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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十七章 迷宮と迷宮前集落

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555 三試合目、その前に

 ここで少々種明かしをば。


 どうしてボクたちが突然見ず知らずの若手冒険者に勝負を吹っ掛けたのか?


 理由としては少年たちの件があって腹が立ったこと、そして何より迷宮に入る実力があることを示すためだというのは、これまで再三述べてきたとおりだ。

 ただ、普段はとっても慎重で温厚なボクたちがやけに強気で話しを進めていたことに、違和感を覚えていた人も結構いるのではないかと思う。


 え?いつも通りにしか見えない?

 あっはっは。何をおっしゃいますやら。


 寸劇はこのくらいにして本題に入ろう。そもそもですね、若手冒険者三人組に喧嘩を売った時点で、勝つことができる目算が高いということは分かっていたのだ。

 いや、ここははっきり言っておこうか。「油断しなければ負けることはない」くらいまで勝率は高かった。


 だって彼ら、三人共レベルが十三しかなかったのだもの。


 はい。のぞき見をしている最中にこっそりと〔鑑定〕技能を使って調べちゃっていました。

 まあ、分かったのはレベルだけだったのだけれどね。そういう仕様なのか、それともボクの技能熟練度が低いだけなのかは不明です。


 もちろんレベルが全てだと言うつもりはないよ。実際に『笑顔』との合同イベントの時には、ボク自身がやり方次第でレベルが上の人を翻弄することだってできれば、互角に戦うことだってできるということを証明してみせたのだから。

 だからこそ、油断しないことが大切だった。


 付け加えると、レベルが上位の相手に勝つためにはいくつもの能力が必要となる。

 常に変化を続ける状況を見極める目だとか、臨機応変に対応できる柔軟な思考、さらには意表を突く発想力などがその代表格だろう。

 一試合目、二試合目と続けて見ていたが、対戦相手の彼らにそうした能力が備わっているようには見受けられなかった。


 それ以前に、彼らはボクたちが格上であるということにすら気が付いていないと思う。多分、二連敗した今になってようやく同格くらいの実力はある、と考えるようになったのではないかな。


 モチベーションの維持が難しかったのもその辺りに起因しそうなのよね。

 ほら、やり過ぎちゃうと弱い者いじめみたいになってしまいそうで……。今はもう八つ当たりをするつもり満々なので、やる気ばっちりですけれどね!


 余談ですが、リシウさんの部下の人たちを始めとしたあの一行の人たちには、〔鑑定〕を使うことすらできなかった。休憩中とか何度か試そうとしたのだけれど、そのたびに部下の誰かから「怪しまれるような真似はしないように」と言わんばかりの視線を向けられることになってしまったのだ。

 仕事のできる美人秘書さんことヒューマンの女性からは、敵意満載の鋭い視線までオマケしてくれましたからね。しかも笑顔で。怖いってば。

 いやもうホントに生きた心地がしませんでしたよ……。


 さて、そろそろ本気で試合に集中しないとね。やる気はあるに越したことはないけれど、空回りしてしまっては意味がない。

 そしてこの試合の結果は迷宮に入る権利に直結している。失敗は許されないのだ。


「それじゃあ、行ってくるねー」


 アイテムボックスから牙龍槌杖を取り出すと、努めて明るい声音でミルファたちに言う。事の大小には関係なく、後がない状況というのはやっぱりプレッシャーを感じてしまうものですので。

 こうして普段通りの態度を取ることで、自分には「大したことない、やれる」と言い聞かせる訳です。今回のように相手がいる場合には、悠然とした態度がそのまま相手への圧としても働くから一石二鳥だったりもするのよね。


 そんなボクからのプレッシャーを真に受けてしまったのか、それとも元より本番や大舞台には弱い性質なのか、あちらの最後の一人はひたすらうつむいたままだった。

 見た目は一試合目のネイトの対戦相手と同じような魔物の革製らしい部分鎧という、防御力の高さよりも動き易さを優先した格好だ。が、得物は未だに取り出していない。

 一試合目の彼がこれ見よがしな宝玉が付いた短剣を持っていたことで、魔法を使うことがこちらにバレてしまったことを教訓にしたのかもしれない。


 うーむ……。これだけではどのような攻撃手段を持っているのかが分からないぞ。軽鎧はスピード重視の近接戦闘をする人から遠距離攻撃者、果ては魔法主体で攻撃を行う人でも好んで身に着けることがあるから。

 試合開始と同時に魔法や矢が飛んでくることも念頭に置いておく必要がありそう。

 さすがに懐に飛び込んでのゼロ距離から射撃やら魔法発動といったロマン戦法ではないだろうけれどね。いや、プレイヤーの中にはそういう人もいるらしいのよ。


「くそっ!お前たちのせいで俺たちは大損害だ!」


 わーお。ようやく顔を上げたかと思えば開口一番そんな台詞ですか。まあ、反省をするようなやからではないだろうと思っていたので苦しくもなんともないね。

 むしろここでこれまでの行動を後悔するような中途半端な善人だと、ぶっ飛ばし辛くなるので止めて下さい。


「ボクたちのせい、ねえ……。単にあなたたちの行動が招いただけのことでしかないと思うけどな」


 遅かれ早かれ見限られてポイされていたのでは?

 ほら、悪い人たちってそういう部分はシビアそうでしょう。


「チッ!口の減らない女だ。だが、すぐにそんな舐めたことを言えなくしてやる」

「はいはい。精々呆気なくやられて恥の上塗りにならないように気を付けてねー」


 ひらひらと手を振ってなげやりに答えてやると、一瞬で顔を真っ赤に染めたものの盛大に舌打ちをするだけにとどまっていた。

 おや?今までならこれで激高していたのに、一応は平静さを保ったようだ。

 ボクたち以上に後がないはずなのに妙に自信がありそう――単に力量差が見えていないだけという可能性もあるけれど――だし、これは隠し玉があると考えておいて間違いなさそうだ。


「出でよ!火の精霊よ!〔召喚(サモン)〕!」


 その言葉が終わるや否や、まばゆいばかりの深紅の光がカッと周囲を赤一色に染めていく。

 あまりの光量に瞼を閉じるだけでは足りずに、腕で顔を覆うようにして光の奔流に耐える。


「ぬわあああああ!目が、目がああああ!?」


 リシウさんらしき人の悲鳴――どこかで聞いたことがあるような口調なのは突っ込んではいけないところだろうね――が聞こえてくるが、その様子を確かめる余裕はなかった。

 とはいえ何となく察することはできる。子どもたちの声が聞こえてこなかったから、部下の人たちがそちらの守りに手を取られた結果、彼にとばっちりがいってしまった、ということなのではないかな。


 あれ?

 彼って最優先の護衛対象者だよね?


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