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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十六章 スホシ村と次の行き先

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547 誤魔化せてないです

 馬車から下りてきたのは全部で七人。御者の三人はそのままだが、これでネイトが〔警戒〕で察知した全員がボクに姿を見せたということになる。

 果たしてそれは、敵意はないという誠意の表れなのか、それとも戦っても負けることはないという強者の(おご)りなのか。


 いずれにしても、彼らが単なる護衛だとは思えない。

 どうしてそう考えたのかって?だって、下りてきた人たちは明らかに馬車ではなく「大将」と熊獣人さんから呼ばれていたピグミーの青年……、少年?それとも壮年?どうにも見た目がはっきり分からないのだが、とにかくその彼を守るような位置取りをしていたからだ。

 これってどう見ても大将さんって身分か地位の高い人だよね……。


 このことは指摘した方がいいのだろうか?それとも見て見ぬふりの方が賢明?

 チラリと横目でミルファとネイトの二人と視線を交わすと、彼女たちも同じことに気が付いていたのか、難しいお顔になっていた。

 ミルファはそれこそ守られる立場だったし、ネイトはボクたちよりも冒険者としての経歴が長い。それぞれの人生経験から大将さんと仲間たちの関係を感じ取ったのだろう。


「おいおい。お前たちがぞろぞろと出てくるから怖がらせてしまっているじゃないか」


 違う。そうじゃない。

 そんなボクたちの内心の葛藤を知らない大将さんが、仲間もしくは配下たちへと揶揄い混じりに告げていた。


「いやいや。大将の小ささに驚いてるんじゃねえですかい」

「小さくねえよ。これでもピグミーの中では長身の方なんだぞ」


 仲間たちも言われっぱなしではなく、しっかり反撃している。彼らの鉄板ネタっぽいやり取りだったが、一度思い浮かんだ違和感を消し去るには至らず、そう思うと逆に白々しい仲良しアピールにしか見えなくなってしまう。


 そもそも、七人という数自体がおかしかったのだ。

 ゲームのシステム上、『OAW』ではパーティーの最大人数は六人となっている。

 もうお分かりだろう。大将さんたちの場合、一人余ってしまうのだ。御者の三人も含めて十人で二つのパーティーを組んでいるとも考えられなくはないが、未だ御者席から動こうとしていないためその可能性は低いだろう。

 そうなると、六人のパーティーで一人を護衛していると考える方が一番しっくりくるのだ。


 そこまで推理をしたところで、ボクは肩の力を抜いた。知らず知らずのうちに強張っていたのだろう、全身が弛緩するのを感じる。

 そのまま右手に持っていた牙龍槌杖をアイテムボックスへと仕舞い込む。


「リュカリュカ?」

「みんな、力を抜いて大丈夫だよ」


 貴人の護衛としての矜持もあるだろうし、命令されるか、こちらから敵対してみせない限りは攻撃されることはないと思う。

 そしてこれまでのやり取りからして、大将さんは傲慢貴族にありがちな(たわむ)れに誰かを害させるような、理不尽な命令を出せる人ではないように感じられる。

 となれば、敵対感情はないと示してみせるのが、最も平穏に事を進めるための手段となるだろう。


 この予想はズバリ的中し、こちらが武器を収めるのに比例して、あちらのひりつくような緊張感も徐々に和らいでいったのだった。


 よし!

 状況が落ち着いてきた今こそが絶好のチャンスだ!


「ボクの名前はリュカリュカで、この二人はミルファとネイト。こっちの子たちはボクのテイムモンスターね。見ての通りの冒険者だよ」


 緩んだ空気の隙を突くようにして、ボクは一方的に自己紹介を始めた。


「この少年たちは近くの村の子どもで、昨日の夜に引率役の連中に置き去りにされていたところを助けたの。この先の迷宮が目的地なことも同じだったし、袖振り合うのも他生の縁ってことで一緒に行動しているところ」


 割り込む間を与えずにこちらの状況と子どもたちの事情、さらには目的の場所までべらべらと喋り倒す。

 そして一通り話し終えたところでニッコリ笑って、


「で、そちらは?」


 と話題のボールを大将さんへと放り投げた。


「……子どもばかりだと侮ったのは我々も同じだったようですね」

「ああ、くそ!これじゃあ、おやっさんことをバカにできねえ」

「そこで一々俺を引き合いに出さないでくれ!?」


 ふむ。まだまだ余裕そうだね。

 まあ、このくらいで喉元に噛みつくことができたとは思えなかったから、別に問題ないのだけれど。


 ちなみに、侮った云々に加えて「おやっさん」と呼ばれた初めにこちらへと話しかけてきたおじさんが巻き込まれていたのは、彼が名乗りもしなかったことに由来する。

 それに対してこちらは拒絶の意志を示した訳だけれど、今回ボクはそれを逆手に取った。

 先手を打って自分たちの内情をあらわにしたことで、「これだけ開けっ広げに話したのだから、そちらも当然胸襟(きょうきん)を開いてくれるんだよね?」と圧力をかけたのだ。


 ついでに説明しておくと、これには「あなたたちが単なる行商人とその護衛ではないことは分かっていますよー」とほのめかすという意味合いも含まれていたりします。


 えげつない?

 何をおっしゃいますやら。

 世の中には「相手に自分を信じてもらいたければ、自分が先に相手を信じることだ」といった素敵な格言があるではありませんか。ボクはその崇高(すーこー)な理念に(のっと)って行動しただけのことでござりますわよ。


 さてさて。どこまで話してくれるかな?

 できることなら少年たちを託すことに不安がなくなる程度に詳しく、かつ余計な騒動には巻き込まれない程度に誤魔化してくれると嬉しいのですがね。

 そういうこともあって、ボクの方も『土卿エリア』から転移魔法陣らしきもので飛ばされたこと等の肝心な部分はしっかりと伏せたのだから。


「どこからどこまで話したものか……」


 大将さんが頭を悩ませる中、残りの面々は静かに視線を交わしたり周囲へと意識を集中したりしていた。

 仲良しアピールをしていても、彼らの間には厳格な主従関係と明確な役割分担があるみたいだ。

 本当に誤魔化すつもりならば、その辺りにももう少し気を配るべきだろうね。


「あー……、どうやらバレてしまっているようだから話してしまうが、実は俺は皇帝に連なる高位の貴族家の嫡男で――」

「そこまでです、大将!」

「はい!ストーップ!そんな重大そうな話を出会ったばかりの素性もはっきりしない相手にするとか正気ですか!」


 大事件のフラグにしか感じられない内容を口にしようとする大将さんを、慌てて隣にいたヒューマンの女性とボクとで引き留めにかかる。


 これが、後に『火卿帝国中興の祖』と呼ばれることになるピグミーの青年リシウと、彼を支える『六輝星』との出会いだった。


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