568 地下一階攻略完了
迷宮の地下一階を初めてとは思えないような速さで、ボクたちはサクサクと攻略していた。
「いやあ、やっぱり情報が確かだと進むのが楽だわ」
「スホシ村の方々に感謝ですわね」
「二人とも、いくら順調だからと言って油断し過ぎないようにしてください」
ネイトのお小言っぽい注意に、ミルファと一緒に「はーい」と答える。今の会話にもあったように、地下二階へと続く道順をスホシ村の男性陣から教わっていたのだ。
それに加えて出現する魔物も、『土卿エリア』の地下洞窟で遭遇したことのあるケイブバットやボールスラッグといった最弱クラスばかりだった。
発見した瞬間、トレアやエッ君が競争をするようにやっつけるということが続いており、戦闘に時間がかかることもなかったのだった。
テイムした順番としてはエッ君が一番なのだけれど、年齢的にはゼロ歳児だからねえ。トレアお姉さんに遊んでもらっているという感覚なのかもしれない。
うちの子たちのほのぼのとした光景――やっていることは魔物の瞬殺という殺伐としたものだけれど……――は一旦横に置いておくとしまして。
採掘のために迷宮へと潜らされていたスホシ村の男性陣が、どうして次の階層へと続く階段の在り処を知っていたのか、不思議に思った人もいるのではないだろうか。
実はこれ、こんな原因があったのです。
「それにしても、護衛のはずの冒険者たちが役目を放棄して迷宮に出入りする時以外はどこかに行ってしまっていた、という話を聞いた時には、呆れてものが言えなくなったね」
割と本気で「彼らの頭の中は空っぽなのでは?」と考えてしまったくらいですよ。どうやら地下一階に出現する魔物では弱過ぎて稼ぎにならないため、先の階層へと出稼ぎに行っていたらしい。
そのため、自分たちの身を守るためにも連行されてきた領民たちは独自に持ち場周辺の探索を行っていたのだそうだ。
そうしたことがあちこちで行われて、さらには別の村の人たちとの情報共有を進めていった結果、地下一階限定ではあるけれど、詳細な地図が完成することになったのだった。
ちなみに、必然的に魔物とも戦闘になったのだが、ケイブバッドやボールスラッグであれば村人たちでも難なくやっつけることができたのだとか。
連行されてきた当初に比べて採掘が楽にできるようになったと言っていたから、いくつかレベルも上がっているのではないかな。
不届きな冒険者たちに利を与えることになるのは業腹ではあるものの、いざという時のために備えてレベルを上げておくのは悪いことではないし、倒した魔物の素材を売れば、雀の涙ほどの金額だが現金の入手にもつながる。
そうした理由もあって、スホシ村の男性陣は無理のない範囲で魔物討伐は続けるべきだと伝えておいたのだった。
「あれはもう、冒険者とは名ばかりの無法者ですわ」
プンスコと怒りをあらわにしながらミルファがボクに同調する。注意をしたそばから別のことに意識を向けているボクたちにネイトが小さくため息を漏らしていたが、話の内容自体はその通りだと思っていたのか、お小言を言われることはなかったのだった。
むしろ口を開けば不届きな冒険者連中に対する文句を言ってしまいそうだったのかもしれない。さすがに全員が雑談に興じていられるほど迷宮は甘くない、と自分を律してくれたのだろう。
うん。そろそろ真面目に迷宮の方へと集中しないとね。
魔物と遭遇したもののエッ君たちがあっという間に倒してしまう、というこれまで通りの展開が何度か続いた後、ついにボクたちは地下二階への階段へと到達した。
迷宮前集落の冒険者協会出張所へは必要最低限しか顔を出さなかったため、ここから先はエルフお兄さんから送られてきた昔々の情報だけが確かなものとなる。
ある意味、ここからが迷宮探索の本番とも言えそうよね。
「しまった。レベルアップしたボクの武器を使ってみるのを忘れてた!」
エッ君たちが楽しそうだったこともあって、すっかりド忘れしちゃってました!
「別に使わなくともよかったのではなくて。言っては何ですけれど、あれほどまで弱いと実戦訓練にはなりませんわよ。使い勝手のほどは訓練で確かめてあるのでしょう?」
「それはそうなんだけど……」
「訓練では分からないことや把握しきれないこともありますから心配に思う気持ちも分かりますが、ここはミルファの言うことが正しいですよ。弱過ぎる魔物では相手にしたところで訓練にならないどころか、おかしな癖や間違った自信が付きかねませんから」
極端に弱い魔物ばかりを相手にしていると、やたらと一撃で倒そうとこだわってみたり、魔物に対する危機意識が薄れてしまったりするのだとか。
「初心者から脱却した若手冒険者が陥りやすい失敗の一つでもありますね」
「なるほど。確かに最初の頃は戦闘に慣れるためにも、ことさら弱い魔物とばかり戦うことが多いもんね。慣れるだけならいいけど、「私は強い!」って勘違いする人も出てくるってことかあ」
「ええ。その通りです。まあ、その時々のレベルや強さに応じた魔物とばかり戦うことができるなんてことは滅多にありませんけれどね」
街道沿いに街から街、村から町へと旅をして回るだけであれば、大体今のボクたち程度、レベル二十前後の強ささえあれば十分だものね。
それ以上の魔物となると、基本的には街道から離れた草原や森林、湿地や山の中へと入り込まなくてはいけない。
もっとも、ランダムイベントという恐ろしい運営の罠があるので、街道を歩いていても油断は禁物ということになるのだけれど。
「様々な強さの魔物がいる迷宮って、そういう点から見れば強くなるためには打って付けの場所だと言えるのかもね」
「魔物を倒すことで得られる素材や、まれに出現する宝箱の中に入っている財宝にばかり目が向きがちですが、次々と手ごろな強さの魔物と戦えるという意味でも有用と言えるかもしれません。ただし、深い階層へと進むためにはそれなりの時間と手間が必要になりますが」
その問題もあったか。
それに何より、いくら有用であってもこの迷宮を攻略して機能を停止させるというボクたちの目的に変わりはない。
できれば大陸統一国家時代のものと思われる浮遊島との関係も解き明かしたいところだね。
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