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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外

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523 うちの子たちの新装備 3

 スホシ村の鍛冶師である熊おじさんによると、エッ君の蹴爪に都合良さそうな素材をドロップする魔物は二種いるそうでして。


 まずはブラックリンクス。素材の性能的には抜群なのだが、いかんせん出現地点が例の森の中ということで、現在のボクたちからすれば遥かに格上の強者ということになる。

 強い敵と戦えるようになるための装備新調なのに、そのために強敵を倒さなければいけないという矛盾……。後に里っちゃんとの会話で知ったのだけれど、ハックアンドスラッシュ系のゲームではよくあること、らしい。


 ちなみに、鋭く尖った爪――同じく牙も――だけではなく、黒くしなやかな体を覆う毛皮の方も防具の材料から美術品としてまで幅広い人気を誇っており高値で取引されているのだとか。


「先生、質問です!」

「誰が先生だ、誰が。で、今の説明で何が分からなかったんだ?」

「どうして森にいるのにヤマ(・・)ネコなの?」

「知らねえよ。と、言いたいところだが、元々はこの村の周りの丘陵地帯の方にいたらしい。さらに元をたどっていくと、西にある『風卿』の山ん中から出張ってきたのがやつらの先祖だそうだ」

「ほうほう、だからオオヤマネコ(リンクス)なのね」


 ついでに、スホシ村の大まかな位置や周囲の地形を紹介しておこうか。

 まず場所ですが、アンクゥワー大陸南東部に広がる『火卿エリア』中央からやや南東寄りとなる。

 平野部が多い『火卿エリア』だけれど、南部は西の『土卿エリア』から『風卿エリア』へと続く山脈や山地の影響か、高原や丘陵といった起伏に富んだ地形となっていた。

 スホシ村の周囲はそうした地形の最東端付近となるという訳だ。


 余談ですが、シジューゴ君たちが住んでいる『不帰の森』だとか『聖域』だとか呼ばれている大森林がエリア中央部に鎮座ましましており、今はすっかりさびれてしまって見る影もなくなっているらしい『火卿帝国フレイムタン』の帝都ヒキツは北部に位置している。

 閑話休題。話を元に戻しましょうか。


「ブラックリンクスは詳しく聞くまでもなく倒せそうにもないので、もう一つの魔物の説明をお願いします」

「まあ、あの森は一次上位職の連中の中でもベテラン以上でないと危険だからな。お前たちではまず歯が立たないだろうから、賢明な判断だな」


 うわー……。熊おじさんってば、ボクたちのことを試してやがりましたよ。

 鍛冶屋という立場上、冒険者や外部の人間との接触しやすい訳だし、もしかすると村にとって有害かどうかを見極める役目を持っているのかもしれない。

 村全体で警戒されているというのに、すんなりと宿屋の女将さんから紹介された事にもそれならば説明が付くというものだ。


 もしも欲に目がくらんで自分たちの力量以上の相手に突撃しようとしたなら、容赦なく切り捨てられていた可能性も高い。

 苦情の意味合いと「そちらの意図は読めているぞ」という意思を込めてジロリと睨んでみるも、そこは相手もさるものというべきか、平然と躱されてしまったのだった。


「もう一つの魔物だが、こっちは村の近くでも時々見ることができるロケットダッシュというやつだ」


 そのまま何事もなかったかのように話を進められて少々イラッときてしまったが、文句を言ったところで余計な反感を抱かせるだけだろう。

 ここはひとまず素直に説明を聞くことにする。


「ロケットダッシュは大型の鳥の魔物、といっても空を飛べない代わりに地面を走り回るのが得意っていう風変わりなやつだがな。特徴としては足が速い。とにかく早い。その昔の帝国が盤石の体制だった頃には飼いならして早馬の代わりにしたこともあったらしいんだが、今ではすっかり聞かなくなっちまったな」


 リアルでいうところのダチョウとかに似た魔物っぽいね。

 大型の走る鳥の魔物……。思わず「チョ〇ボー!」と叫んでしまいそうです。


「でも、そんなに足が速いのなら、見つけるとができてもすぐに逃げられてしまうんじゃないですか?」

「その点は心配しなくていい。気性は荒くて敵意にも敏感だから、発見することさえできれば向こうから勝手に飛び掛かってくるだろうよ。」

「攻撃手段は?」

「その足の速さと頑強な体を活かした体当たりに、嘴での突きだな。それとあまり聞いたことはないが、足で蹴りを入れてくることもあるらしい。地面にしっかりと食い込むようにやつらの足には鋭い爪が付いていてな、嘘か真か鎧や盾を切り裂くほどだとよ」


 なんだか眉唾物な情報っぽくも思えるけれど、そもそもここはゲーム世界だしなあ……。騙し合いをしている関係でもない限り、わざわざそんな嘘情報を流す意味はない気もする。

 起死回生のための奥の手的なものくらいに考えておけばいいだろう。


 それよりもそのチョ……、もとい鳥の魔物が鋭い蹴爪を持っていることの方が、ボクたちにとっては重要だ。


「足は腱も強くて、弓の(つる)に向いているぞ。あと、肉も美味い」


 なんですと!?それは絶対に狙わなければ。

 ファットマウスのお肉も問題なく食べられるそうなのだけれど、リアルの知識がある身としては、どうしても敬遠したくなるのよね。


 明日には出来上がる、ということでボクたちの装備品類を熊おじさんに預けて店を出る。


「これは最も仲良くならないと、村の事情を教えてもらえそうにないね」

「しばらくはこの村に逗留する、ということですの?」

「そうだね。エッ君たちの装備に、ボクたちのクラスチェンジのこともあるから、その辺りのことが一段落するまではスホシ村を拠点に動くことになるかな」


 おじいちゃんたちの安否が気がかりだけれど、冒険者に対する熊おじさんの吐き捨てるような態度から、下手に協会支部に接触するのは危険な気がする。

 ここはひとまず、急がば回れの精神で足元固めに努めるべきだろう。


「森への報告はどうしますか?」

「うーん……。今日の段階で分かったことをまとめて、明日にでもカワセミ君に運んでもらおうか。数日間はこの村に滞在することを書き添えておけば、もっと細かい調査が必要だというなら再度連絡してくるでしょう」


 とりあえず、すぐにでも森へと侵攻が開始されそうだとか、逆に村が壊滅してしまいそうだ、といった危機的状況ではなかったようなので一安心かな。

 村中から発せられる違和感に戸惑いながらも、ボクたちは回復薬等の消耗品を入手するため別のお店へと足を進めるのだった。


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