とした半径数メートルの範囲に|火の針《【ファイヤーニードル】》が降り注ぐ。

 が、甘い。


「【アクアボール】!」


 放った水の球が直撃、破裂することで火の針の大半を消し飛ばす。残ったものもボクからは離れた地面へと突き立ったところですぐに消えてしまった。

 火は水に弱いという属性間の相性に加えて、ニードルとボール、そしてドリルの三すくみの関係を用いて、強引に安全地帯を作り出したという訳だ。


「避けられなくても迎撃することはできる、ってね」

「そ、そんなバカな……」

「あれあれー?火の大精霊なのに、こんな単純なことも分からなかったのかな?もう一度サラマンダーからやり直すべきなんじゃないの、トカゲちゃん」

「く、くそがああああ!!」


 自棄になって叫ぶイフリート氏を横目に、ローブの人物とそいつに牽制を続けるミルファたちへと視線を向ける。

 ふむふむ。継続的に大量のMPを吸い取られることで、ようやくローブの人物の動きにも精彩が欠けてきたように思う。ネイトの魔法で強化されている部分もあるのだろうが、時折ミルファの攻撃がそのローブを小さく切り裂いていた。


 そろそろ潮時か。

 パスができているということはイフリート氏のMPをローブの人物が奪うことも可能だということだ。これまではハイテンションだったり激昂していたりすることでイフリート氏側が上位にいた。

 が、ボクにいいようにあしらわれ続けたことで意気消沈し始めていて、その関係すら逆転する可能性が見え始めていた。


 イフリート氏を使えないと切り捨てて、その残ったMPを回収されてしまってはこれまでの苦労が水の泡……、とまでは言わないが、一部は無駄になってしまう。

 そろそろ本格的にこの舞台から退場してもらうべきだろうね。


「【アクアニードル】!」

「ぐうっ!?」


 さっきの仕返しとばかりに、逃げられないように範囲攻撃魔法で残りわずかなHPを削っていく。身動きが取れないのをいいことに素早く接近して龍爪剣斧を構えるボク。


「これでお終い!」


 できれば二度と出会わないことを祈りながら、斧刃と剣身で切り裂く。


「ぎゃああああ!?」


 HPがゼロになり召喚が維持できなくなったイフリート氏が消え去っていく、はずだった。


「い、嫌だ!俺はまだ消えたくない!」

「なんだと!?まさか私を道連れにしようというのか!?……ええい、お前の存在を保っていられるほどの魔力を持つ者などいるはずがないだろう!」


 なんと執拗(しつよう)にこの場に残ろうと、召喚主からさらにMPを吸い取ろうとし始めたのだ。


「くっ!このままでは私の存在まで危うくなってしまう!意識をなくして凶悪化して暴走するかもしれないが仕方がない。イフリートとの召喚契約を解除する!」


 そして生命の危険を感じたらしいローブの人物が召喚契約を解除する。

 うん。まあ、それは一旦置いておくとしまして。


 ……なんだかものすごく不吉な台詞を口走っていませんでしたかねえ!?


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