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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十八章 迷宮攻略中
588/933

588 大 逆 転 !

 衝撃波を伴う咆哮によって周囲にまとわりついていたボクたちは吹っ飛ばしたキメラは、悠々と一歩を踏み出した。

 まあ、その肩口からは白目をむいた山羊頭がでろんと力なく垂れさがっているし、尻尾の蛇や片方の翼膜はボロボロと、かなり満身創痍の状態ではあったのだけれど。


 それでも、圧倒的に優位に立っていることを理解しているのか、全身から勝者の風格を漂わせ始めていた。


「もう勝ったつもりでいるとか、腹立つ」


 立ち上がりながら悪態をついたものの、こちらが不利な状況であることには変わりがない。

 咆哮の予兆に気が付いたボクとは異なり、碌に防御もできないままミルファは正面からまともに衝撃波を受けることになってしまっていた。

 ライオン頭のアレには、気絶の状態異常を発生させる追加効果があるとされていたので、しばらくは起き上がることすらできないかもしれない。


 チラリと視界の隅に表示されているミニマップを確認してみれば、キメラの前方側にいたボクやミルファだけでなく、後方にいたエッ君もまたかなりの距離を弾き飛ばされていたことが見て取れた。

 幸いと言うべきかどうかは微妙だが、ネイトとリーヴ、そしてトレアの三人は、あの時点ですでに距離が開いていたため影響はなかったみたい。もっとも、ようやくネイトの回復が終わったところのようであるから、戦線復帰にはまだ時間がかかりそうなのだけれど。


 つまり、立て直しを終えるまでいましばらくの間は、ボク一人でキメラを抑えておかなくてはいけないらしい。


「わーお。ベリーハードどころの難易度じゃないね」


 軽口を叩きながらも、背中に冷や汗が伝うのを感じる。単に時間を稼ぐだけであれば、怯えたふりをして情けなく逃げ回っても構わない。

 が、今回の場合はそれだけでなく、視線をこちらへと釘付けにして、みんなへと関心が向かないように仕向ける必要があるのだ。


「わーお。どんどん難易度が急上昇していくよ」


 アイテムボックスから液状薬(ポーション)を取り出してくぴくぴと飲み干す。

 苦みとえぐみにすえた匂いがプラスされて、ひたすら不味い。

 しかし、さすがはプレイヤーメイド品と言うべきか。効果の方はしっかりと発揮されて、ぐんぐんぐーんとHPが回復していた。


 それと同時にギロリとキメラがボクをねめつけてくる。回復行動はいわゆるヘイト値を上昇させる効果もあるそうで、うまい具合にボクへと意識を向けさせることができたようだ。

 まさに一石二鳥というやつです。


「あっはっは。勝ったつもりになって余裕ぶっているからこういうことになるのさ。教えておいてあげるよ。戦いは止めを刺すまで終わらないってね」


 さらに挑発してやると憎々し気に唸り声を上げ始める。

 もしかすると、リカバリーできるようにという運営からの恩情が込められたものだったのかもしれないが、どちらにしても利用することに変わりはないので、割とどうでもよかったり。


「それじゃあ、こちらも奥の手を出すことにしましょうか」


 龍爪剣斧だけでなく、さらに牙龍槌杖まで取り出す。二刀流ならぬ二槍流?です。ハルバード、それも相当なアレンジが施された特殊な形状のものを槍と言っていいのかは不明だけれど。


 ちなみに、奥の手うんぬんはハッタリだ。ボクの性格上、そんなものがあるならとっくの昔に使ってさっくり勝利しちゃっていますからね。

 それでも、自信満々な風に言ってのけたことが功を奏したのか、キメラはすぐに飛び掛かってくることはなかった。


 これもまた、高性能AI(かしこすぎる)ことが裏目に出ているよね。

 これがもっと高性能な、NPCに搭載されているAIと同じであればまた話は違ってきたのかもしれないが、魔物用のAIではプレイヤーと化かし合いをするには力量不足だったようだ。


 くっくっく。時間稼ぎ成功です。ミルファはまだ起き上がることができていないが、残る面々は徐々に復活を果たしていた。

 そして、


「ギシャア!」


 エッ君が回復薬を使用したことに尻尾の蛇が反応、ライオン頭もそれに釣られるように背後を振り返ろうとする。


「【ウィンドニードル】!」


 即座にその顔めがけて魔法を放つ。ニードルにしたのは、あわよくば眼球に当たって失明することを狙った為だったのだが……。残念、そこまでうまくはいかなかったみたいね。

 それでも動きを制限させるには十分な役割を果たすこととなり、


「ギャオウ!?」


 トレアの放った【弩弓】が左後足に深々と突き刺さったのだった。


「ナイス、トレア!これで突進を封じることができるね!」


 加えて機動力という面でも大幅に低下させることとなり、この一矢はボクたちにとって大きな追い風となる。


「全員総攻撃開始ー!ネイトもミルファの回復が終わったら魔法で攻撃に参加して。ここで一気に畳みかけるよ!」


 これが本当に最後のチャンスだと直感的に理解した。

 逆にこれで押し切ることができなければ負けてしまうだろう。

 エルーニから運び屋(ポーター)役をしてもらったお礼代わりに、色々と買い込んではいたものの、「こんなこともあろうかと!」と起死回生に使用できるような都合のいい便利アイテムなんてありませんでしたので。


「最後は地力がものを言うってことね。泥臭いけど嫌いじゃないよ!」


 どうせ元々今回はまともな作戦を立てられていなかったことだしね。


「【アクアボール】、からの【スウィング】!」


 直近で魔法を撃ち、牙龍槌杖で追撃する。

 大きい的は当てやすくていいよね。

 問題は距離が近いということは向こうからの攻撃も当たり易いということだ。


「ガルルバハア!?」


 が、ボクへと食らいつこうとしていたライオン頭が、割って入った盾によって弾き返されていた。


「リーヴ、ありがと!【ピアス】!」


 すかさず龍爪剣斧で突きをお見舞いしてやる。やっぱり守護神がいると安定感がまるで違うわ。


「よくもやってくれましたわね!お返しですわよ!」


 ついにはミルファも舞い戻ってきて、【マルチアタック】でザクザクと斬りつけていく。

 そして彼女が復活したということは……。


「【アースニードル】!」


 ネイトの手も空いたということだ。ボクたちが巻き添えになるのを防ぐ意味合いもあったのだろうが、万が一にも逃げられないよう残っていた片方の翼膜を穴だらけにしていた。

 トレアはトレアで執拗に後足を矢だらけにして機動力を削ぎ続けているし、みんなも確実に仕留めきれるように動いているね。


 エッ君の【流星脚】によるジャンピングキックが、蛇の体ごとキメラの下半身――お、お尻ー!?――に突き刺さり、ボクとミルファの【スラッシュ】が両前足をそれぞれ刈り取る。


「リーヴ、止めを!」


 支えるものがなくなり落ちてきたライオン頭に、リーヴの【クロススラッシュ】がクリティカルヒットしたところで、ついにキメラのHPゲージが全損したのだった。


営業努力月間も本日で最終日。終わってみればあっという間でしたね。引き続き楽しんでもらえる作品作りを頑張ります。

宣伝等がお嫌いな方もいるかと思いますが、ご容赦のほどよろしくお願いします。



作者のモチベーション維持のためにも、可能な限りで結構ですのでブックマークや評価を入れてくださいますよう、よろしくお願い致します。


もちろん、感想や一言もお待ちしています。



更に、本作以外にもヒューマンドラマっぽいものや近未来のSF風味なもの等々、いくつか書いております。(未完もありますが、完結しているものもありますので……)

これを機に他の作品もぜひぜひ覗いてみてもらえればと思っています。よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >蛇の体ごとキメラの下半身――お、お尻ー!?――に突き刺さり  こう言ったダーティーなネタこそ、槍なんかの長柄武器の出番なんだけどなぁ……(チラッ)
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