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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十九章 次なる戦い
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599 見せる理由

粗筋にも書いたように、しばらくは週三回の更新となります。

 リアルに戻ったボクは日曜日のお昼ご飯を優雅に食べ……、ていては年末の大掃除に駆り出されてしまいそうなので、早食い選手権に出場する選手のような勢いであっという間に完食して、急いで自室に帰還した。

 うう……、休みの日の昼食くらいゆっくり食べたいです。

 ……いや、まあ、家の手伝いから逃げているボクにも責任はあるのだけれどね。


 そんなリアルの事情は一旦置いておきまして。ログインしてゲームの世界へ向かいます。

 数時間の休息を経て目覚めると、夕方と呼ぶには少し早いくらいの時間となっていた。おやつの時間を過ぎたくらいかな?などと考えていると、お腹が急に自己主張を始める。

 そういえば何も食べないまま眠ってしまったのだったね。


 空腹度を確認してみると、行動に支障が出るほどではないものの、それなりに数値は上昇していた。

 断食をしている訳でもなければダイエットを敢行している訳でもないので、ミルファたちが起きたところで食事にするとしよう。


 さすがはゲームということか、その後数分も経たない間にミルファもネイトも起き出してくる。

 リシウさんたちに休ませてもらったお礼を告げてから、人気のない方へと移動します。エッ君たちを呼び出すためであり、あまり人に聞かれたくはない話をするためだ。

 まあ、リシウさんの部下の誰かには監視というか盗み聞きをされてしまうのだろうけれど、そこは必要経費と言ったところだ。

 彼らであればその他有象無象の連中が近寄ってこないようシャットアウトしてくれるだろうからね。


 余談だけど、子どもたちのお勉強はまだ続いていました……。


 集落の外れ、さらにリシウさんたちの馬車で視線が遮られるような場所へと移動したところで『ファーム』からうちの子たちを全員呼び出す。


「わたしたちまで出てきて良かったのですか?」

「いざという時のための切り札だったのでしょう?」


 呼び出されたことが意外だったのか、リーネイとチーミルがそれぞれ疑問を口にする。


「二人の言う通りなんだけど、新しい子との顔合わせくらいはしっかりやっておいた方がいいかなと思って」


 ニッコリ笑いながらそう言うと、ミルファとネイト、チーミルとリーネイの二組の主従コンビは訝しげな表情で顔を見合わせたのだった。

 酷いなあ、嘘は言っていないのに。……建前なだけで。


 本音というか狙いの部分が何かと言いますと、リシウさんたちにこちらの手札をわざと(・・・)晒すことにあった。


 迷宮を攻略してアコをテイムしたことで緋晶玉を産出する迷宮を消滅させることはできた。これまでにどれだけの量が採掘されていたのかは不明だけれど、『土卿王国』の空を征く船などは緋晶玉を燃料やエネルギー源に考えていた節があるから、少なくともその研究は頓挫(とんざ)したり停滞したりすることになるはずだ。


 このように『火卿エリア』における一番の大仕事は終わったように思えるのだけれど、ここにきて問題が一つ。

 内乱状態になっているからなのか、現在『フレイムタン』の国土から外に出ることが非常に難しくなっているようなのだ。

 迷宮攻略中にエルーニから聞いた話によれば、「国境沿いの領主がイチャモンを付けれんくらいお偉いさんからの推薦状でものうたら、通行手形の発行はしてもらえんやろうな」とのこと。


 さて、本人がポロリとしてしまった情報の通りであれば、リシウさんは皇帝に近い上位貴族出身とのことだった。

 つまり、国境沿いの領主が文句を付けられないくらいのお偉いさんである可能性があるのだ。

 おーう。これはこれはもしかしなくても仲良くなっておいて損はない相手ではないでせうか。


 逆にあちらの面倒事に巻き込まれてしまう可能性がとっても高いのが難点なのだけれど……。内乱状態の『火卿帝国』を再統一するという展開ともなると、時間的な都合もあってボクたちでは手が出せないと思うのです。


 ゲーム内時間のスキップ機能を使えば、歴史を舞台にしたシミュレーションゲームの真似事はできるだろう。が、それだとゲーム内の時間全てが経過していることになるので、『火卿帝国』以外の場所にかかわることができなくなってしまう。

 当然ワールドイベントも勝手に進行することになり、最悪は浮遊島が復活して世界崩壊エンド、となる可能性もあるのだ。


 六番目とはいえ、ジオグランドの王子様を張り倒したり、あちらの目的であったらしい緋晶玉の山を魔法の暴発で消し飛ばしたりと、『土卿王国』の特に中央からは睨まれているどころか敵対分子として認定されているかもしれない。

 それに対抗するためにも強力な後ろ盾が欲しいところではあるのだけれどね。

 しかしそれにこだわった結果、肝心のイベントが勝手に進行してバッドエンドになってしまっては本末転倒もいいところだ。


 理想としては、ちょっぴり厄介な問題の解決に助っ人として参戦することかな。

 その功績が認められて、国境を越えるための推薦状を貰うことができれば万々歳だわね。


 ええ、ええ。そんなに都合よく事が運ぶはずがないってことくらいは、よく分かっていますともさ。

 恐らくはちょっぴりどころではない面倒事に巻き込まれることになるのだろうね。だからこそ無茶な相手にぶつけられたりはしないように、こうしてあらかじめこちらの全戦力を見せている訳です。


「それより、まずはご飯にしようか」


 そう言ってから、アイテムボックスに入っていたお弁当をみんなに渡していく。

 これもまたエルーニに地下十階まで持ってきてもらった物の一つだったのだが、まさか迷宮攻略後に食べることになるとは思ってもみなかった。


「お腹が空いたままだと体も動かないけど、頭も回らないからねー」


 本格的に勉強する時には、満腹になり過ぎるのも要注意だけれど。

 テスト勉強とかをしようとご飯の後に机に向かったまでは良かったが、気が付いたら眠っていた、なんて失敗の経験は誰にでもあるはず……!


「リュカリュカ……。お弁当を配りながら百面相をするのは止めて下さい」

「うえっ!?そこまで変な顔をしてた!?」


 いやいや、そんなことはないでしょう?そう思ってうちの子たちを見たところ、揃いも揃って明後日の方へと顔を向けていたのだった。


「やっぱり自覚なしでしたのね」


 そして止めとなるミルファのこの台詞ですよ。

 その後、まことに不本意ながらみんなから可哀想なものを見る目を向けられながらの食事となったのだった。


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