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テイマーリュカリュカちゃんの冒険日記  作者: 京 高
第三十五章 森の中、森の外
521/933

521 うちの子たちの新装備 1

「あ、でもうちの子たちの武具は新しい物に交換しておいてもいいかも」

「うちの子?」

「ボクはテイマーなんです。それでテイムした子たちにも武具を持たせているので」

「ほほう。武具を扱うテイムモンスターとは珍しいな。ここで呼び出しても構わんぞ」


 おやおや?これはまた予想外のことで熊おじさんの興味を引くことができたようだ。

 せっかく許可が下りたことでもあるし、みんなに出て来てもらうことにしようか。

 そして……、


「な、な……、何なんだこの面子は!?」


 大いに驚かれました。


「まあ、ドラゴンのエッ君は言わずもがなですし、種族こそ珍し過ぎるものではなくともリーヴは伝説の勇者のアリシア様の鎧を模した姿に、トレアはあまり見かけることのない女の子ですもの」

「それに自分で言うのもなんですが、私たちも特別人形ですからね。<傀儡師>が居なければ早々はお目に書かれるものではないでしょう」


 チーミルとリーネイ、解説をどうもありがとう。

 狙った訳でもないから自覚はないのだけれど、うちの子たちは世界観的にもプレイヤー的にも珍しいそうです。


「ドラゴンだと!?」

「あら?気付いていませんでしたのね。わたくしたちのレベルのこともありましたので、てっきり〔鑑定〕の技能持ちかと思っていましたが、違うのかしら?」

「長年の勘だけで見抜いた、ということなのでしょうか。それはそれで驚異的なことですが」


 商売柄ミルファと同じく〔目利き〕技能くらいは持っていそうだけれど、あれは物の価値を測るもので、人物眼のような効果はなかったはずだからね。

 経験則を甘く見るつもりはないが、本当に勘だけでボクたちがクラスチェンジ直前だということに気が付いたのか……。これはなかなか「当たり」の人に出会えたのかもしれない。

 スホシ村側の思惑が働いた上でのことなのだろうが、宿の女将さんには感謝だね。


「その子たちの持ち物なんですけど、どうですか?買い替えた方がいいものはありますかね?」


 個人的には無理矢理改造して作ってもらったエッ君の蹴爪や尻尾に巻いた鋲付き毛皮は絶対に交換しておくべきだと思う。

 トレアの弓矢と胸当てはドワーフの里の職人謹製とはいえ、しょせんはあり余りの材料で作ってもらった突貫品だから、こちらも質の良いものがあるならば新調するのもアリだろう。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。今確認してみる……」


 ボクの問い掛けに我に返った熊おじさんが、一人ずつ装備品を点検して回る。


「あー、あー……。こいつはお前たちの物に負けず劣らず、傷みが酷えな。後もう少し遅ければ破損していたところだぞ。テイムモンスターが大事なら、もっとこいつらの装備にも目を配ってやれ」

「ごめんなさい」


 うへえ……。耳に痛いお言葉だ。でも本当にその通りだよね。手入れが悪かったせいでうちの子たちが怪我をするだなんて想像もしたくない展開だ。

 想定外の出来事が続いて村や町に寄ることができなかったというのは、例え事実ではあっても言い訳にしかならないのだから。

 これからはボクたちの装備も含めて、もっとしっかりと点検を行わなくちゃ。


「ふうむ……。こっちの剣と盾はなかなかの業物だな。おい、魔石を持っているか?これなら修復の時に一手間加えることで強化することができるかもしれんぞ」

「ホントに?小サイズならたくさんあります!」


 ファットマウスの群れとの戦いで、小サイズの魔石であれば結構な数が手に入っていた。

 余談ですが、あの戦いで倒したファットマウスの総数は三桁に達していた。群れすぎ。


「ほうほう。これだけあれば改良もできそうだぜ。おっと、ただし耐久値の上限は減ることになるが構えねえか?」

「極端に減っちゃうなんてことはないですよね?」


 装備品の耐久値は二百が一般的で、確かリーヴの武器の鋼鉄の剣は頑丈さがウリで、初期の耐久値は三百あったはずだ。盾の方は魔銀という物質が塗布(コーティング)されている分だけ少なくなっていたが、それでも初期値は二百五十という高いものだった。


 ちなみに、無料配布となる『初心者用』シリーズの武器でも耐久値は四百なので、いかにリーヴの装備品が頑丈であるのかが分かってもらえると思う。

 さらに余談ですが、グロウアームズという特殊な武器であってもまだレベル一のためか、龍爪剣斧と牙龍槌杖はどちらも百五十と耐久値は低めの設定となっていた。


「そこまで脆くなることはねえよ。これまで酷使し過ぎたことと合わせても一般並みの耐久値は確保できるはずだ」

「それなら、その二つは修復プラス改良でお願いします。他の子の分はどうですか?」

「人形二人は武器だけか。……これも魔石で改良できるな」

「お願いします」


 じゃららっとカウンターの上に追加で魔石を並べていく。


「了解だ。後はこっちのドラゴン?の蹴爪はともかく、鋲付きの毛皮はダメだな。精々がないよりはマシ程度だ。この辺りの魔物とやり合うにはほとんど役に立たんだろう。ケンタウロスの子の装備も同じだ。商売を関係なしにしても買い替えることを勧めるぜ」


 ほぼほぼ予想した通りだから、これについてショックはない。むしろいい加減に新調してあげなくちゃいけないと思っていたくらいだ。

 これからの行動によっては最悪「余所者に売る物はねえ!」などと門前払いされる可能性もあるから、購入できるのであればすぐにでも活用するべきだろう。


「そう言えば、魔物の素材をもっているなら、それを使って作ってやることもできるが、何かあるか?」


 なんですと!?


「それはつまり材料持ち込みということになるので、普通に買うよりもお安くなったりするというやつなのでしょうか!?」

「お、おう。その通りだ。もっとも、素材によっては使えなかったりそれほど割引にはできなかったりもするけどよ」


 ずずいっと迫るボクの勢いに引き気味になる熊おじさんです。


「こんなのがありますけど、使える物はありますか?」


 マーダーグリズリーを始め、『土卿エリア』で出没する魔物の素材は出せないが、こちらに転移して以降の物であれば問題ないはず。

 アイテムボックスから見本とばかりに魔物の戦利品(ドロップアイテム)を取り出していく。


「んん!?お、おい!これはハチェットディアーの角と毛皮じゃねえか!?こっちはピンボールラクーンだと!?……まさかお前たち、『聖域』、森に入ったのか!?」


 それらを見た瞬間、熊おじさんは驚愕や怒りに恐怖といった様々な負の感情が籠った目で、ボクたちを睨み付け始めたのだった。


 あ、もしかしてやっちゃった?


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