57 リーヴのステータス
仲間になったということで、何はともあれリーヴのステータスを拝見してみることにした。
名 前 : リーヴ
種 族 : リビングアーマー
職 業 : テイムモンスター
レベル : 1
HP 70
MP 20
〈筋力〉 6
〈体力〉 7
〈敏捷〉 4
〈知性〉 3
〈魔力〉 4
〈運〉 6
物理攻撃力 6 物理防御力 7
魔法攻撃力 4 魔法防御力 4
〇技能
〔英雄剣技〕〔守護盾技〕〔聖属性魔法〕
〇装備 手
・なし
〇装備 防具
・なし
能力値はリビングアーマーという種族を反映しているのか、〈筋力〉や〈体力〉が高くなっている。
対して残る三つは低めだから、典型的な前衛物理タイプというところかな。
〈運〉が高いのは……、なんだろう?器物なのに動くことができるようになったから、とか?
ともかく、防御力が高いから安心して前に出せるのでありがたい。エッ君の場合は先手必勝、やられる前にやれ!という感じだったからね。
「あれ?盾までなくなってない?」
いつの間にやら装備品のところが全て空欄となっているじゃないですか。リーヴに確認してみたところ、おじさんの攻撃を受け流したところで耐久がなくなったらしく、壊れて消えてしまったのだそうだ。
まったく気が付かなかった。
丸腰というのも危険なので、返してもらったばかりのボクの短槍を再び貸し与えることにしたら、感激しちゃったようで空を見上げて小刻みに体を震わせている。
もしかすると、この子も結構激情家なところがあるのかもしれない。実際、見も知らずのボクたちを助けようとした訳だし。
〈知性〉が低いことも要注意点だ。エッ君とはまた別方面で暴走がおきないように、気を付けておかなくちゃいけない。
いずれにしても、クンビーラに帰ったらリーヴの装備品の調達を、早めに行わなくちゃいけなさそうだ。そうでもしないとボクからの贈り物だと、初心者用の槍を後生大事に使い続けかねない。
せっかく〔英雄剣技〕なんていう凄そうな技能があるんだから、それに対応した武器を使ってもらいたいものだ。
「……ちょっと待とうか!」
さらりと流してきたけれど、三つの所持技能がエッ君並みにおかしなことになっているじゃないですか!?
「〔英雄剣技〕に〔守護盾技〕、それと〔聖属性魔法〕って、なにこれ!?」
ささ、〔鑑定〕技能の先生。出番ですよ!
〔英雄剣技〕…英雄のみが使いこなすことができるという剣技。その技は伝説の勇者に由来するという。
〔守護盾技〕…どんな攻撃にも決して屈することがない守護の盾を扱うための技術。
〔聖属性魔法〕…既存の七属性とは異なる聖なる力を元とする魔法。敵対する者を攻撃するだけではなく、自身や仲間を癒す術も身に着けることができる。
主人公だ……。どこかのお話の主人公がいるよ。
エッ君に続いてまたしてもとんでも技能持ちでしたよ!特に〔聖属性魔法〕がひどい!攻撃と回復の両方の魔法を一つの技能で習得できるなんて便利過ぎじゃない!?
というか「七属性と異なる聖なる力」って何さ?
神様の力なの?
それとも別世界の力?
どちらにしても世界設定を無視するようなものはどうかと思うんですが、運営はそこのところどう考えておいでなのでしょうか?
まあ、一介のプレイヤーであるボクがどうこう言ったところで変わるものではないだろうから、精々有効活用させてもらうことにしよう。
便利そうなものを使わないなんて縛りプレイができるほど、ボクはこのゲームに慣れてもいなければ、理解してもいないのだから。
《イベント『伝説の騎士』が完了しました。結果を精査しています。しばらくお待ちください》
そして忘れた頃にやって来るインフォメーションさんです。
そういえばこっちもイベントだったね。それにしても一体何が『伝説の騎士』だったのだろうか?
《精査が完了しました。結果を発表します。リビングアーマー…正体を突き止めましたが、テイムして仲間にしているのでボーナスは無効とします。また、以降の関連シナリオの発生は可能ですが、一部クリアボーナスは発生しません》
前半はエッ君の時にも似たようなことを言われていたから納得できる。でも、後半のそれはどうなのさ!?と思ったけれど、ほとんどのイベントは体験したプレイヤーが交流掲示板やまとめサイトへと投稿しているので、情報収集不足と言われておしまいになりそうだ。
MMOではないことや他のプレイヤーの人との直接的?な交流が苦手な人への配慮なのか、イベントの進め方や魔物の攻略などの情報は、この手のゲームにしてはかなり規制が緩いと以前里っちゃんが言っていた。
実際にプレイしていなくてもある程度のアドバイスはできることが、ボクに『OAW』を勧めた決め手の一つにもなっていたそうだ。
リーヴのステータスを確認し終えたところで、ドタドタと複数の足音が聞こえてきた。
「リュカリュカ!いるのか!?」
「はーい!こっちですよー!」
同時に聞き馴染みのある声が聞こえてきたことで、ボクは咄嗟に臨戦態勢を取るうちの子たちを宥めて、誘導するように返事をした。
しばらくもしない内に現れたのは、ディランおじいちゃんを先頭にした数名の冒険者たちだった。なんとその中にはサイティーさんやゾイさんもいるではないですか!?
「???こんなに大勢で、どうしたんですか?」
そう尋ねると、揃ってどっと疲れたような顔をされてしまった。
「どうしたって、お前なあ……。とんでもない悲鳴が聞こえてきたから、手が空いていた連中を集めて急いでやって来たんだよ」
リーヴの首キュポンの時に上げた悲鳴は、なんとクンビーラの街中どころか中央部にある冒険者協会にすら届いていたのだそうだ。
ボクの声、すごい!?
「騎士団や衛兵の連中も出張る準備をしていたんだが、最悪クンビーラを襲撃するための陽動であることも考えられたから、街の守備と警戒に回ってもらったのよ」
「その代わりに出向くことになったのが、わしらだったという訳だぞい」
一等級のおじいちゃんだけでなく、三等級のゾイさんや四等級のサイティーさんと、高ランクの冒険者が揃っていたのはそういう事情があったとのこと。
「えーと……。それはなんというかご迷惑をおかけしました」
ボク自身とっても驚かされた事だったけれど、あくまでもあれは驚いただけのことだった。それがたくさんの人を巻き込んでしまったというのは、なんとも心苦しい感じだ。
しかし同時に、どうせ気が付くのならばブレードラビットの群れに襲われている時にしてよ!とも思ってしまっていた。