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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十六章 スホシ村と次の行き先

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531 交渉、取引、脅し?

「という訳で、この人じゃまったく相手にもお話にもならないから、もっと上の立場の人が出て来てくれませんかー?」


 奥に向かって挑発的に叫ぶ。

 さてさて、どう出てくる?

 こちらからすれば無視され続けるのが一番困ってしまうのだが、恐らく向こうもこの手は取ることができないはずだ。何せ統括して支配する側――だと思っているのだろうね――の自分たちが、その支配する対象の冒険者――だと思っているんだろうなあ――からバカにされたのだ。

 プライドとか面子的に放置して無視し続けるなんてことはできないのではないかな。


 そもそもこの考え方自体が間違っているのだけれど、この『火卿エリア』では『冒険者協会』の存在意義がすっかりねじ曲がってひん曲がって折れ曲がってしまっているようなので、今更そのことを告げたことで改心するようなことはないだろう。


「何の用だ」


 重苦しい低音で返してきたのは、多分奥の方に座っていた人物だろう。

 ああ、ほら、ボクたちの前には大量の魔物素材で壁ができているからね。向こう側が見えないので特定することができないのですよ。

 もちろん、わざとやっております。「ボクたちの顔が見たいのならそっちが回り込んで来い」ということですな。

 ツカツカと響く足音はカウンターを回り込むことなく向こう側で止まった。


「はあ……。しょせんはその程度か」

「なんだと?」


 こぼれた呟きに対して怒気混じりに噛みついてくるが気にしない。気にしてやる意味もない。


「単刀直入に言うよ。ボクたちを迷宮の攻略枠に捻じ込んで」


 迷宮内の情報は得ておきたいけれど、ここでなくてはいけない訳ではない。現地にいるスホシ村の男性陣や他の村から連行されてきた人たちから聞くという手だってあるのだ。

 ならばこの冒険者協会支部でやっておいた方が良いことだけを終わらせてしまおう。


「ふん!実力も定かではないやつらを推薦できるはずがないだろうが」

「本当にそう思っているのなら、あなたの目は節穴だね」


 その実力を明確にするためにこうやって大きな壁を作っているのだから。

 迷宮が『不帰の森』に生息している魔物以上の強敵が出現する高難易度ということなら話は違ってくるけれどね。

 でも、さすがにそんな無茶苦茶なシナリオが破綻するような難易度設定にはなっていないだろうとも思う。下手をすると連行されている人たちを解放する術がなくなるかもしれないもの。


 ゲーム開始初日にボクが遭遇したあの凶悪ランダムイベントとして名高い『竜の卵』にすら、複数の解決方法があるらしいのだ。

 運営の推奨する展開というものがあるかもしれないが、それ以外の手段――抜け道的なものや裏道的なものまで含めてね――も用意されているはず。


 だからこそ、ボクはこの取引が失敗するとは全く考えていないのだ。

 進んでやるつもりはないけれど、最悪この職員たちを力づくでどうにかするという手もなくはないことですから。

 いくら国を超える巨大組織である『冒険者協会』の職員という肩書きがあろうとも、彼らはこのスホシ村では嫌われていて完全に孤立している状態なのだ。


 害にしかならないのであれば排除してしまうのもアリだと思うし、実際にそうできてしまう下地は整っていると思えるのよね。

 本人たちは気が付いていないようだけれど。


 スホシ村のある領内の冒険者協会からは睨まれることになるかもしれないが、これまでのやり取り等から協会を利用するうまみを感じなくなっていたので問題なしです。

 いざとなれば対立している別の領へと逃げてしまえば手も出せなくなるだろう。


 それに何より排除のやり方次第では、別の村や町へと報告することができなくすることだって可能でしょう。

 例えば、牢獄に閉じ込めておく、とかね。

 まあ、そのためには村の人たちの協力が必要不可欠となるので、ある意味最終手段ということになるだろうけれどね。


 話を戻しましょうか。


「もちろん、タダでとは言わない。推薦料代わりじゃないけれど、この素材は全て協会に無償で提供する」


 採取をするための男性陣と一緒に、その護衛や攻略のために領内にいた冒険者のほとんども迷宮へと動員されていると聞く。

 当然町や村、街道周辺に出現する魔物が狩られる数は減少しているだろうから、多少レア度は低くとも大量の魔物素材はこの地の冒険者協会からすれば喉から手が出るほど欲しいものであるはずだ。

 そんな予想が的中したことを示すかのように、素材の壁の向こう側から「ゴクリ……」と唾を飲み込む音が聞こえてきた。


 ちなみに、熊おじさんたちからは協会が素材類を買い叩いているという話を聞いていたので、お金に換えるつもりであるならば、これまで通り村の各種お店へと持ち込んだ方がよほど利益になる状況だった、ということも付け加えさせて頂いておきますです。


「さあ、どうする? ボクたちとしては一応、そちらの顔を立てるつもりでこの話を持ってきたんだけど?」


 迷宮へと入り込む際に、冒険者協会からの推薦があった方が楽なのは確かだとおもう。

 が、実力を示すのであれば、迷宮の前に陣取っているだろう責任者あたりにこれらの素材を見せつけてやればいいだけのことだ。

 ただし、そうなれば参加を打診してきた冒険者の力量すらまともに見抜けなかったとして、スホシ村の冒険者協会は白い目で見られることになるかもしれない。


 そしてさすがは小悪党というべきか、自分たちの不利益になるかもしれないことには敏感らしく、権力者側から迫害とまではいかなくとも疎ましがられる未来を想像してしまったらしい。

 今度は「ひっ……!?」と喉から空気が抜けるような悲鳴じみた音が聞こえてきたのだった。


 これは、もう一押しというところかな。


「この中に立てこもっていたあなたたちでも、外の歓声くらいは聞こえていたでしょう。畑を荒らそうとしていた魔物どもをやっつけたことで、今ではボクたちはすっかり村の英雄扱いさ。そんなボクたちのお願いを聞いてもらえなかった、なんて話をしたら、村の人たちはどう思うのだろうね?」

「わ、我々を脅すつもりなのか!?」

「脅すだなんてとんでもない!ボクはただ、ふと頭によぎったことを口に出してしまっただけだよ」

「うぐぐぐぐ……!」


 ギリギリと歯をかみしめる音と共に唸り声が聞こえてくる。

 多分、怒りで真っ赤な顔になっているんだろうねえ。

 知ったこっちゃないけど。


 これに懲りたら、少しは態度を改めてくれればいいのだけれど。


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