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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十七章 迷宮と迷宮前集落

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565 自我の芽生え

「ふむふむ。なるほど。そんなことになっていたんだ」


 急きょアドバイザーとして招集されたケイミーさんは、ボクたちから事の経緯を聞いて驚いたように、そしてちょっと悔しそうな様子で頷いていた。


「それでどう?これって物語とかでよくある『知性ある(インテリジェンス)武具ウェポン』ってやつなの?」

「シュクトウさん、急かしちゃ悪いですよ。ただでさえ無理を言って来てもらっているんですから」


 先を急ごうとするシュクトウさんを諫める。友人らしい気安さからくるものなのだろうけれど、最低限の礼儀というものは必要ですよ。


「それは気にしなくてもいいよ。むしろもっと呼んで欲しい」

「え、えーと……、そういうことならこれからもできるだけ声を掛けるようにします」

「ごめんね、『テイマーちゃん』。こういう子なのよ……」


 気遣いが空回りだったと分かった上に、たしなめたはずのシュクトウさんから慰められる始末ですよ!

 ああ、恥ずかしい。


 余談だけど、土曜日の時点でケイミーさんにも連絡はしていたのだが、リアルの都合のためログインすることができなかったのだそうだ。


「横から割って入ってすまんが、結局のところ、どうなんだ?」


 カウンターの上に敷かれた柔らかな布に置かれたままになっていた二振りの武器へと目を向けながら、スミスさんが尋ねる。


 あの後、それなら同時に掴めばいいか、と両手をそれぞれに手を伸ばしたところ、今度はどちらを利き手の方に持つかで圧を発し始めたため、手にすることすらできずにいたのだ。

 一応ボクは右手が利き腕ということになるのだけれど、おじいちゃんたちから武器の扱いに関しては左右どちらでもこなせるようにと訓練させられたため、左手でも結構扱えたりします。

 とはいえ、ミルファの持っている〔二刀流〕だとか、もしくは〔両手利き〕といった技能が生えてきてはいないので、あくまでそれなりに扱えるという程度なのだろうけれど。


「それなんだけど、今はまだ自我が目覚め始めているっていう段階みたいだから、インテリジェンスウェポンとは言い難いと思う」

「そうなの?」

「うん。インテリジェンスウェポン自体の定義があってないようなものだから、はっきりとしたことは言えないけど、周囲の人や少なくとも持ち主との意思の疎通ができることが条件みたいなところがあるから」


 実態はどうあれ、他者からの認知ができなければ知性を持っているかどうかなんて分からないものねえ。意思の疎通が条件というケイミーさんの説明は、「なるほど、その通り」と思わせる説得力があった。


「それにしても……、まさか自我の萌芽を見せる武器が登場するとは思わなかったな。それって、私たち<人形造形師(ドールマイスター)>の最終目標である『自立型自律人形インデペンデンスドール』に繋がる最初の第一歩だよ」


 リアルでいうところの、高性能AIを搭載したロボットやアンドロイドですかい。

 魔法がある世界だから、簡単ではなくとも成し遂げられてしまいそうに思える。付け加えるなら、リアルに比べて技術面だけでなく倫理面などのハードルも低そうだからねえ。

 まあ、ケイミーさんであれば絶対に非人道的な方面には進むことはないだろうけれど。


 さて、状況は理解できた。理由の方は、ボクが<テイマー>だからとか色々と想像は付くけれど、長々と考察している時間もなければする気もない。

 スミスさんたちレベルアップ作業に携わってくれた鍛冶師の人たち経由で適当に情報を公開して、後は検証好きで考察大好きな人たちに頑張ってもらうとしましょう。


「問題はこれからどうするか、ってことですよね」


 ケイミーさんの説明には、残念ながら都合の良い解決策は含まれていなかったので。


「そこは思い切って『テイマーちゃん』が思うままにガッといっちゃっていいよ」

「ほえ?そうなんですか?」

「うん。要するに甘えているというか我が儘を言っているだけのことだから、びしっと主従関係や上下関係を叩き込むくらいのつもりでいくべきだね」


 最初に舐められてしまうと、ズルズルと後を引いてしまうらしい。


「ペットの躾みたいね……」

「ぶっちゃけ、大差はないかな。ゲームの補助が働いているとしても、生まれたばかりで何も知らないことには違いはないから。ほとんど本能のままに動いていると思って差し支えないよ。いや、本当に動いてはいないんだけど」


 ほうほう。つまりは子犬や子猫、雛鳥と同じような存在だと思っておけばいいのね。

 甘やかすことと大切にすることは決してイコールではない。ダメなものはダメと叱ることも時には必要なのだ。

 難しいけれどね。だって誰だって嫌われたくはないもの。敵意を向けられるのは、とても苦しくて辛いものなのですよ。ボクがそのことをはっきりと認識したのは中学時代のことで、例によって里っちゃんたち生徒会のお手伝いをしていた時のことだった。


 あれはそう、寒い寒い冬の朝のこと……。って、昔語りをしている場合ではなかったのでした。

 今向き合うべきなのは過去ではなく、目の前にある二振りの武器たちだ。


「よし!」


 気合を入れ直して、右手を龍爪剣斧に、左手を牙龍槌杖へと伸ばす。突如左手の先から圧が伝わってくるが、


「大人しくしなさい。ちゃんと後で持ち替えてあげるから」


 ひるむことなくピシャリと言い放ち、そのまま二本をそれぞれの手で掴む。

 ふう……。ようやくここまでくることができたよ。


「お帰り。また一緒に戦うことができて嬉しいよ」


 微笑みながら呟くと、これまでとは違った優しい雰囲気が伝わってくるように感じられた。

 甘やかしている?ノンノン。これは気持ちを素直に言葉にして伝えているだけなのです。


 ああ、そうだ。戦うとなればどのくらい強くなっているのかもしっかり把握しておかないといけないね。


「ひょっ!?」

「え!?」

「なに!?」


 突然のボクの奇声に、シュクトウさんとケイミーさんの肩が跳ね上がる。

 再び恨みがましい目でスミスさんを見てしまったボクは絶対に悪くない。その証拠に、今度の彼は微妙に居心地の悪そうな顔になっていたのだから。

 同時にやり遂げたという感じと、してやったりという様子も入り混じっていましたけれどね!


 ええ、ええ。してやられましたとも!

 まさか攻撃力等の数値が四倍近くにまで跳ね上がっているとは思ってもみなかったさ!


このままインテリジェンスウェポンになるかどうかは、今のところ未定です。

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