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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十六章 スホシ村と次の行き先

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526 畑の攻防戦 2

「ボクたちはまず近付いてきた魔物を迎撃してから、苦戦している所やみんなの手の届かない所にいる魔物をやっつけて回るよ!」


 エッ君に基本方針を伝えて駆け出した瞬間、視界の端で「ギャン」という悲鳴と共に一体の魔物が倒れていた。


 え……?

 トレアさん、もしかしてワンショットキルですか?


 確かに装備の新調で彼女の攻撃力は跳ね上がっていたけれど……。接近された場合に備えてリーヴも控えているし、ネイトのチームへの応援は必要ないかもしれないね。

 この予想は見事に的中することとなり、ネイトが正確に魔物の位置を把握して、離れた相手はトレアが、近付いてきた敵はリーヴが鎧袖一触の勢いでことごとく殲滅していくことになるのだった。


「ゴアッ!」

「おおっと、考え事をしていてもちゃんと見えてはいるからね!」


 正面から飛び掛かってきたグラスフォックスを半身になることで避ける。

 それと、叫びながら近づいてくるのは止めた方がいいと思うよ。奇襲攻撃で「隙あり!」とか叫びながら攻撃するようなものだからね。


 などと頭の中で思いながら、すれ違いざまに龍爪剣斧の斧刃をがら空きになった胴体へと叩き込むと、HPの八割ほどが一気に削れる。

 むう……。悪くないダメージ量ではあるのだけれど、一撃で倒せなかったのはちょっと悔しい。

 ちなみに瀕死になっていたその個体は、エッ君んの踏みつけ――攻撃ではなく、移動の際に足場にされただけ――によってお亡くなりになられていました。


 尻尾をブン!足をビュン!体当たりでドカンエッ君が小さな体を動かすたびに「ヂュッ」「ギャウン」「ブモッ」と魔物が断末魔を上げて倒れていく。


 あれ?

 ……ぶも?


「うそん?」


 見ればファットマウスやグラスフォックスだけでなく、ディグボアまで倒しているじゃありませんか!高フィジカルで頑丈どこいった!?


 もしかしてイベント仕様で魔物たちが弱くなっているとか?

 ああ、もう、邪魔!敵の数が多くて考え事をしている暇もないよ!とにかく今は目の前の魔物どもを倒しきることを優先しなくちゃ!


 悪い前例を反面教師にすることもなく、ただただ正面から挑んでくる魔物どもを次々に返り討ちにしていると、ふと〔警戒〕におかしな反応が出たのを感じる。


「近寄ってきているのに見えない?……そうか!嫌がらせの【湧水】!」


 その正体を予測したボクは即座に〔生活魔法〕でたっぷりの水を生み出すと、足元へとぶちまけた。

 その直後、


「モグッファー!?」


 泥水をまき散らすようにして、地面の中からボクと同じくらいの大きさ――体積に至ってはボクの二倍はありそう――の菜食モグラが飛び出してくる。

 やっぱりね。魔物といえどもモグラはモグラ。魔法的なアレこれで地面の下を泳ぐようにして移動している訳ではなく、土を掘ってはトンネルを作っていたようだ。

 その証拠に両手の先には一メートルにもなろうかという爪が幾本も付いていた。


 つまりは呼吸が必要であり、水を流し込まれれば溺れてしまうという訳だ。


「こんにちは、そして、さような、ら!」


 柄の先端を持って思いっきりフルスイング!遠心力の乗った剣はスパンと魔物の上半身と下半身を泣き別れさせることに成功したのだった。


「やっぱり弱体化してないかな?」


 いくら溺れそうになって慌てて飛び出して来たとしても隙が大きいような気がするし、何より闘技も未使用なのに攻撃の通りが良過ぎると思う。

 好調に浮かれて「ボクたち、強くなった!」などと勘違いするほど、頭がお花畑ではありませんので。

 これは何か裏があると考えていた方がいいかもしれない。


 そして以前にも言ったことがあると思うけれど、世の中こういう悪い予感ほど当たり易くなっているものなようでして。


「ブンモー!」

「モーグー!」


 あちらは真面目一辺倒のつもりなのだろうが、どうにも気の抜けた雄叫び?を発しながら、これまでの個体よりも一回り、ううん、二回りは大きなディグボアとベジタリアンモールが登場したのだった。


 しかもボクとエッ君を挟み撃ちするように同時に二方向からという念の入れようだ。

 ここまでやたらと順調だったことといい、運営の悪意を感じるね!


 しかしこれが今回のボス戦ということになるのだろうか、幸いにも他の魔物はほとんど殲滅し尽くしていて、ミルファとチーミルのコンビが三体を、リーヴが二体、あ、今トレアが片方を倒したので残る一体を相手にしているだけとなっている。


 これならみんなが来るまで持ちこたえることさえできれば、十分に勝機はある。


「……なんだけど、このまま時間稼ぎをするっていうのも、ちょっとイラッとする」


 だって、運営の思惑にものの見事に乗せられた感じがしちゃうのよね。


「エッ君、みんなが応援に来る前に二人だけで倒しちゃおうか?」


 どちらかといえば慎重論を唱える方が多いボクからそんな言葉が飛び出すとは思ってもみなかったのか、エッ君は尻尾をぴんと立てて驚いていた。

 お顔があったら、きっとお目眼を真ん丸にしていたことだろう。その様子を容易に思い浮かべることができてしまい、こんな時だというのについつい笑ってしまいそうになってしまった。


「とはいえ、ボクとエッ君で一人一体ずつ受け持つのは無理だから、どうにかして片方もしくは両方を無力化している間に、どちらかをやっつけるというのが基本の戦法になりそうかな」


 問題はどうやって無力化するかだ。


「ブルルルル……!」

「モーグーグーモー!」


 あらあら、まあまあ。あちらはお二方とも随分とやる気になっているようですわね。

 ……ふむ。それならそのやる気をしっかりとぶつけさせてあげようではありませんか。


「エッ君、どうしよう!このままだとやられちゃうよう!」


 そんな内心を押し隠すと、龍爪剣斧を仕舞い込んでエッ君を抱きしめる。


「リュカリュカ!?何をやっていますの!早くお逃げなさい!」


 ミルファの声が聞こえてくるが、体が震えて上手く動けないような気がしないでもない。

 そんなボクたちの様子を見てチャンスだと思ったのか、二体の暫定ボスたちが我先にと殺到してくる。


「いやいや。モグラ君、そのまま地上を走って突っ込んでくるとか、ちょっとボクたちのこと舐め過ぎでしょう」


 まあ、やることが簡単で助かったけれど。いよいよ二体の魔物の攻撃が届くかという瞬間、エッ君を抱きかかえたまま横っ飛びでその場から離脱していた。


「ブモッ!?」

「モグッ!?」

「しっかりとそのやる気をぶつけるといいよ。ただし、ボクたちじゃなくて自分たち同士でね」


 結果、二体の渾身の力を込めた一撃は、お互いへと牙をむくことになるのだった。


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