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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十七章 迷宮と迷宮前集落

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554 二試合目

 あっという間に瞬殺、は言い過ぎだけれども、それに近い圧倒的な差でミルファは圧勝した。

 ちなみにその二試合目の相手ですが、金属製の前身鎧に大型の盾を構えた典型的な盾役といった外見で、ある意味一戦目の若者とは正反対な役回りの人物だった。


 さて、ミルファのワンサイドゲームとなってしまった要因は複数あるのだろうけれど、一言でまとめてしまうと相性が良過ぎた、ということになると思う。彼女はどちらかといえば一撃の威力よりも速度と手数の多さが攻めの基本となる。対してあちらは敵の攻撃を受け止めてその場に釘付けにして、その隙に渾身の攻撃を叩き込むというスタイルだった。

 これだけであれば単なるパワーファイターとスピードファイターとの戦いであり、力量次第ではどちらが勝つのか分からない手に汗握る展開になったかもしれない。


 ところが、だ。ミルファには二本の剣に加えて、二種類の属性魔法という攻撃手段を持っていた。しかもその内の一つは雷属性ときている。

 はい、もうお気付きだろう。物理攻撃には鉄壁の頑丈さを誇る金属製の鎧や盾だが、魔法、特に雷属性魔法にはめっぽう弱かったのだ。


「【サンダーボール】!」

「ぐわああっ!?」


 盾でしっかりとガードしたにもかかわらず、試合開始直後に放たれた魔法によってあちらのHPの一割ほどが一気に消し飛んでしまう。奇しくも一試合目のネイトの立ち回りに触発されて、どちらかといえば不得手な魔法を主軸に据えたことが良い方向に転がった訳だね。


 そして金属を大量に使用した鎧や大盾は頑丈ではあるが、よほどの怪力や無尽蔵の体力の持ち主でもない限りは、着用者に鈍重な動きを強いることになる。

 対戦相手の彼もまたそれなりの力自慢ではあったのだろうが、しょせんはそれなりだった。かわすだけの素早さは持ち合わせておらず、体のいい的として雷球を受け続けることになったのだった。


 しかし、このまま勝っても「あんな卑怯な戦いは無効だ!」と後でごねてくるだろうことは火を見るよりも明らかだ。

 ミルファも同じ考えだったのだろうね。あちらのHPが半分を切ったところで、突然魔法を放つのを止めてしまった。

 これに真っ先に反応したのが、三人目の若者、つまりはボクの対戦相手だった。


「今だ!あいつはもうMPが切れて魔法が使えないぞ!」


 いやいや、それは短絡過ぎってものでしょう。

 それ以前に魔法攻撃専門の<マジシャン>たちですら、訓練でもない限りはMP枯渇寸前まで魔法を連発するなんてあり得ないから。生粋の魔法使いであるゾイさんが言っていたのだから間違いない。


「う、うおおお!」


 仲間の台詞を真に受けて、起死回生の妙技とばかりに盾を構えたまま突撃を仕掛ける重戦士。


「なっていませんわね。仲間の声に耳を傾けることは大切ですけれど、自分の目と耳で確かめて判断することを放棄してよい理由にはなりませんわよ」


 まるで風に揺れる柳か何かのように、ふわりと優雅に彼女はその突進をかわす。

 さらに次の瞬間、「ぐわあああ!?」と悲鳴を上げて対戦者が大盾を地面に転がしてしまっていた。どうやらすれ違いざまに腕の鎧の薄い部分を斬りつけていたようだ。


「このくらいはできませんと、ロケットダッシュすら倒すことはできませんわよ」


 あのチョ……、じゃなかった、大きな鳥さんは猛スピードで突っ込んでくるのが基本の動きだからね。近距離戦闘の場合は交差した一瞬でいかにダメージを与えるかが重要になるのだ。

 まあ、魔法なり弓矢なりの遠距離攻撃手段があれば、楽勝な魔物だったりもするのだけれど。

 ああ、思い出したらロケットダッシュのお肉が食べたくなってきたかも。


 さて、お肉、ではなかった、対戦者の若者だが、大盾を拾うこともなく切られた腕を抱え込むようにして座り込んでしまっていた。

 罠か何かかしらん?そう思って注視していたが、呻き声のようなもの聞こえてくるばかりだ。これは後から聞いた話なのだけれど、彼は常に頑丈な鎧や大盾で身を固めていたため、直接的な傷を受けることに慣れていなかったのだそうだ。

 盾や鎧越しの重い衝撃のダメージとは異なり、焼けつくような鋭い痛みにすっかり戦意を喪失してしまっていたらしい。


「まだ続ける気はありまして?」

「こ、降参する……」


 そんな短いやり取りの後、ミルファの勝利が決定した。試合だからそれで済んだものの、魔物との戦闘であれば自分だけでなく仲間の命をも危険に晒す行為だ。終始一方的に進められた二試合目だったが、最後の最後で微妙な空気に包まれることになったのだった。


 そうしてついにやって参りました最終戦です。……まあ、全部合わせても三試合しかないのだけどさ。

 しかも既に二連勝してしまったということで、当人のボクたちの意識や考えはともかく周りに集まっていた野次馬連中からは完全に消化試合と思われているようだ。

 スタッフロールは流れているものの、徐々に明るくなり気の早い人たちは退室を始めている映画館みたい、とでも言えば伝わるだろうか。

 つまり、終わってしまった感が凄いです。


「うーん……。注目の的にされているのも困るけど、これはこれでやり辛いね」


 具体的に言うとモチベーションの維持が難しい。ネイトとミルファが思いっきりやってくれたお陰で、連中に対するイライラもだいぶ解消されてしまっているのよね。


「ですが、ここで負けてしまえば冒険者協会には迷宮に入る資格なしと判断されてしまうかもしれません」

「自分たちの意に沿わない余所者として警戒されている分、しっかりと実力を認めさせる必要があるということですわね」


 不利な条件を力でねじ伏せるってことかな。

 わーお、とっても脳筋思考で少年マンガ風味の熱血展開っぽいです。


「仕方ない。常に万全の状態で戦えることがベストだけど、毎回そう上手くいくとは限らないものだしね。その訓練だとでも思って頑張ってみますか」


 そう言えば、リアルでも定期テストに月のものが重なったとか、学校行事の準備に張り切り過ぎてしまい本番では燃え尽きかけてしまった、等ということもあったなあ……。

 試験勉強に根を詰め過ぎて、里っちゃんと二人して寝不足でテストを受けたこともあったっけ。あの時は散々な結果になってしまった。

 ……従姉妹様は「全く頭が働かなかった」とか言っていたくせに、なぜだか最高得点を叩き出すという理不尽をやってのけていたけれどね!


 あ、思い出したらちょっとイラッとしてきた!

 ちょうどいいので、八つ当たりをしてこようと思います!


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