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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十八章 迷宮攻略中

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589 ギミックかトラップか

 HPゲージが全損してキメラが倒れたと同時に、ボクたちもまた張り詰めた糸が切れたかのように床へと崩れ落ちていた。

 いやはや、これまで蛇使いと彼の配下の蛇どもだの、ドラゴンのゴーレムだの、番のマーダーグリズリーだの、ブラックリンクスだのと、ボスやイベントモンスターとは何度か戦ってきたけれど、今回ほどギリギリで敗北が真後ろにまで迫っていたことはなかったと思う。


 うん?ブラックリンクスはボスではなかったのだったかな?……まあ、いいや。

 ともかく、それくらい今回の戦いは危険なものだった。あとほんの少しのミスがあれば、確実に終わっていただろう。

 詩的な言い方をするならば、死神がその大鎌を振り下ろす直前だった、といったところかな。

 まあ、何はともあれ全員無事でいられて良かったよ。


 ところで……。倒したはずのキメラなのだけれど、未だにその――言い方がちょっとアレですが――遺体というか骸が消えずに残ったままになっているのですが。

 解体の設定は、魔物を倒すだけで獲得できるアイテムを勝手にアイテムボックスへと送ってくれる、短縮設定にしたまま――人間、一度楽を覚えてしまうと元には戻り難いものなのです……――のはずだ。

 ……うん。確認してみたけれど、やはり変更はしていなかった。


 ちなみに、戦闘終了の合図でもある経験値の獲得が発生しており、レベルアップもしているので、実はまだ倒せていなかったとか、アンデッドモンスターになって復活!?という展開もない。


《テイムモンスター、エッ君がレベル二十になりました。種族の進化ができます》


 なんですと!?いや、とってもおめでたいことなのだけれど、ボクたちのクラスチェンジの時といい、今回もまたタイミングが悪いよね!?

 それというのも、魔物の進化は大きさどころか姿そのものが大きく変化する可能性があるからだ。進化させた結果、装備品がまるで使用できなくなる可能性もある。


「ごめんね、エッ君。進化は迷宮から出てからってことさせてね」

「こればかりは仕方がありませんわね」

「エッ君なら、本当にガラリと姿が変わってしまうこともあり得そうですからね……」


 謝ってから口々に慰めたが、本人はよく分かっていなかったのか終始キョトンとしていたのだった。


 さて、当面の問題に戻ろうか。ええ。キメラさんの御遺体のことです。

 とりあえず現段階で思い浮かぶ仮説は二つかな。


 仮説その一。複数の生物の合成だから、解体を行う場所によってドロップアイテムが異なる。例えば、ライオン頭の部分に初心者用ナイフ――武器にもなるけれど、解体用のアイテムでもあるのです――をプスリとさせればライオンの牙や(たてがみ)が、山羊頭であれば角が、尻尾の蛇なら毒袋が高確率でドロップする、といった具合だ。


 狙っているアイテムや欲しいアイテムがドロップし易いように修正が入ったのかもしれないね。『OAW』ではプレイヤーからの要望を反映させる小さなアップデートが割と頻繁に行われているから、ボクが見落としていただけという可能性は十分にあり得る。


 余談ですが、これは別にプレイヤーにおもねっているということではないです。反響が良かったものは『笑顔』の方にも波及させているそうで、要するにテストケース役を担っているのだった。


 仮説その二。解体を行う、もしくは放置することで迷宮の仕掛け(ギミック)が発動する、というもの。

 これと言った確証はなくて、あくまでもそんなこともあるかもしれない程度の曖昧でふわっとした予感なのだけれど。

 それでも予感であることには変わりはないので、どちらを選ぶかと問われれば、こちらを推すことになるだろう。


 という説明を、アップデート関連については適当に誤魔化しながらみんなにしたところ、


「リュカリュカがそう感じたというのでしたら、その通りなのでしょう」

「え?なにその全幅の信頼。ちょっと怖いんですけど」


 ネイトの台詞の引き気味になってしまったボクであります。信頼してくれているというのは当然嬉しいのだけれど、仲間なのだから盲目的に追従されるというのは困るのだ。


「信頼……。ま、まあ、信頼と言えないこともないかもしれませんね……」

「あれあれー?思っていたのと違う方向に進み始めているような気がする」

「リュカリュカ、これまで自分がやらかしてきたことを思い返してみてごらんなさいな。そんなあなたの直感が働いたと言われれば何かあると思うのは当然でしてよ」

「ぎゃふん!?」


 ぐふう。まさか一度持ち上げてから落とす系のやり口だったとは!

 ……え?そもそも持ち上げられていない?そ、そんなことないもん!……多分。


 と、精神面をがっつり削られるという出来事があったが、キメラの遺骸が残り続けているのは迷宮のギミックに関係しているのだろうという結論に達したのだった。


「あ、でも(トラップ)という可能性もあるよね?」


 分かり易いところで言えば、解体しようとプスリした瞬間、爆発するだとか毒が発生するという辺りだろうか。

 他には……、それこそアンデッド化して第二ラウンドスタート!になるとか。


「かなりえげつない罠ですわね」

「では反対に、放置しておくことで起動する罠とはどんなものでしょうか?」

「うーん……。次の階に向かう階段が見つからないとか?」

「あちらに見えておりましてよ」


 うん。そうだね。キメラを倒した直後に、キラキラしたエフェクトを伴って出現したよね。あの時は心身ともに疲れ果てていて、リアクションをとる余裕もなかったのだったっけ。


 可能性だけで言えば、あの階段は実は偽物で下りた先には大量の魔物さんたちが「いらっしゃーい」と待ち構えている、なんてことも考えられなくはない。

 が、それはさすがに悪辣(あくらつ)過ぎでゲームの難易度が破綻しているようにも思えるのよね。


 それを言うならキメラも難易度が異常だった気がしないでもないけれど、それはボクたちが半ば裏技じみたやり方で挑戦した結果だと言えなくもない。

 加えて『聖域』のエルフたち謹製の攻略情報もあったため、地下十階に至るまでのレベルアップは最小限に抑えられてしまっていた。


 恐らくだけれど、地下九階のスケルトンたちを正面から突破してなお余裕を持てるようになった時点でようやく、キメラに挑戦するための適正レベルとなったのではないだろうか。

 要するにキメラは本来であれば、クラスチェンジを終えた直後のボクたち程度がカチコミをかけたところで倒せる相手ではなかったのだ。


 あ、不味いです。この件を話してしまうと、またミルファたちから「やらかした!」と言われてしまいそうだ。

 結論、超極秘案件として記憶の彼方に忘却することにしよう、そうしよう!


一カ月間の営業努力月間にお付き合いくださいましてありがとうございました。


今後あとがきに宣伝等の一言を添えるかどうかは未定ですが、読み終えた後の気分を害さないようにだけはしていきたいと考えています。

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