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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十六章 スホシ村と次の行き先

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529 村の男連中の行方

 さすがに村の入り口付近で重要な話をする訳にはいかず、おばば様と数人の村の人たち――全員女性です――と連れだって、ボクたちは宿泊している宿の食堂へと移動していた。


「さて、何から話すとしようかね。……と、その前に、あんたたち、この村がおかしなことになっていることには気が付いているかい?」

「女性ばかりで男性、特に働き盛りといわれる年代の男の人たちがいないことですよね」

「その通り。簡単に言ってしまうと、アホ領主の命令で全員連れて行かれてしまったんだよ」

「あ、アホ領主……」


 身も蓋もないおばば様の言い方に、乾いた笑みを浮かべるしかないボクたちだったり。

 しかし、いくつか予想していた中の一つにドンピシャな展開だったわね。


「素直に従うなら今年の税は半分に、逆に言うことを効かないのであれば十倍にするだなんて言われちゃあね。従うより他なかったよ」


 はあ!?十倍だって!?交渉する気なんて欠片もない完全な脅しじゃないの!

 冒険者協会の嫌われようから、そこに繋がっているであろう領主や貴族も碌なものではないだろうと考えてはいたけれど、こちらもまた想像以上のクズっぷりだ。

 直接どうこうはできないだろうが、敵認定待ったなしです。


 ちなみに、今年の税を半分と言っているけれど、働き盛りの男性を根こそぎ連行していっていることを加味すれば、スホシ村の村人一人当たりの税の額は実質的には増加していると思われます。

 シジューゴ君たち森の中の人たちとの取引も男の人たちが行っていたようだし、きっとボクの予想なんて遥かに超えるレベルで村の財政は切迫していたのだろうね。

 どうりで畑を守っただけで歓声が上がるはずだよ。


「それで、男性たちはどこへ連れて行かれましたの?」

「街道沿いに三日ほど進んだ先、方角で言えば南東になるかねえ。そこにある迷宮さ」

「迷宮!?まさか村の人たちに迷宮の攻略をさせているの!?」

「いくらアホ領主でもそこまでものの道理が分からない大馬鹿じゃないよ。残念だけどね」


 いや、残念て。ああ、でも、そこまで無茶を言いつけてくるなら、故郷の村を捨てて森へと逃げる踏ん切りがついたかもしれないね。

 そういう意味では、確かに残念と言えるのかもしれない。


「迷宮自体はね、私のばあさんやそのまたばあさんの頃からそこにあったっていう話さ。ただし、その頃から枯れ果てていたとかで碌な物も取れないから、ずっと放置されていたんだよ。ところが、一年くらい前のことだったかね。アホ領主の屋敷でとんでもない古文書が見つかったとか何とかで、迷宮から何だかとてつもない物が得られると書かれていたんだと」


 そして冒険者――実質的には手勢の連中ということになるみたい――に依頼して調査をさせて見たところ、古文書の通りであることが分かったのだとか。


「うちからだけでなく方々の村から男どもをかき集めては、迷宮の中でそのとてつもない物を集める作業に従事させられているっていう話さ」


 手勢の冒険者たちにはその護衛と、ついでに迷宮の攻略を進めさせているらしい。


「ですが、そんなにたくさんの男性を連行してしまえば、畑仕事などに悪影響が出てしまうのではありませんか?現にこのスホシ村も、害獣退治に手が回っていなかったようですし」

「そこのところが理解できていないからアホ領主なのさ。種さえ撒いておけば作物が勝手に育って勝手に食料ができるとでも思っているんだろうさ」


 仮におばば様の言葉の通りだとすれば……。うん。擁護のしようがないアホ領主だね。そしてまず間違いなく、その通りの人物なのだろう。

 まあ、この騒乱の時代に曲がりなりにも生き残っているのだから、家臣団とかが優秀ということなのかもしれない。……あんまり期待できそうもないけれど。


「ところで、その迷宮で採れる物ってどんな物なんですかね?」

「アホ領主たちが口止めしているらしくて、はっきりしたことは不明だけど、なんでも赤い宝石みたいなものらしいよ」


 おばば様からの回答に、思わず顔を見合わせてしまうボクたち。


「なんだい、心当たりがあるっていう顔だね」


 すっごくあります。十中八九、というかまず間違いなくあれだと思います。


「緋晶玉……」


 ポツリと漏らしたのはミルファだったのか、それともネイトだったのか。

 まあ、まったくの別物という可能性はゼロではないだろうが、クンビーラ近郊の遺跡にジオグランド山中の地下洞窟にと続けて発見されたことを考えると、今回もまた同じ物ではなかろうか。

 リアルでならばともかく、少なくとも物語としてはそちらの方が妥当だと思われます。


 加えて、迷宮に生み出させていた特殊な物質だったとなれば、様々な物が集まる交易都市の支配者であるクンビーラ公主様たちだけでなく、裏社会にも詳しいエルのような人物でも知らなかったということに納得がいく。


 うん?ちょっと待ってよ。

 その迷宮で緋晶玉が採取できるとなると、『土卿エリア』にあった地底洞窟の転移魔法陣の行き先は、もしかしなくてもそこなのではないだろうか。


 狙った訳ではないけれど、無理矢理暴走させたことであの魔法陣が破損もしくは完全に破壊されてしまった可能性もある。

 だけどその一方で機能が生き残っていて、その上そのことにあのローブの人物や『ジオグランド』の連中に気が付かれてしまったならば……。

 ドワーフの里から自治を取り上げて無理矢理支配下に置こうとしていたこともあるし、不意を突く形で大軍を派遣して『火卿帝国』へと攻め寄せてくる、という展開は十分にあり得そうなものだと思う。

 仮にそうなってしまった時、『三国戦争』以降長きにわたって有力貴族たちによる内乱状態にある『フレイムタン』にそれを止められるだけの力が果たして残っているのだろうか?


 さらに言えば、再び大陸を支配するという妄執に憑りつかれた古代の死霊たちが住む浮遊島とも、緋晶玉は関係がありそうな様子だった。

 よって、そちらへの転移魔法陣があってもおかしくはない。


「これはその迷宮に行ってみるべきかな」


 できることなら迷宮を制覇して機能を停止、転移の魔法陣も緋晶玉採取のどちらもできないようにしておきたいところだ。

 そうすれば遠回しに連行された男性たちを各村へと帰還させることに繋がるかもしれないものね。


 問題は詳しい情報を得るためにも、スホシ村にある冒険者協会の支部へと顔を出す必要がありそうだということだ。

 とっても気が重いです……。


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