528 お話が進みそう
一応、みんなとベジタリアンモールとの戦いに触れておきますと……。ベジタリアンモールは遠距離からはトレアの矢でプスプスと射貫かれ、近距離からはミルファとチーミルの連撃によってHPを削られることになっていた。
さらに攻撃に転じたところでリーネイの【ガードアップ】で強化されたリーヴの鉄壁を崩すには至らず、まれに与えることができた小さな傷もネイトによってあっという間に癒されてしまうという……。
控えめに言っても完全なこちらのワンサイドゲームでした。本当にありがとうございます。
《イベント『畑を荒らす害獣を屠れ!』が完了しました。結果を精査しています。しばらくお待ちください》
イベント終了のインフォメーションも流れてきたので、これで一安心といったところかな。
《精査が完了しました。結果を発表します。
畑…被害なし。ボーナスとしてガチャチケット一枚お送りします。
害獣…殲滅。ボーナスとしてガチャチケット一枚お送りします》
せ、殲滅……。言いようが過激だ。
いや、確かに全部やっつけた訳だからその通りなのだけれどさ。
何だろう、イベントタイトルといい、運営の中に実家が農家とかで害獣の被害を受けている人でもいるのだろうか?
あ、イベントやクエストクリアの際に配られるボーナスアイテムですが、ゲームの正式な開始から半年のアンケート調査の結果を反映して、『技能ポイント』から『ガチャチケット』へと変更されております。
ボクとしては『技能ポイント』の方が良かったのだけれどねえ。
ガチャはほら、良いものが取れる可能性がある半面、外れが出るかもしれないので……。
といってもメイション内や掲示板等でトレードや販売の申し込みを行えば、それなりのゲーム内通貨を稼げるようになっているのだそうだ。
一番の外れ枠とされる『ポケットティッシュ』なるアイテムですら最低でも千デナーで売れるようになっているし、上手くトレードを行っていった結果、現状で最高品質のプレイヤーメイドの武器を手に入れることができた、などというわらしべなお人もいるらしいです。
そんなポケットティッシュ長者のことはさておき。畑への被害はゼロだし、害獣も全てやっつけることができた、とイベントの結果としてはパーフェクトな出来栄えではないだろうか。
これならば村の人たちからの信頼度もぐぐぐぐーんっとアップ!という展開だって期待できるのではないでせうかね!
そんな期待に胸を躍らせている時のことだった。
《レベルが二十に到達しました。上位職へのクラスチェンジができます》
な、なんと新たなインフォメーションが流れてきたではありませんか!?
これはさっそく確認して見ねば!
いやいや、ミルファたちもレベルアップしているのかを確かめる方が先?
「リュカリュカ、速く村に戻って依頼完了の報告をしましょう」
「え?あ、うん。そうだね。……あれ?」
すっごく冷静に次の行動を提示されたんですけど?
え?これってボクがはしゃぎ過ぎなのかしら……?
「何をぼんやりとしていますの?追加で魔物が現れないとも限らないのですから、しゃっきりなさい」
「は、はい」
今度はミルファから注意された!?
と、どこか理不尽というか納得しがたいものを感じながらも、ボクたちは村の中へと入っていくのだった。
さて、数日間で大分軟化していたとはいえ、ボクたちが得体のしれない余所者であることに変わりはない。そうした事情からか、こちらの戦いっぷりというか働きっぷりは監視されていたそうで。
村の人たちから「わあっ!」という歓声を持って迎えられたのだった。畑に出られないのは彼らにとって死活問題になりつつあったのかもしれない。
「いやあ、よくやってくれたねえ!あそこまで完璧にこなしてくれるなんて、依頼した私も鼻が高いってものさあ!」
人だかりの中からお宿の女将さんが現れたかと思うと、ボクたちの背中を叩いて喜びの気持ちをあらわにしている。
いや、それはいいのだけれど、ちょっと叩く力が強くないですか?
バシバシと凄い音が聞こえてきているし、防具越しなのに衝撃で息が詰まりそうになっているのですが……。
まあ、感謝されていることは言葉通り痛いほどよく分かったからね。
退けることもできないまま、ボクたちは苦笑いを浮かべることしかできませんでしたとさ。
「これでしばらくは魔物たちも大人しくしているだろうね。その間に男連中が帰って来てくれれば万々歳なんだけどねえ」
おっと?これは好感度が上がったことで隠されていた情報が解禁されたのかな?
「あの、女将さん。ボクたちがどれだけ力になれるのかは分からないけど、良ければこの村のことを教えてもらえませんか?」
途端に、しんと静まり返る。
ふにゅ!?もしかして早まった!?
「いやいや。あんたたちは十分以上に私らの力になってくれたよ」
そう言って人垣の中から一歩踏み出してきたのは、小柄なおばあちゃんだった。
やっちまったかも!?と内心では冷や汗をダラダラ流していたところだったこともあり、柔和なそのお顔が菩薩様か何かのように思えてしまったボクなのでありました。
「おばば様……」
「この人たちになら話をしてもいいと私は思うよ。皆はどうだい?反対だという人はいるかい?」
おばあちゃん、おばば様の問い掛けに少々不安な顔をした人こそいたものの、反対の声を上げる人いなかった。それだけ彼女が村の人たちから慕われ、信頼されているという証なのかもしれない。
ただねえ……。おばば様ってどう見てもスホシ村の有力者よね。そんな人に面と向かって、しかもたくさんの人がいる中で反対意見を述べることができる胆力の強い人というのは、そうは多くないと思うのよね。
例えるなら、クラス会などで議論が紛糾した時に先生が意見を述べてしまったようなものだ、といえば少しは理解がしやすいだろうか。
一意見という体を取ってはいても実際には鶴の一声のようなもので、下手に反論すると除け者にされたり村八分にされたりということになりかねない危険があるのだ。
よって、リアルでは注意が必要なやり方ではないかと思われます。
「反対する者はいないようだね。という訳で、聞いてもらえるかい。このスホシ村の現状を」
まあ、今はゲームの中でのことでもあるし、時間も押しているので話が進んでくれるのは助かるというのが正直なところではあるのだけれど。




