522 うちの子たちの新装備 2
このまま誤魔化すことはできないと察したボクたちは、魔法陣の暴走によって転移させられたことを素直に話すことにした。
ただし事前に決めた転移先の設定を、村の近くではなく森のどこかに変更して、だけど。
「旅の途中で偶然見つけた遺跡を探索している最中に、たまたま発見した転移の魔法陣がいきなり暴走状態で起動して、それに巻き込まれた?……おい、嘘を吐くならもう少しマシな嘘を吐けよ」
「残念ながら嘘じゃないんですよねえ」
転移の魔法陣がいきなり暴走状態で起動したことに関してはね。
ただ、深い森のど真ん中という場所に転移したのは、暴走のためというよりは魔法陣自体が壊れかけていたためではないか、というのがボクたち三人の一致した見解だった。
起動するまでそんなものがあることすら分からなかったからね。転移先が魔物の出現しない安全地帯だったのは……、運営の最後の良心かな。
「そんな訳で命からがら逃げ回っていたら、いつの間にか森の外に出ていまして」
シジューゴ君たちに出会ったことや依頼の件はまだ秘密です。
「いや、逃げ回るだけじゃハチェットディアーは倒せない――」
「さらに!森から出られたかとと思えば、今度はファットマウスの大群と戦う羽目になるし!よくもまあ、無事にこの村にまで辿り着けたものだと自分で自分を誉めたくなりますね!」
「そ、そうなのか……」
「そうなのです!」
割と本気でそう思うよ。今挙げた二度の戦いは、あと一手対応を間違えていたら全滅してもおかしくはなかったくらいギリギリの戦闘だったもの。
「それで、この辺りの素材でテイムモンスターたちの装備を改良したり新しく作ったりすることは可能ですか?」
ハイテンションな口調でのボクに熊おじさんが押されかけていたところに、ネイトが割って入って話を仕切り直してくれる。ばっちりなタイミングだぜい。
「あ、ああ。物によりけりだが問題なく使えるだろうな」
「ファットマウス素材も?」
「毛皮の方は大した性能じゃないが、鋭歯なら鏃にできるぞ」
「それは嬉しいかも。この子は弓がメインだから、矢の消費もバカにならないんですよね」
ドワーフの里で餞別代りに作ってもらった矢も残り少なくなっている。鋭歯はレアドロップ扱いだけれど、幸いにも母数が多かったためにかなりの数を確保できていた。弾数を増やしておいて損はないだろう。
「弓か……。なあ、少し変わり種の物があるんだが――」
「お聞きしましょう」
かぶせ気味に答えると、熊おじさんは驚いたというよりも引きつった顔になっていた。いくらんでもちょっくら失敬な反応じゃないかと思う。
「職人によっては邪道だと言って忌避するやつもいるくらいなんだぞ」
この言い方から察するに、ギミックが仕込まれているとか多機能の性能を持っているとかいう流れかな。
「弓としての基本性能がしっかりしていて、なおかつ扱い辛過ぎるものでなければ問題ないのでは?そこさえ押さえているなら魔法が込められていようが接近戦に使用できようが変形しようが合体しようがロマンの範疇でしょう」
「いや待て。前半はともかく、後半はおかしい」
そうかな?合体に変形こそロマンの粋だと思うのだけれど。
「トレアはどう、思、う……」
とはいえ使う本人の意見も大事だろうと振り返ってみたところ……。
え?この子なんだかとってもキラキラした瞳でこちらを見ているんですけど。意外にも彼女にも男の子気質なところがあったもようです。
あ、男の娘ではありませんので念のため。
「リュカリュカ、話しが止まっていますわよ」
と、不満げな顔で先を促してくるミルファ。
うん?なして不満顔?……ああ!先にトレアに反応されちゃったから今一話題に乗り損ねてしまったのか!
ある意味ボクたち以上にロマン好きだものね。クンビーラ公主の血を色濃く引いたお嬢様なのに、という突っ込みは今さらなので無意味です。
おっと。余計に脇道に進みそうになってしまいそうなので、このくらいで話を元に戻しまして。
「それで、どんな変形とか合体ができるんですか?」
「おい、こら、勝手に決めるな。誰もそんなへんてこな機能を付けるなどとは言っていないぞ」
「えー……」
熊おじさんの回答に、一様に失望の声を上げるボクたち。特にトレアは見るからに沈んでいるのが分かるほどの落胆ぶりだった。
今度メイションに行った時にでも、カッチョイイ玩具でも買ってきてあげましょうかね。
「えー、じゃねえよ。俺が提案しようとしたのはだな、ハチェットディアーの角を用いて、いざという時には接近戦もできるような弓だ」
熊おじさんの説明によると、弓の本体部分の中心に鉈状のハチェットディアーの角を組み込むことで、接近した魔物などを切り払うことができるようにするのだとか。いわゆる合成弓というやつになるみたいだね。
「まあ、その点を除いてもハチェットディアーの角はしなやかで粘りがあるからな。弓の材料には打って付けだぜ」
絶賛ですねえ。ボクたちとしても死蔵しておいたところでアイテムボックスを圧迫するばかりで一つの益もないので、性能が良いのであれば使用してもらうことに否はない。
そしてその後の話し合い――雑談とも言う――で、どうせならばハチェットディアー素材で統一した装備にしようということになり、毛皮の方もトレアの防具に加工してもらうことになった。
「残るはエッ君の装備だね」
ボクの言葉に「待ってました!」とばかりに飛び跳ねて自己主張するエッ君。
気持ちはよく分かる。装備を新しいものに変えるのって、なんだか無性にドキドキワクワクしてしまうものだよね。
「尻尾に巻いていた鋲付きの毛皮は、ピンボールラクーンのもので代用できそうだが、問題は蹴爪だな。貴族様連中が抱え込んでいるらしくて、最近は金属や鉱物がとんと出回らなくなっちまった」
おじさんの手元にあるものとなると鋼鉄くらい、しかも品質的にはあまりよろしくないものばかりなのだとか。
「ハチェットディアーの角みたいに、代用できるような魔物素材とかもないんですか?」
「いくつか使えそうな素材に心当たりはある。だが、在庫はないからお前たちが自力で調達してくる必要があるぞ」




